行政 : 石税調会長「寄付税制でNPO支援を」
政府税制調査会の石弘光会長は、9月12日、「今後の税制改革についての議論に向けて」と題する「会長談話」を発表した。この中で、「今後ますます重要となっていく“民間が担う公共”の支援も大切である」として、寄付税制でいっそうNPO等を支援していくことが重要であるとした。
9月12日、第53回政府税制調査会総会が終了した後、石会長は、「今後の税制改革についての議論に向けて」と題する「会長談話」を発表した。
政府税制調査会の委員の任期は、3年となっており、現在の委員の任期は、今年10月5日で切れる。
通例なら、任期切れの前に、政府税制調査会は、3年間の議論を総括する「中期答申」をとりまとめて発表するが、今回は、「中期答申」を出さずに、その代わりに、「会長談話」が出された。
「中期答申」を出さない理由は、自民党総裁選を目前に控え、新しい内閣の税財政政策が見通せないことが大きな理由だと言われている。
石会長は、記者会見で「(中期答申を)受け止めてくれるだけの場が、あるいは背景が出てきて初めて一定効果があるんだと思います。そういう意味で、今はそういう時期ではないなという判断を私自身はしています」と述べている。
この「会長談話」では、今後の税制改革の基本的視点として、「責任」「安心」「活力」の3つをキーワードとして掲げている。
そして、「会長談話」には、『将来世代に対する「責任」』、『「安心」できる社会』、『経済社会の持続的な「活力」』の3つの項目が設けられ、今後の税制の基本的視点が述べられている。
このうち、『経済社会の持続的な「活力」』は、以下のような内容となっている。
経済社会の活力を持続させるためには、財政や社会保障を持続可能なものにするとともに、個人や企業がその能力を最大限発揮できる環境を整備する必要がある。少子化・子育て問題については、総合的な政策対応が求められており、税制においても、子育て世帯への支援を効果的に行うことが重要である。また、今後ますます重要となっていく“民間が担う公共”の支援も大切である。
さらに、活力と個性のある地域社会の実現が求められている。地方公共団体が自らの責任と判断により地域のニーズに応じた行政サービスを適切に実施できるよう地方税を充実する等、地方分権の一層の推進を図る必要がある。
この「“民間が担う公共”の支援」に関して、石会長は、総会終了後の記者会見で、記者の質問に答えて、以下のように述べている。
(記者)
「民間が担う公共の支援も大切である」という文言があるんですけど、これはあまり見たことがないなという気もするんですが、どういう意味なのか。(石会長)
これは、例の非営利法人と、寄付金税制の審議のときにやりましたように、要するに官と民の間で、第三セクターで活躍できる場をつくって、活性化できるだろうと。具体的に言えば、やはり寄付金税制によって、NPOとかNGOとかに大いに、官で出来ない部分あるいは民で出来ない部分を補完してもらおうという意図がここには入っています。それが「民間が担う公共」というところです。(記者)
拡充ということも…。(石会長)
はい、それも含めてですね。
政府税制調査会の委員は、今年10月から新たな委員が任命される(再任を含む)。現時点では、石会長が再任されるかどうかは不明だ。
また、公益法人制度改革における税制の議論を担ってきた「非営利法人課税ワーキンググループ」も継続するのか、委員がどうなるのかは分かっていない。
10月以降の新政権における政府税制調査会の動向が注目される。
なお、「会長談話」は以下のホームページで見ることができる。
http://www.mof.go.jp/singikai/zeicho/top.htm