行政 : 経済同友会、NPOの活動見学報告
社団法人経済同友会のNPO・社会起業委員会は、2005年度に、NPOの活動現場を実際に訪問することによって、NPOに対する企業経営者の関心や理解を高もうとする「『百聞は一見にしかず』プログラム」を実施。7月14日にその報告書を公開した。
社団法人経済同友会(代表幹事:北城恪太郎氏)のNPO・社会起業委員会は、2005年7月、「社会変革に挑むNPOには優れた経営者と志ある資金が必要である――企業経営者からの提言、企業経営者としての行動計画――」と題する提言書を発表した。
実践活動に重点を置いた内容となっている同提言書の大きな柱は、「『百聞は一見にしかず』プログラム」の実施。
このプログラムは、英国のNPOである Business in the Community (BITC) が実施している「The Prince’s Seeing is Believing(百聞は一見にしかず)Programme」をモデルとしたもので、企業経営者がNPOの活動現場を実際に訪問することによって、社会的課題やその解決に取り組むNPOに対する企業経営者の関心や理解を高めることを目的としている。
経済同友会では、昨年度、NPOの活動現場への訪問を半日ツアー形式で3回実施。加えて、NPO関係者を招いてのヒアリング・意見交換会を3回実施した。さらに、NPO・社会起業委員会では、NPOの活動を支える資金や人的資源が不足している中で、特に個人の参画を促すために、企業としてあるいは企業経営者個人として、どのような貢献が可能かを探るべく、企業が取り組んでいる優良事例についてのケーススタディも行った。
経済同友会では、7月14日に、これらの活動の成果を、「百聞は一見にしかず~NPOの活動最前線で見た政策課題と我々の行動~」と題する報告書にまとめて公開した。
報告書によれば、3回の見学ツアーは、それぞれ「ニート、ひきこもり、不登校」、「外国人受け入れ」、「小児難病患者・家族支援」の3つ社会的課題をテーマにして実施。
報告書は、それぞれのテーマについて、見学ツアーを通じて見聞した現状、政府の対応、NPOの提示・実践している解決策を概観した内容となっている。
具体的には、「ニート、ひきこもり、不登校」をテーマにしたツアーでは、NPO法人「ニュースタート事務局」と財団法人「東京YMCA・Liby」を訪問。家族へのサポートも含めて、きめ細かいプログラムによって課題解決を図っているNPOの活動と成果が先行する形で社会的な関心を喚起し、その結果、ようやく行政の対応が始まった現状などが報告されている。
「外国人受け入れ」については、NPO法人「ふじみの国際交流センター」とNPO法人「多文化共生センター・東京21」を訪問。在留外国人の増加と不十分な制度・インフラ整備のなかで地道につづけられてきたNPOの活動が紹介されている。
「小児難病患者・家族支援」に関するツアーでは、財団法人「ドナルド・マクドナルド・ハウス・チャリティーズ・ジャパン」と財団法人「がんの子供をまもる会」を訪問。治療法の研究や医療費にかかわる経済的負担の軽減などについては、行政によるサポートが行われているが、治療費以外の経済的負担や、精神的負担、治療後の自立支援など、行政だけでは対応が難しい部分において、NPOが重要な役割を果たしているとしている。
また、報告書では企業のNPO支援として、「職域募金」を取り上げ、富士ゼロックスの「端数倶楽部」と資生堂の「花椿基金」が事例として報告されている。
「百聞は一見にしかず~NPOの活動最前線で見た政策課題と我々の行動~」は、経済同友会サイト内、下記に掲載されている。
https://www.doyukai.or.jp/policyproposals/articles/2006/060721a.html