行政 : 東京都、「奉仕」授業のテキスト概要発表
7月27日、東京都は、2007年4月から都立高校で必修となる「奉仕」の授業のためのカリキュラムと生徒用テキストをまとめ、その概要を発表した。生徒用テキストは全5章からなり、奉仕活動に役立つ知識として、「NPO」や「寄付と募金」に関する基礎知識も盛り込まれている。
東京都では、2007年4月から全国で初めて、都立高校において「奉仕」を必修科目とすることとして、2005年から、東京都教育委員会に「奉仕カリキュラム開発委員会」を設置。「奉仕」のカリキュラムとテキストを検討してきた。
7月27日、東京都教育委員会は、「奉仕カリキュラム開発委員会」の報告書と生徒用のテキストの概要を公表した。
報告書によれば、必修科目となる「奉仕」の目標は、「奉仕活動の理念と意義を理解させ、奉仕に関する基礎的な知識を習得させるとともに、社会貢献を適切に行う能力と態度を育てる」こと。
「奉仕」の授業は、1.事前学習、2.体験学習、3.事後学習の3つの内容で構成され、年35回の授業を受けると1単位が取得できる。ただし、35時間のうち半分以上は「奉仕体験活動」に充てなければならない。
なお、評価は、担当教諭が文章記述によって行い、「5段階評価」による評定はしないとのこと。
同時に公表された生徒用のテキストの概要によれば、テキストは全5章(37項目)で、A4判2穴のバインダー形式。1単元ごとのワークシートをバインダーに綴じて、授業の進行に応じて自由に付け替えながら使用する。
このテキストの第2章「活動に役立つ考え方、知識を学ぼう」では、「社会の問題や課題の解決に取り組んでいる人たちの考え方や知識について学ぶ」とされ、「NPO」、「企業と社会貢献」、「寄付と募金」といった内容が1単元ずつ盛り込まれている。
今後、東京都では、生徒用テキストに加えて、教員用指導資料を作成して指導者の研修を始める。加えて、奉仕体験活動の受入れ先の確保のため、リーフレット等の啓発資料を作成し、協力を呼びかけ、2007年4月からの実施に向けた準備を進めていくとしている。
このような動きに大阪ボランティア協会の早瀬昇事務局長は、以下のようにコメントしている。
「必要なのは主体的に社会問題に関わる市民を育てることなのに、権威・権力への献身を前提とする「奉仕」という用語にこだわることに違和感を感じる。その上、社会活動を強制されることで、こうした活動を嫌いになる生徒は少なくなく、逆効果が心配だ。非常に乱暴な施策だが、この施策を逆手にとり、生徒が市民活動の魅力に気づく機会に転換できるかどうか? 「巻き込まれながら、巻き返す」必要があり、今後、都内の市民活動関係者は難しい作業に取り組まねばならないだろう。」
「奉仕カリキュラム開発委員会報告書及び生徒用テキストについて」は、東京都教育委員会サイト内、下記を参照のこと。
http://www.kyoiku.metro.tokyo.jp/press/pr060727h.htm