行政 : 愛知県、NPOの財政・会計に関する調査
愛知県は、NPO法人の財政状態及び会計事務の状況を把握するために、愛知県所轄の全NPO法人を対象として、事業報告書及び会計書類に対する調査、およびアンケート調査をNPO法人ボランタリーネイバーズに委託して実施。その結果を3月24日に公開した。
昨年度、愛知県は、NPO法人の財政状態及び会計事務の状況を把握するために、NPO法人ボランタリーネイバーズに委託して、愛知県所轄の全NPO法人を対象として、以下の3つの調査を実施した。
-
NPO法人の財政状態
事業報告書及び会計書類から財務データを集計・分析。 -
NPO法人による会計事務の実態
アンケートによって会計管理体制などの実態を調査。 -
事業報告書調査
事業報告書及び会計書類の記載内容を調査し、間違いが多い事項などを検出。
愛知県は、3月24日、それらの結果を、「NPO法人財務分析・会計支援事業の調査報告書」として公開した。
この報告書の概要は以下の通り。
1.NPO法人の財政状態
NPO法人の財務データの集計・分析は、2003年から2006年にかけて収集した、1999年度から2004年度までの会計書類(財産目録、貸借対照表及び収支計算書)を対象にして実施。
その結果、2004年度におけるNPO法人全580団体の資産総額は39億円、1団体当たりの平均資産残高は600万円。NPO法人全体の正味財産総額は21億円、1団体当たりの平均正味財産残高は300万円で、15%の団体が債務超過の状態にあることが明らかになった。
また、2004年度におけるNPO法人全体の経常収入総額は80億円(2005年度速報値では103億円)であり、2001年度以降の3年間で3.7倍の伸びを示している。
1団体当たりの平均経常収入は、介護保険制度などの資金源がある「保険・医療・福祉」では2000万円、その他の分野では800万円。
2004年度におけるNPO法人全体の経常支出総額は72億円で、そのうちの25億円は管理費であることがわかった。このことから、報告書では、NPOが活動を継続するためには、事業費のみではなく、管理費も適切に回収する必要があり、NPOに委託事業や助成を出す場合などは、この点にも配慮すべきであると結論付けている。
2.NPO法人による会計事務の実態調査
この調査では、NPO法人の事業報告に対する取り組みの意識や会計管理体制などについてアンケート調査を行っている。
対象は、2006年3月10日までに認証済みの愛知県所轄の全NPO法人763団体(ただし、解散・移管・住所不明の団体は含まない)。259法人から回答を得た。(回収率33.9%)
その結果、90%を超えるNPO法人が正確な会計書類を作成すべきであると考えているが、所轄庁における事業報告書等の公開が、社会から理解を得るために役立っていると考える団体は56%にとどまることが明らかになった。
また、会計書類をしっかりとチェックする監事は50%にとどまっており、監査機能の充実が求められている。
さらに、70%以上の団体が、事務管理人件費、教育研修費、広報宣伝費が不足していると回答しており、事務管理費の確保に苦しんでいる団体が多いことが判明した。
3.事業報告書調査
事業報告書等調査では、NPO法人が所轄庁に提出した事業報告書等の記載内容を調査し、間違いが多い事項や注意すべき点を明らかにしている。
対象は、2006年12月28日時点で提出されている2004年度の事業報告書等(事業報告書・財産目録・貸借対照表・収支計算書)。サンプル数は580件。
調査項目は、事業報告書及び会計書類の形式、事業収支の内訳表示、企業会計との混同、貸借対照表と収支計算書の整合性など。
結果では、事業収入と事業支出の内訳を適切に開示しているのは34%にとどまっている。
また、29%の団体では、「財産目録」に十分な資産及び負債の内訳情報を記載していない。
26%の団体では、「貸借対照表」と「収支計算書」の正味財産が整合していない。
これらの結果から、報告書では、流動資産や流動負債しかない団体は、基礎的な会計スキルについて、固定資産・固定負債がある団体は、NPO法人会計に特有な処理について、理解を深める必要があると結論付けている。
愛知県では、この調査の結果について、「NPO法人が置かれている実態を社会に理解してもらうとともに、『あいち協働ルールブック2004』の理念に則ったNPOと行政の協働を促進するために活用されることが期待される。」としている。
「NPO法人財務分析・会計支援事業の調査報告書」は、下記の「あいちNPO交流プラザ」サイトに掲載されている。
http://aichi.npo.gr.jp/