行政 : 東京都、「青空協議会」認証取消し
1月10日、東京都は法人成立以来、法定書類が一切未提出という法令違反に加え、理事長が禁錮以上の受刑により欠格し、さらに設立認証申請時の認証要件の虚偽記載が発覚したNPO法人青空協議会に対して設立の認証を取り消した。
特定非営利活動促進法(以下、NPO法)では、その第43条第2項で、「所轄庁は、特定非営利活動法人が法令に違反した場合において、前条の命令によってはその改善を期待することができないことが明らかであり、かつ、他の方法により監督の目的を達することができないときは、同条の命令を経ないでも、当該特定非営利活動法人の設立の認証を取り消すことができる。」としている。
1月10日、東京都は、同日付でNPO法人青空協議会の認証取消しを行ったと発表した。
NPO法人青空協議会は、「広く一般市民を対象として、産業廃棄物や一般家庭ゴミの不法投棄の監視及び回収、ゴミのリサイクル、不用品によるフリーマーケット等、自然環境を大切にしながら、生産や生活を永続的に行なうことで、自然と人間が共生できる豊かな社会の実現に寄与することを目的とする。」として、平成16年3月に東京都の認証を受けていた。
東京都の発表によれば、今回の取消しの原因となる事実は下記。
(1)法令に違反している。
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法人の役員(理事長)が禁錮以上の刑を受け、欠格事由(NPO法第20条第3号)に該当することを法人が知ってから、理事長不在のまま3月以上経過している。
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毎事業年度初めの3月以内に提出が義務付けられている(法第29条第1項)事業報告書類が、法人成立後一度も提出されていない。
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設立当初の役員が就任してから2年以上経過しているが、役員が社員の所在を把握しておらず、総会が招集できないため、改選をしていない。(法第24条第1項、法第30条)
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役員の氏名・住所変更(法第23条第1項、組合等登記令第6条)の手続きをしていない。
(2)虚偽の申請により、特定非営利活動法人の法人格を取得している。
所轄庁による調査の結果、法人の設立認証申請時における虚偽申請があり、事実上、設立当初から役員の法定数を欠いていたため、法人としての要件を満たしていない。(法第15条)
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姓の異なる実の兄妹を役員にし、法第21条(役員の親族等排除)の規定違反の事実を偽って、役員の宣誓書(法第10条第1項第二号ロ)に記名捺印した虚偽の申請をしている。
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役員となることを承諾していない者の氏名等を使って、虚偽の役員の就任承諾書及び宣誓書を作成し、その者の住民票の写しを添付して申請している。
また、都は、取消しに至る経緯を下記としている。
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平成17年12月に、平成16年度事業報告書類提出の督促(平成18年1月31日提出期限)
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平成18年7月5日 法人理事長について、調査したところ、平成18年4月29日に刑が確定し、役員欠格事由に該当したため、理事長が欠けたる状況にあること等が判明した。
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平成18年7月19日 平成16年度事業報告書類未提出について市民への説明要請(平成18年8月21日提出期限)
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平成18年9月8日 東京地方裁判所に過料事件通知(平成16年度事業報告書類未提出)
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平成18年9月8日 法人(副理事長宛)に対し、法第41条に基づく、業務等報告を命令(報告を求めた内容について、法人活動等を把握していないため報告ができないこと及び法人の定款や社員の所在を役員が把握していないことが判明した。)
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平成18年10月3日 法人の両副理事長及び監事に対し、行政調査を実施(両副理事長から回答があり、1人の副理事長は「なにも知らず、自分の知らないことばかりでとっても迷惑しております。」と回答しており、本人の承諾を得ずに勝手に承諾書及び宣誓書が作成されたことが判明した。もう1人の副理事長からは、自分は法人の役員になっているが、設立総会の開催通知がなく、出席もしておらず、定款や社員名簿等法人に係る書類を持っていないことがわかった。監事からは郵便物を受理してもらえず返送されてきた。)
