行政 : NPO法見直しに向けた最終報告出る
6月28日、第7回国民生活審議会総合企画部会と第16回NPO法人制度検討委員会の合同委員会が開催され、「特定非営利活動法人制度の見直しに向けて」と題する最終報告が提出された。
国民生活審議会は、内閣府のもとに置かれ、「重要事項を調査審議」して、「内閣総理大臣又は関係各大臣に意見を述べること」を目的としている。
平成17年10月7日、第20次(平成17年9月9日~平成19年9月8日)国民生活審議会の第1回目会合としての総会が開催され、NPO法の見直しを検討する「国民生活審議会総合企画部会NPO法人制度検討委員会」が設置された。
この委員会では、昨今のNPO法人制度を濫用した営利目的と見られる活動や詐欺などの違法行為などを背景に、公益法人制度改革における新たな非営利法人制度の枠組みもにらみながら、NPO法人に関する制度の見直しの審議を進めてきた。
平成18年9月11日、同委員会は、特定非営利活動法人制度の見直しに向けての「中間報告」を発表して意見募集を実施した。
6月28日、第7回国民生活審議会総合企画部会と第16回NPO法人制度検討委員会の合同委員会が開催され、「特定非営利活動法人制度の見直しに向けて」と題する最終報告が提出された。
報告書では、はじめに、NPO法の意義について、「簡易な法人格の付与と市民への広範な情報公開に関する仕組みを導入することで、市民活動がわが国に根付くことに寄与した。」と確認。平成10年の施行以来NPO法人数は3万を超え、各分野で公共サービスの新たな担い手として多様化する社会のニーズや課題にきめ細かく機動的に対応いると評価している。
その上で、制度の見直しに際しては、次の3点を「見直しの基本的な考え方」としている。
1.NPO法の制定趣旨を再確認して、行政の関与を抑制し、柔軟な法人運営の確保しつつ、社員総会や監事の機能等を通して法人の自律性を高めるとともに、情報公開を促進することで健全な市民活動が促進される基盤を形成することが必要。
2.NPO法人制度は新たな公益法人制度とは別の制度として存置される
3.法の理念をわかりやすく表す名称を追求していくことが適当。
また、「法人の業務運営のあり方」としては、その基本は法で規制するのではなく法人自身が決めることであるとし、その上で次の3項目を挙げている。
1.自律的な組織運営
・市民に対する広範な情報公開制度に基づき、市民が監視できるような社会に開かれた管理体制の構築が重要。
・定款で特定の理事に代表権を集中させることとした場合には、代表理事とそれ以外の理事との区別を登記できるようにすることで責任と権限を明確にできるようにすべき。
2.情報公開の促進と個人情報の取り扱い
・法人の業務運営においては、インターネットの活用や開示内容の充実による積極的な情報開示が求められる。
・所轄庁による情報公開はインターネットの幅広い活用が望ましく、書面による情報公開を前提とした規定の見直しを進めるべき。
・その一方で、所轄庁における情報公開については、とりわけ役員及び社員の住所については不開示を含めて検討が必要。
3.会計基準の策定
・会計処理の目安となる会計基準が行政と協力して民間主導で策定されることが適当。ただし、会計基準は強制力を持たず、あくまでも目安として取り扱われるべき。
「法人の認証・監督のあり方」としては、その基本的な考え方として、所轄庁の認証における裁量は極力排除し、監督は最終的な是正手段とするという考え方を維持している。
その上で、以下が提言されている。
・所轄庁は、法の運用の透明性を高め、恣意的判断をできる限り抑制する趣旨から、法運用の方針を自主的に策定し公開することが適当。
・10人以上の社員を要するという認証要件緩和の要望に対しては多くの市民参加による社会貢献活動を行うための集団という実体の確保のために設けられたものであることから、適切な対応を検討する必要がある。
・残余財産の帰属は、独立行政法人制度の設置などで法制定時に比べて対象範囲が狭くなってきているので国立大学、大学共同利用機構法人、独立行政法人、および地方独立行政法人を対象範囲に入れるべき。
・定款変更について、所轄庁への届け出だけで変更できるよう認証事項を減らして簡素化することが適当。
・申請書類の軽微な記載ミスや婚姻等による役員の氏名・住所の変更は縦覧・審査期間中に修正できるように検討すべき。
・解散の清算に係る公告は3回以上から1回以上行うことに見直し、公告方法も官報だけではなく日刊新聞や電子公告も可能とすべき。
・法令違反等のおそれがある場合に講じた監督措置について、所轄庁は広く公表する。
・現行、3年以上事業報告書が未提出の休眠法人は認証の取り消しが可能だが、2年以上未提出の場合は取消しが可能となるよう、認証取り消しまでの期間を短縮する。
・認証後一定期間に設立登記がなされない場合に、認証の効力を失われる規定の整備。
さらに、「制度発展のための環境整備」として、NPO法人制度が市民の自由な社会貢献活動を促進するためには、法律の規定整備や運用に加えて、NPO法人が社会で活躍できるための環境整備が重要だと指摘。法人の活動に関する豊富な情報が市民に正確に提供され、活動への参加や支援が促進されて人材や資金などの活動資源が確保されることが重要だとしている。
「国民生活審議会 総合企画部会報告 特定非営利活動法人制度の見直しに向けて」は、内閣府サイト内、下記に掲載されている。
http://www.npo-homepage.go.jp/
なお、これまでのNPO法人制度検討委員会における議事の要旨、議事録、配布資料などは、内閣府サイト内、下記に掲載されている。
http://www5.cao.go.jp/seikatsu/shingikai/kikaku/20th/npo/