行政 : 貸金業法改正でNPOバンクが存立危機に
貸金業規制法改正の議論が進むなか、全国NPOバンク連絡会等関係団体は、財産要件が引き上げられる等の改正によって非営利目的のNPOバンクの存続が危ぶまれるとし、9月1日、NPOバンクに対する貸金業規正法の適用除外を求める要請書を金融庁に提出した。
NPOバンクとは、主に市民からの出資を基に設立された非営利の市民金融組織のこと。
一般金融機関との大きな違いは、NPOバンクが非営利であり、基本的に小規模で、物的担保をとらず、貸出金利が低いものが多い(2006年現在の年金利1~3%程度)こと。融資対象は、地域や社会の課題に取組んでいるNPOなどが中心。運営は専門家を含むボランティアスタッフによって低経費で賄っている。
非営利活動団体の融資事業にとっての法的な枠組みがないことから、NPOバンクは現状としては、営利目的の貸金事業に対する規制法である「貸金業規制法」の登録をしている状態にある。
現在、政府では、サラ金被害による多重債務者問題への対応として、貸金業規制法改正の議論が進められている。
改正案が次第に明らかになるなかで、改正後の規制強化によりNPOバンクの存続がおびやかされる可能性が生じたとして、9月1日、全国NPOバンク連絡会等関係団体は、NPOバンクに対する「貸金業規制法の適用除外を求める要請書」(以下、「要請書」)を金融庁に提出した。
「要請書」では、改正案の以下の4点を「問題点」として挙げている。
問題1:「改正法案では、財産的要件が純資産1,000万円(個人)から5,000万円(法人)へ引き上げられる方向になっていること」
NPOバンクは、1万円から10万円程度の少額の出資者を多数集めることにより設立される。設立当初は広く知られておらず、出資金は募集開始より急速に集まるわけではない。多額の財産的要件が適用された場合、NPOバンクの新規設立が阻まれるし、現在の小規模なNPOバンクが存続できなくなる。
問題2:「貸金業協会、個人信用情報機関への加入が強いられること」
現在の貸金業協会は、加入時10万円、月会費5千円を要する。また、信用情報機関では、一例をあげると「入会時50万円、月2,500円、使用料平均45円/件」といった費用が発生する。NPOバンクの融資先は、営利企業の融資先とは異なるため、信用情報機関を利用する必要性が低く、また「全国NPOバンク連絡会」という形で、非営利公益目的の融資事業者の自主規制団体を形成していることから、貸金業協会や個人信用情報機関への加入は不要な出費となる。
問題3:「貸金業登録手数料15万円(3年更新)が必要になること」
前項と同様に、不要な業務への出費となり、結果的に融資先に対する貸付金利の上昇につながってしまう。
問題4:「貸金業務取扱主任の資格を取得しなければならないことと、主任が存在しない店舗開設ができないこと」
NPOバンクでは、ほとんどのスタッフが無報酬で活動しているため、ボランティアベースでは対応が難しい資格に関する要件は、NPOバンクの存続を困難にする。
今回、「要請書」を提出したNPOバンク関係者は、「サラ金被害による多重債務者問題の解決に向けた法改正自体は評価している。しかし、非営利目的で低金利の融資を行っているNPOバンクにも同じ規制を適用することは避けてもらいたい。規制によって存続できなくなる、あるいは規制に対処するために金利を上げざるを得なくなる、といった事態になれば、市民事業を支援するインフラとなっているNPOバンクの仕組みが崩壊してしまう。ぜひ、NPOバンクを貸金業規制法から適用除外するようにしてほしい」と語っている。
「貸金業規制法の適用除外を求める要請書」は、「東京コミュニティパワーバンク」サイト内、下記に掲載されている。
http://www.h7.dion.ne.jp/~fund/kashikingyou_tekiyoujogai060901.pdf