「NPO制度は今後どうなるか?」報告
2001年11月30日(金)午後6時30分から、NPO法施行3周年記念シンポジウム「NPO制度は今後どうなるか?」が、東京都中野区の中野サンプラザにて開催された。
(写真:全体)
主催は、NPO/NGOに関する税・法人制度改革連絡会(以下「連絡会」と略)。助成、トヨタ財団。
約100名収容の会場は、120名ほどの参加者でいっぱいとなり、立ち見の参加者も出た。
(写真:司会の福田氏)
まず、福田房枝氏(子ども劇場全国センター常務理事)の司会で、山岡義典氏(日本NPOセンター常務理事)、松原明(シーズ事務局長)、田中尚輝氏(NPO事業サポートセンター常務理事)、早瀬昇氏(大阪ボランティア協会事務局長)から報告があった。
それぞれの報告要旨は次のとおりである。
◆山岡義典氏(日本NPOセンター)
(写真:山岡氏)
NPO法の附則では、法改正の期限は3年となっている。しかし、法人制度の改正案はできたが、テロなどのために今国会ではまだ提出されておらず、来年になる見込み。NPO支援税制については、形だけはできた。これについても、しっかりと改正する必要があり、連絡会で要望書も提出している。
1月から始まる通常国会には、法制度の改正提案が出るだろう。
NPO法が良かったのは、各都道府県で条例を作ることをはじめからビルトインしており、都道府県では苦労されただろうが、地域に密着したものとなった。
現在、NPOは若干バブル気味。月に200くらいの割合で誕生しているが、本当にNPOらしい活動をしているのは、3割から5割ではないだろうか。法人化しなくても良いような団体までが法人になっている。2000年4月に介護保険が始まったが、これもNPO法人の誕生を加速した。
NPOを支援するセンターも1996年から各地にできはじめているし、連絡会もシーズなどの事務局などの中核になるところがしっかりしており、よく機能した。結節点が良く動いたということ。
現在のNPO支援税制は「使うことを拒否する制度」である。この制度ができて、全国に60人もの国税担当者が配置され、NPOからの申請を待っていたら、たった2件だったという。NPOから、「これでは困る」と声をあげていくことが大事である。
◆松原 明(シーズ)
(写真:松原)
NPO議員連盟の改正案を見ると、私たち連絡会の案と大変よく似ている。
これは、昨年秋に仙台、滋賀、熊本、東京などでNPO議連がフォーラムを開き、NPOの声を聞いてもらったことなどにもよる。また、今年の春から夏にかけては、法改正・税制支援についても議論をしてもらった。法改正は、今日が期限であり、臨時国会が始まる前には、今日までには改正するつもりだったようだ。しかし、テロの関係で遅れてしまった。しかし、検討は進んできた。NPO議連の案は、現在、各党に持ち帰られて検討されていところ。来年1月からの通常国会には提出される予定だ。もし、各党の溝が埋まらないときは、党独自の案も提出されるかもしれない。各党一致なら、早いだろうが、そうでなくても4月か5月には改正されるのではないか。
なお、NPO議連の案には入っていないが、NPO法のうち「収入及び支出は、予算に基づいて行うこと」という条文は、公益法人会計に近いものでなければならない、という誤解を生む結果となっている。余計な条文であるので、削除をお願いしている。
NPO支援税制の改正については、自民党税制調査会が財務省と話し合いながら決めていくことになる。
NPO議員連盟のNPO支援税制の改善案は、自民党のNPO特別委員会が作った案とほぼ同じである。
正直言って、NPO支援税制の改正の見通しはまだ分からない。普通は、スタートしてみて、1年くらい様子を見てダメだったら変えるというのが政府のやり方。よって、10月に始まったばかりのものは、今年のアジェンダには載りにくいということがある。しかし、今年から来年にかけて粘り強く運動していくことが大事である。
◆田中尚輝氏(NPO事業サポートセンター)
(写真:田中氏)
現行のNPO支援税制はどうしようもないものだが、学習効果はあっただろう。今後どうするかの前に、この間の変化を押さえておくことが大事だ。
現行のNPO支援税制を0点とすれば、NPO議員連盟の案は、全部通れば55点から60点くらいにはなる。NPO議連案は、日本版パブリックサポートテストの分母から、特定非営利活動のうち対価を得て行った事業からの収入を控除できる。これは、大変良い内容だ。私がちがガードを固めて、この線で通してもらうことが重要。
また、みなし寄附金制度も、これが通ればNPOにとって大きな支援になる。ただ、注意して欲しいのは、「地域助け合い活動」の扱いについて。福祉系NPOなどが、地域でやっているボランティアの助け合い事業に、600円くらいの謝礼を払っている場合で、これを請負業ということで課税対象にしているところがある。税務署は、お金の動きがあると全て課税対象にしていくという感覚だ。これをどう押しとどめるか、という問題もある。
戦術論でいうと、皆さんの地域選出の国会議員に、ぜひ行ってNPOのこうした実情を説明して欲しい。これが大事だ。
◆早瀬 昇氏(大阪ボランティア協会)
(写真:早瀬氏)
大阪出身なので、こういうことは「みんなにとって得や」ということをわかってもらうことが大事だと思っている。税は、我々全体の財産で、一定の税金はもちろん必要。
今回できた支援税制のポイントは、寄附者がまず得とする制度であるということだ。
例えば、200万円の課税所得がある人が40万円の税を払う場合、この人がもし20万円の寄附をしたら36万円の税金に税額が減って4万円の得。
でも、それだけではなく、この人の寄附した20万円はNPOの公共的な活動に使われるから、これも得。
このようにNPOだけが得をするという話でないようにもっていかないとなかなか説得できないと思う。
大阪人なので、世の中、こういう理屈で動かんかな、と思っている。
また、会場からは次のような声があがった。
(写真:会場との質疑応答)
- 三重県議会で、NPO支援税制の改正を求める意見書を採択したそうだが、こうした動きが地方議会からもっと高まって欲しい。
- 田中氏は、NPO議連の案は55点から60点ということだったが、私はもっと高く評価して良いと思う。ぜひこの案でやってほしい。
- この案(法人制度の方)に欠落しているのは、NPO法人の認証待ちの期間の短縮。4ヶ月を3ヶ月にしてほしい。また、少しでも誤りがあれば、認証の申請をやり直すのではなく、微小なものについては補正手続きできるようにして欲しい。
- 地域でやっとNPOのネットワークができてきた。そこで、現行のNPO支援税制を説明すると、みんながっかりする。しかし、このNPO議連の案でシミュレーションをやってみて、皆が希望がもてるようにしていきたい。
NPO法施行3周年記念シンポジウムは、予定どおり午後8時45分に閉会したが、その後もロビーで互いの情報交換などを行うNPO関係者の姿が多く見られた。
2001.12.04
以上