行政 : 内閣府、「会計基準統一」報道を否定
11月3日、一部新聞で、「NPOの会計基準統一」記事が掲載された。内容は、内閣府が、2008年度をめどにNPOの会計基準を作成する方針を固めたというもの。しかしながら、シーズの取材に対して、内閣府はこの報道内容を全面的に否定した。
11月3日の日本経済新聞朝刊の一面トップ記事の見出しは、「NPOの会計基準統一」。小見出しは、「内閣府2008年度にも 企業並み透明性」。
この記事は以下の内容を紙面の4分の1を割いて報道していた。
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内閣府は、2008年度をめどにNPOの会計基準を統一する方針を固めた。
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目的は、透明性の高い会計基準によって各法人の財務内容が簡単に比較できるようにすることで、不正行為を排除し、個人や企業が寄付をしやすくし、税優遇の認定を受けやすくすること。それによってNPOの財政基盤の強化しすそ野の拡大を図る。
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この会計基準は複式簿記を原則として、貸借対照表と損益計算書を作成させるものとなる。
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来年中に民間の専門家を加えた研究会で基準案をまとめて、2008年度の導入を目指す。
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この会計基準の適用を義務化はしない。
11月8日、この新聞記事について、シーズが内閣府に確認したところ、担当者は事実無根と返答。「現在、内閣府は、国民生活審議会総合企画部会NPO法人制度検討委員会において、NPO法人制度について幅広く議論を重ねているところで、会計基準を統一化することは考えておらず、研究会を立ち上げる予定もない。」とのこと。
なお、NPO法では会計に関する規定は、1)第5条による「その他の事業」を行っている場合の区分経理、2)第27条の会計の原則(正規の簿記の原則、真実性・明瞭性・継続性の原則)、3)第28条による財産目録、貸借対照表及び収支計算書等の備置及び閲覧等の規定のみ。また、「正規の簿記」については、複式簿記に限らず、単式簿記でも構わないとされている。
ただ、内閣府のNPO法人制度検討委員会の中間報告においては、会計基準について、「各法人の会計処理の目安となる会計基準が策定されることが適当」とした上で、策定主体については、以下のように述べている。
「会計基準の策定主体については、所轄庁が策定すると必要以上の指導的効果を持つおそれがあるため、民間の自主的な取り組みに任せるべきとの考え方がある。他方で、基準の策定及び定期的な見直しには相当のコストがかかることから、民間と行政が協力して策定等を行うことも考えられる。いずれにしても、幅広い関係者の意見を反映した公正性が担保されたものとなるよう十分に配慮すべきである。」
この点に関して、シーズの松原事務局長は以下のようにコメントしている。
「NPOが信頼されて発展していくためには、NPOに適した会計基準は不可欠だ。いずれは作らなければならないものだと考える。
シーズでも、1996年からNPO法人の会計基準について研究を進めてきており、1998年には、『特定非営利活動法人等の会計指針・草案』を、2005年には、『NPO法人の外部方向に関する基本的考え方』を発表している。このような議論を行うなかで、今後、会計基準が策定されることが望ましいが、行政主導ではなく、民間主導か、民間と行政との恊働で作られていく方が望ましい。
行政だけでつくるとか、会計の専門家だけでつくるとなると、NPO法人の仕組みに合わない規制的な側面が強くなる可能性があり、注意が必要だ。中間報告で述べられているとおり、行政が主導で作る事は望ましくないと言える。」