行政 : JICA募金計画にNGOが懸念表明
昨年12月9日に開催されたNGO-JICA協議会で、国際協力機構(JICA)から、今春を目途に広く一般から寄附金を募りNGOに配分する募金活動を開始する計画が明かされた。この計画について、NGO側からは反発の声が上がり、NGOへの説明会の開催を要請。1月15日には大阪で、1月23日には東京でJICA担当者による説明会が開かれ、質疑応答と意見交換が行われた。
NGO-JICA協議会は、NGOとJICAが対等なパートナーシップに基づき、双方の連携による効果的な国際協力及び国際協力に対する市民の理解と参加を推進するために設置され、2000年より、約3ヶ月に一度開催されて、情報・意見交換、相互学習及び相互提言を行うとともに、提言内容の実現を図っている。
NGOからの構成メンバーは、NPO法人国際協力NGOセンター、NPO法人名古屋NGOセンター、NPO法人関西NGO協議会の3団体。協議会への出席者は各団体において選出される。加えて、JICAの職員が参加。また、オブザーバーとして、外務省及び国際協力銀行(JBIC)も参加している。
昨年12月9日、JICA大阪国際センターで開催された2006年度第3回NGO-JICA協議会(以下、協議会)において、JICA側から、「JICAによる寄附金の積極的募集(案)」の説明があった。
協議会での説明によれば、この寄附金募集は、JICAが、国際協力についての市民の支持・協力をよりいっそう強化するために、市民の国際協力への参加の機会として寄附を集めるというもの。
これによって寄附文化の醸成を図りたいとしている。具体的には、集めた寄附金は、JICAが国費で行う本体事業に使うのではなく、「NGOが現地で行っている草の根技術協力事業終了案件のフォローアップ」、「NGOの独自事業に対する人的・物的支援」に活用するとしている。
説明では、この募金活動は、今春4月開始を目途にしているとのこと。
この説明を受けて、協議会に参加したNGO関係者からは、JICAが赤十字社や中央共同募金会のような積極的な寄附集めを開始すれば、国際協力NGO以外に限らず国内で寄附を集めて活動しているNGO/NPOにとって大きな打撃になるといった懸念や、募金の制度設計に関する質問などが続出した。
問題の重要性から、協議会のNPO側委員を務めるNPO法人国際協力NGOセンター、NPO法人名古屋NGOセンター、NPO法人関西NGO協議会の3団体は、JICAに対して、NGOを対象にして、この件に関する説明会を開催することを要請。
1月15日には、大阪で、1月23日には東京でNGO関係者を対象にした説明会が開催された。
1月23日に行われた東京の説明会では、JICAの担当者から、
- この募金は今春4月の開始を目途にしていること、
- 募金にかかる経費は募金の呼びかけを通常のJICAの広報活動の中で行うなど、可能な限りJICAの事業費で賄い、寄附収入からの出費を抑えたい、
- ターゲットは企業、商工会議所、青年会議所などを想定しているのでNGOのこれまでの寄附集めを阻むものとはしない、
- 配分に関しては第三者からなる委員会の設置によって透明性を確保したい、
といった説明があった。
しかしながら、募金についての具体的な制度設計に関する明確な説明が無かったことから、NGO側からは、
- 市民参加協力の推進によるNGOの強化を図るのに募金という手法が相応しいのか、
- JICAの組織力をもって募金を行えばNGOの寄附集めにとって大きな脅威になる、
- 配分を決める第三者機関が明らかでない、
といったことへの懸念が示された。
JICAの担当者は、「よりよい制度にするために、今後もNGOとの意見交換を続けていきたい」と締めくくって、会議は終了した。
「JICAによる寄附金の積極的募集(案)」は、JICAサイト内、「平成18年度第3回 NGO-JICA協議会議事録」を参照のこと。
http://www.jica.go.jp/partner/ngo/meeting/conference/h18_03/01.html