公益法人改革連続学習会・京都
明るい?それとも暗い?
どうなる?NPO法人制度 その未来
3月4日(金)、キャンパスプラザ京都会議室において「明るい?それとも暗い? どうなる?NPO法人制度 その未来」と題して、公益法人制度改革に関する学習会が開催された。講師はシーズ事務局長の松原明氏。夜間の開催にもかかわらず、参加者数は40名を超え、会場は熱気に包まれた。
松原氏からは、まず、そもそも「NPO法人とは何か」、「NPO法はどういう経緯で成立に至ったのか」についての説明があり、これを踏まえ、今回の公益法人制度改革の概要についてのレクチャーに進んだ。
公益法人制度改革とは、民法34条の公益法人(社団法人、財団法人)の制度を廃止し、新しい非営利法人の制度に切り替えるというものであり、2階建ての仕組みになっていることが特徴である。
まず1階部分は、一定の要件を満たせば登記だけで法人格が得られる「一般的な非営利法人」というものである。これは、法人格の取得と公益性の判断を分離することで、法人格の取得を容易にし、幅広く非営利の活動を促進しようという意図がある。
しかし、この「一般的な非営利法人」は、これまでの公益法人のような税制面の優遇制度を受けることはできないという見方が大半だ。税等の何らかの優遇措置を受けるには、2階部分にあたる「公益性のある非営利法人」に認定されなければならない。「公益性のある非営利法人」とは、一般的な非営利法人のうち、一定の要件を満たすものを公益性を有する非営利法人として、新たな判断主体が判断する仕組みを創設するということである。その意図するところは、「規律のしっかりした公益性を有する法人による公益的活動の健全な発展をはかる」ということだ。
現行制度から新制度への移行に関していえば、今までの財団法人や社団法人は、判断主体によって公益性を有すると判断されれば、「公益性を有する非営利法人」となり、判断されないものは「一般的な非営利法人」へ移行することになる。その結果、今まで税制優遇を受けていた公益法人は課税が強化されるということになる。
NPO法人との関連では、昨年、政府が一方的にNPO法を廃止し、この新しい非営利法人の制度に統合しようとしたということがあげられる。現在は、NPO法人は、この新しい非営利法人の制度は切り離すことになったが、いずれは制度を一本化して課税強化されるとう懸念も否定できない。
今回、NPO法人が新しい非営利法人の制度と切り離すことに決定した理由として政府の有識者会議の報告書では以下のように述べられている。
「公益性を判断する新たな制度は、規律のしっかりした公益性を有する法人による公益的活動の健全な発展を図るものであることからも、特定非営利活動法人制度は引き続き存置されるものと考えられる」
これは、要約すれば、NPOは「規律がしっかりしていない」(ちゃんとしていない)法人であり、「公益活動の健全な発展を図るもの」ではないという政府の認識があり、故に今回の新しい制度との一本化が、なされなかったということであろう。
また、政府は、新しい非営利法人の制度について、公益性を有するか否かの判断主体は、民間の有識者からなる合議制の委員会を設置し、中立性を持たせるとしているが、官庁に都合のよい法人だけが公益性があるという認められるのではないかという懸念もある。
NPO法人は2万団体を超え、現在、毎月400を超える新規法人が生まれている。その中には、暴力団の隠れ蓑的な団体として認証が取り消される事例や、営利団体の一部として設立されたものも目立ってきており、NPOに対する信頼は揺らいでいる。
そんななか今回の公益法人制度改革の議論のひとつの焦点である「公益性とは何か」、「誰がどのように判断すべきなのか」という問いは、「NPOとは何か」という問いかけにもつながる。
NPOとは、そもそも、市民による新しい公共を拓く道具であったはずである。NPO自身がその原点を再度意識しながら、今後のNPOをめぐる制度のあり方、公益法人制度の改革のあり方に対して向き合い、働きかけていく必要があるだろう。
報告:きょうとNPOセンター 赤澤清孝
2005.04.18