行政 : NPO、医療問題の社会化の課題を指摘
10月14・15・16日の3日間、患者相談に取り組むNPO法人「ささえあい医療人権センターCOML」(大阪市)が、医師や看護士などを対象とした匿名電話相談、「医療者のホンネと悩みホットライン」を実施した。COMLによれば、予想に反して相談件数は極めて少なく、医療現場の問題を社会化することについての医療従事者の躊躇いと諦めが露呈された結果となった。
NPO法人「ささえあい医療人権センターCOML」(以下、COML)は、1990年より「賢い患者になりましょう」を合言葉に掲げて、患者の主体的な医療参加を目指して活動している団体。
COMLでは、1990年8月から患者向け電話相談を行っており、これまでに約4万件の相談を受け付けている。
COMLの山口育子事務局長によると、数年前から、この患者を対象とした電話相談に、医師や看護士など医療従事者からの相談が寄せられるようになり、最近では全体の約2%を占めるようになったという。相談内容は、患者の無理な要求、未収金、組織内の問題等。
そこで、COMLでは、はじめての試みとして、10月14・15・16日の3日間、「医療者のホンネと悩みホットライン」と題し、弁護士などの専門家も含めた相談体制で、5台の仮設電話を設置して、匿名で医療者のホンネを掘り起こすホットラインを実施した。
このホットラインについては、直前に新聞各紙の全国版で紹介され、医療従事者のメルマガ、掲示板などでも紹介されるなど、実施前から反響は大きかった。
しかしながら、予想に反して医療従事者からの相談件数は極めて少なく、1日10件ほどだった。
この予想外の結果を受けて、COMLが相談者にヒアリングしてみたところ、どの相談者も、電話をかける前にかなり逡巡したと打ち明け、その理由として、「医師としてのプライドもあり、平素から弱音を吐いたり、誰かに相談する習慣がなかったから」、「組織の問題を外部に相談してみたところ解決につながると思えなかったから」といった理由をあげた人が多かったそうだ。また、悩みを相談する相手については、「ごく親しい同僚」が多く、「解決できなさそうな悩みに直面したら辞めて別の職場に移る」といった答えもあったそうだ。
一方、ホットラインに寄せられた相談の内容は、どれも深刻で、患者からの暴言に苦しんだり、患者に恐れを抱いているケースもあり、患者の医療不信に対して医療従事者の「患者不信」も深刻化していることが明らかになった。
COMLでは、相談内容も含めて、3日間の相談結果について分析を進めているが、「悩みを相談できない医療従事者」の実態が明らかになったことから、今後は、「悩める医療従事者」に悩みを声に出してもらう方法を検討し、その個々の悩みを社会化することで、よりよい医療の実現に結びつけていきたいとしている。
「ささえあい医療人権センターCOML」のホームページは下記。
http://www.coml.gr.jp/