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2005年の報告

2007年08月29日 15:42

公益法人改革・大阪シンポジウム

緊急学習会 どうなる!NPO法人制度の未来

~公益法人制度改革の有識者会議報告を受けて

 3月16日(水)の午後7時より午後9時まで、大阪市福島区で表記の学習会が開催された。主催は、大阪ボランティア協会。

 これは、連続で開催されているNPO向けの公益法人制度改革学習会の第6回目にあたる。

 大阪では、早瀬昇氏(大阪ボランティア協会事務局長)のコーディネートで、政府税制調査会(政府税調)の委員である出口正之氏(国立民族学博物館教授)、民法の専門家である雨宮孝子氏(明治学院法科大学院教授)、シーズ事務局長の松原がそれぞれの立場から意見を述べた後、会場との質疑応答を行った。

 会場には100名を超えるNPO関係者が集まり、関心の高さをうかがわせた。

 税制度までを含めた改革の問題点の洗い出し作業に、2時間は短かすぎたが、NPO法制定時の「公益」論争が再びこの改革の焦点となっていることや、税制の議論はまだこれからであり、今後も注目していかなければならないこと、NPO法の存在意義が問われていることなどが、課題として共有された。

 アンケートには、今後も関心を持ち続けることの重要さや、NPOらしさを自ら示していくことが大切と指摘する声も多かった。

 以下、概要をご報告する。


 まず、雨宮孝子氏から公益法人制度改革がなぜはじまったかという歴史的な経緯説明と、昨年11月に示された有識者会議報告の内容について説明があった。

 雨宮氏は、公益法人制度改革のそもそもの発端は民法の規定に問題があったことであり、縦割りの監督体制や、不明瞭な許可基準からくる裁量行政、官民癒着の問題などは、これが原因であると指摘した。

 また、有識者会議報告から読み取れる新制度の一階部分が原則課税となる可能性が高いことを指摘したうえで、「法人格取得の機会が広がったといっても、税制上のメリットがなければ、非営利活動の促進になるとはいえない。任意団体のときに課税されていなかったものが、法人格を取得したとたんに課税されるとすれば、果たして法人になろうと思うところがあるだろうか」と、疑問を呈した。

 加えて、一階部分の法人は残余財産の分配が可能となることについても、「これでは、一時的に2階にあがって税の優遇を受けて蓄財した後、故意に1階におりて解散、財産を私的に分配することも可能となる。これに関する監督も議論されているようだが、果たして実効力が伴うものか疑問。市民の支持を受けられる制度設計とはとてもいえない」と厳しく批判した。

 さらに、公益性の判断主体が、いわゆる行政の補佐的な役割となる8条機関(国家行政組織法第8条で規定される機関)となることについては、民間の委員が自由に意見をいえる場とはならない可能性が高く、それゆえに、公益性の認定基準を法律に明確に書き込むことが必要であると強調した。

 次に、政府税調の委員である出口正之氏から、公益法人制度改革の税制部分の検討状況について説明があった。

 公益法人制度改革の「法人制度」部分は昨年示されたが、「税制度」部分については長らく棚上げにされてきている。出口氏は、「税制」部分を検討する、政府税制調査会の「非営利法人課税ワーキンググループ」の委員であるが、このワーキンググループは2003年3月14日以降、まだ一度も開かれていない。

 そのような状況を背景に、出口氏は、昨年10月以降の税制調査会総会での議論を紹介しつつ、単なる課税強化だけという方向性が政府税調のなかでも変化しているのではないかと認識していること、スマトラ沖地震・津波被害の後は、寄付税制の拡充に政府税調の委員が積極姿勢を示していることなどについて報告した。

 出口氏は、スマトラ沖地震のような大災害は非常に悲しい出来事であるが、阪神淡路大震災のときのように、そこからどうしても必要なものを訴えていく契機ともなるのではないかと提案。今必要なのは、規律を厳しくするとか、形式的に書類を整えるということではなく、現場に即した制度なのでないかと訴えた。

 最後にシーズの松原から、NPO法が誕生した経緯や、成立過程で議論となった争点、今回の制度がNPO法の到達点を後退させかねない改革となりそうであることについて説明があった。成立過程で議論となった争点については、NPO法で「公益」という言葉を使うか使わないかで大きな議論となったいわゆる「公益」論争について解説があった。

 また、公益法人制度が変わるのであれば、NPO法の存在意義をNPOから示していかなければ、統合しようという動きは早晩でてくるだろうという課題提起が行われた。

 このような問題提起を受け、続いて行われたパネルディスカッションでは、出口氏が、実態に合い、かつ、小さな団体が育つような規模別の税制、とりわけ寄付税制を拡充する必要性を説き、そのことが結局、非営利団体の意味のある活性化に繋がり、財政全体に良い影響を与える点を指摘した。

 一方、雨宮氏は、政府が寄付税制をいくら拡充しても、寄付を受ける側の団体が、寄付や会費にも課税されるいわゆる「原則課税」の団体であれば意味がないことを指摘。課税を強化して、寄付税制を拡充するという方向性は誤りであると批判した。

 パネラーの意見は、三者三様であった。

 雨宮氏のようにNPOと公益法人は統合して、よりよい制度を目指した方がいいという論者もあれば、松原のように、このままの改革であれば、NPOと公益法人は分離していった方がいいとの立場もあった。また、雨宮氏が、共益を追求する中間法人との統合はおかしく、あくまで、現行の公益法人の改革をするべきであると強調する一方で、出口氏は、町内会や同窓会など中間法人的団体に課税するのは、市民感覚としておかしい。中間法人がセットになっているのは、議論を正しく進めるチャンスである、と指摘するなど、意見が分かれた。

 このような議論に、この問題の複雑さが会場にも伝わったようであった。

 早瀬氏は、最後に「政府主導の今回の改革は、理念もなく、ただ課税を強化し、監督を強化するためのものであることは確かである。現在NPOは制度改革の対象外となっているが、税制についてはまだわからない部分も多い。今後も随時皆様に情報を提供していくので、ぜひ、関心をもってこの問題にかかわってほしい。このように市民が関心をもつことが大きな力となる。動かなければならないときには、声をかけるのでぜひ協力してほしい」と呼びかけ、会を締めくくった。

報告:シーズ 安部嘉江

2005.04.21

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