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平成18年11月7日 法人事務所の現地調査及び監事自宅を訪問しての行政調査を実施(監事から理事長とは兄妹の関係であり、役員就任を依頼され承諾したこと及び設立総会の開催通知がなく、出席もしておらず、定款や社員名簿等法人に係る書類を持っていないことがわかった。)
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平成18年12月12日 法第43条第2項に基づき、聴聞を実施(副理事長に聴聞通知書は到達しているが、陳述書の提出もなく、当日は欠席)
なお、東京都では、事業報告書等の提出が3年以上にわたって行われていないことや、改善命令違反を理由として取り消したNPO法人がこれまでに18法人あるため、これらを合わせて、東京都における設立の認証の取消しは、計19法人となった。
このの認証取消しについては、東京都サイト内、下記に掲載されている。
http://www.metro.tokyo.jp/INET/OSHIRASE/2007/01/20h1a100.htm
NPO法人青空協議会の認証取消しの根拠となった法令は下記。
特定非営利活動促進法(抄)
(平成10年3月25日法律第7号)
(設立の認証)
第10条 特定非営利活動法人を設立しようとする者は、内閣府令(前条第2項の特定非営利活動法人以外の特定非営利活動法人に係る場合にあっては、都道府県の条例。以下省略)で定めるところにより、次に掲げる書類を添付した申請書を所轄庁に提出して、設立の認証を受けなければならない。
一 定款
二 役員に係る次に掲げる書類
ロ 各役員が第20条各号に該当しないこと及び第21条の規定に違反しないことを誓約し、並びに就任を承諾する書面の謄本(イ、ハ省略)
三 社員のうち10人以上の者の氏名(法人にあっては、その名称及び代表者の氏名)及び住所又は居所を記載した書面(以下省略)
(役員の定数)
第15条 特定非営利活動法人には、役員として理事3人以上及び監事1人以上を置かなければならない。
(役員の欠格事由)
第20条 次の各号のいずれかに該当する者は、特定非営利活動法人の役員になることができない。
三 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わった日又はその執行を受けることがなくなった日から2年を経過しない者(一、二、四、五、六省略)
(役員の親族等の排除)
第21条 役員のうちには、それぞれの役員について、その配偶者若しくは三親等以内の親族が1人を超えて含まれ、又は当該役員並びにその配偶者及び三親等以内の親族が役員の総数の3分の1を超えて含まれることになってはならない。
(役員の欠員補充)
第22条 理事又は監事のうち、その定数の3分の1を超える者が欠けたときは、遅滞なくこれを補充しなければならない。
(役員の変更等の届出)
第23条 特定非営利活動法人は、その役員の氏名又は住所若しくは居所に変更があったときは、遅滞なくその旨を所轄庁に届け出なければならない。(第2項省略)
(事業報告書等の提出及び公開)
第29条 特定非営利活動法人は、内閣府令で定めるところにより、毎事業年度1回、事業報告書等、役員名簿及び定款等(その記載事項に変更があった定款並びに当該変更に係る認証及び登記に関する書類の写しに限る。)を所轄庁に提出しなければならない。(第2項省略)
(民法の準用)
第30条 民法第54条から第57条まで及び第60条から第66条までの規定は、特定非営利活動法人の管理について準用する。(以下省略)
《民法第60条:(略)理事は、少なくとも毎年一回、社員の通常総会を開かなければならない。》
(報告及び検査)
第41条 所轄庁は、特定非営利活動法人が法令、法令に基づいてする行政庁の処分若しくは定款に違反する疑いがあると認められる相当な理由があるときは、当該特定非営利活動法人に対し、その業務若しくは財産の状況に関し報告をさせ、又はその職員に、当該特定非営利活動法人の事務所その他の施設に立ち入り、その業務若しくは財産の状況若しくは帳簿、書類その他の物件を検査させることができる。(第2、3、4項省略)
(設立の認証の取消し)
第43条
2 所轄庁は、特定非営利活動法人が、法令に違反した場合において、前条の命令によってはその改善を期待することができないことが明らかであり、かつ、他の方法により監督の目的を達することができないときは、同条の命令を経ないでも、当該特定非営利活動法人の設立の認証を取り消すことができる。(第1、3、4項省略)
第49条 次の各号のいずれかに該当する場合においては、特定非営利活動法人の理事、監事又は清算人は、20万円以下の過料に処する。
五 第29条第1項の規定に違反して、書類の提出を怠ったとき。
組合等登記令(抄)
(昭和39年3月23日政令第29号)
(登記事項)
第2条 組合等が登記しなければならない事項は、次のとおりとする。
四 代表権を有する者の氏名、住所及び資格(一、二、五、六省略)
(変更の登記)
第6条 組合等は、第2条に掲げる事項に変更を生じたときは、主たる事務所の所在地においては2週間以内に、柔たる事務所の所在地においては3週間以内に、変更の登記をしなければならない。