行政 : 経団連「教育再生にボランティア推進」
1月1日、(社)日本経済団体連合会は、わが国が今後めざすべき道筋を具体的に示すビジョン、「希望の国、日本」を発表した。このビジョンでは、「教育の再生、公徳心の涵養」を実現するために、「ボランティア活動を積極的にカリキュラムに取り入れ、単位取得を認めるなど、若者が多様な社会的活動に参加しやすい環境を整える。」ことが必要だとされている。
1月1日に(社)日本経済団体連合会(以下、経団連)が発表した「希望の国、日本」では、われわれが実現をめざすべき「希望の国」のかたちは、確かな成長に裏打ちされた精神面を含むより豊かな生活であり、開かれた機会と公正な競争に支えられる社会であり、また、世界から尊敬され親しみを持たれる国である、とされている。
この「希望の国、日本」の構成は、以下の通り。
はじめに
第1章 今後10年間に予想される潮流変化
1.グローバル化のさらなる進展
2.人口減少と少子高齢化の進行
第2章 めざす国のかたち
1.精神面を含めより豊かな生活
2.開かれた機会、公正な競争に支えられた社会
3.世界から尊敬され親しみを持たれる国
第3章 「希望の国」の実現に向けた優先課題
1.新しい成長エンジンに点火する
2.アジアとともに世界を支える
3.政府の役割を再定義する
4.道州制、労働市場改革により暮らしを変える
5.教育を再生し、社会の絆を固くする
第4章 今後5年間に重点的に講じるべき方策
第5章 2015年の日本の経済・産業構造
おわりに
この中で、NPOに関する主な記述、内容は以下のようになっている。
■第2章 めざす国のかたち
2.開かれた機会、公正な競争に支えられた社会
この項では、公平にチャレンジできる機会が与えられる社会の実現のためには、「キャリアアップや再就職の推進に向けた社会人の『学びなおし』のための環境整備、来卒者にも広く門戸を開いた採用制度の導入など、企業、教育機関、NPO、国・地方などが緊密に連携して、再チャレンジ可能な仕組みを作り上げていかなければならない。」と、再チャレンジ社会にNPOの果たす役割が述べられている。
また、解消されない格差については、最小限のセイフティーネットを用意することが重要であるとして、「ボランティア、NPO、地域コミュニティが介護や福祉などの分野で、これまでも良質なサービスを効率的に提してきたことを忘れてはならない。」とし、できる限り民間委託を進めることが、「お役所仕事」よりも「人間的で暖かいサービス」の実現、費用の節減につながるとしている。
■第3章 「希望の国」の実現に向けた優先課題
5.教育を再生し、社会の絆を固くする
「教育の再生、公徳心の涵養」として、現在の日本社会では、若者の心に自らの社会を自らの手で支えようという気概や、社会全体の福祉の増進に貢献するといった意味における公徳心が十分に育っていないとし、「福祉や環境、天災・人災への対応において、ボランティアやNPOの役割は大きい。」ことから、ボランティア活動の推進のためにも、他人を尊重して弱者を思いやる心を育てることが重要だとしている。
また、「CSRの展開・企業倫理の徹底」の項では、「国民一人ひとりの公徳心は、ボランティアや寄付、NPOなどの民間公益活動に自発的に参加・貢献していくことで具体的に目に見える姿をとる。」とし、企業においても、「社会の一員として、法と社会規範を遵守し、企業倫理に基づいた行動をとることは当然として、株主、従業員、顧客・消費者、地域社会、NPOなど幅広いステークホルダーとの対話を重ね、積極的に公益活動に取り組む責務を負う。」とCSRの重要性を説いている。
■第4章 今後5年間に重点的に講じるべき方策
第4章では、前章までにあげたビジョンの実現は、1)新しい成長エンジンに点火する、2)アジアとともに世界を支える、3)政府の役割を再定義する、4)道州制、労働市場改革により暮らしを変える、5)教育を再生し、社会の絆を固くする、の5つの改革によりなされるとし、19の具体的な方策が示されている。
そのうち、「3)政府の役割を再定義する」ための方策のひとつとして、「行財政改革」の必要性があげられており、そのなかで、「市場化テスト(官民競争入札)の活用による政府事業の民間開放の推進、NPOの活動推進などを通じて、『官』が担う領域を縮小し、筋肉質でスリムな政府を形作る。」とされている。
また、「5)教育を再生し、社会の絆を固くする」ための方策として、「教育の再生、公徳心の涵養」を実現するために、「ボランティア活動を積極的にカリキュラムに取り入れ、単位取得を認めるなど、若者が多様な社会的活動に参加しやすい環境を整える。」ことで、公徳心を育むことができるとし、あわせて、「社会教育を担うNPOなどの活動を税制面の整備などを通じて促進する。」ことが必要だとしている。
経団連ビジョン「希望の国、日本」は、経団連サイト内、下記に掲載されている。
http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2007/vision.html