ベトナム調査団訪日
1月19日から26日の間、ベトナム内務省副大臣、国会法務委員会の事務局次長、共産党中央執行委員会内政局次長といったメンバーが訪日した。
ベトナムでは、現在、民法の大がかりな改正作業に入っており、非営利セクターの改革もこのなかの重要なテーマとなっている。このため、奇しくも同じ時期に公益法人制度改革に取り組む日本の現状を調査し、自国の改革に活かそうというのが調査団の目的だった。
調査団は、南野法務大臣をはじめ、財務省、内閣官房行政改革推進事務局といった、日本の公益法人改革の関係部局などを精力的に訪問し、改革の背景や進捗状況を聞いた。
調査団は、政府関係のみならず民間の関係者も訪問し、その一環で、シーズ事務局長の松原明とも25日に会合がもたれた。調査団は、NPO法が日本で必要とされた理由や歴史的背景を聞くとともに、NPO法の成立過程において、シーズがどのように関わったのかなどについて関心をもっていたようだ。シーズのようなロビー活動団体は珍しかったのか、シーズが政府から補助金を受けていないことなどにも興味をもったようであった。
左から、団長のDang Van Chienさん(国会法務委員会の事務局次長)とシーズ・事務局長の松原
社会主義国であるベトナムでは、1986年のドイモイ(刷新)路線採用以降、対外開放政策を推進している。その一環で、市場経済化を支援するための法整備を急いでおり、1992年には新憲法が、1995年には民法が制定されている。
結社の自由はこの新憲法の69条のなかで公式に認められたかたちになったが、それより前の1957年の「社団設立の権利に関する法律」もあったという。
1995年に発行したベトナム民法は、その110条において、2種類の非営利団体を規定。ひとつは、おおむね他国の社団法人にあたる職能(職業)団体と、財団法人にあたる、慈善基金である。
民法典の発行を受けて政府は2つの法令を公布。1999年の「社会・慈善財団の運営および組織に関する規則」であり、2003年の「社団の管理・運営・組織に関する規則」である。これらは、法人の設立や内部ガバナンス、事業や解散などを規定している。
これらの法整備を受け、国際的NGOの活躍に比べて遅れていたベトナム国内のNPOも、少しずつ育ってきているという。
しかし、現行制度においては、設立手続きが煩雑で、許可制であることに加え、目的も国家に貢献することが条件となっていることなど、設立にあたって国家の裁量が大きく働く仕組みとなっている。また、事業内容にも政府の介入があり、政治的な活動が制限されていることなど、多様な活動を行うには不十分な法的枠組となっていることは否めない。
このような枠組みのなか、非営利セクターの支援に取り組む方針である政府は、法人化された団体には補助金を支給するシステムを構築しているため、比較的資金力があり、国益にかなう活動をする団体などの法人化が進んできたという。
今回の改正作業は、調査団の言葉を借りると、改正というより「初めてNPO法をつくる」作業であるという。許可制を改め登録制とするか、運営に政府がどの程度関わっていくかなどが議論されている。また、現行制度ではNPOに対する税制優遇制度はないが、これを改め、NPO本体への税制優遇を行うことや、その支援者への寄付促進税制を整備することも検討されているという。
ベトナムでは1月20日に新民法草案が公表され、現在パブリックコメントの募集中だそうだ。この条文全文が最大発行部数の新聞紙上で掲載され、無料で配布されるという具合に、パブコメ募集は徹底している。これらを集計して反映させる作業を経て、早くて来年には新法が成立する予定とのことだ。
このスケジュールは日本の公益法人制度改革のそれともおおむね一致しており、それぞれがお互いに学ぶことは多い。
社会主義国であるベトナムで、NPO活動促進の法制度がどのように設計されるのか。一方で日本はどうか。この動向に、これからも注目していきたい。
2005.02.23