民主党主催「平成19年度NPO関連予算公開ヒアリング
民主党は、1月29日午前10時から午後6時まで、東京の平河町にある都道府県会館において、10府省のNPO関連予算を扱う担当官を招き、「平成19年度NPO関連予算公開ヒアリング」を行った。
この公開ヒアリングは、2001年から毎年開催され、今回で7回目。NPO関係者に、来年度の活動の参考にしてもらうことを狙いとして開催される。
今回、NPO側からの参加者は全国各地から約100名。
来場して説明を行ったのは、NPOに関連する予算案を今国会に提出している、外務省、総務省、経済産業省、環境省、厚生労働省、文部科学省、農林水産省、国土交通省、法務省、内閣府の10府省。予算説明に来場した10府省の担当官は、総勢61名にも及んだ。
なお、今年は各府省の説明に加えて、来年度に厚生労働省と文部省が連携して取り組むことが予定されている、「放課後子どもプラン」について、別枠で両省の担当官が説明を行った。
■開会挨拶
ヒアリングに先立ち、民主党市民政策議員懇談会事務局長を務める原口一博衆議院議員が登壇。
「全国各地で様々な分野で積極的な活動を展開して成果を上げているNPOに心から敬意を表したい。市民公益の拡大にむけて、民主党はNPOの皆さんとともに、いっそう邁進していく。」とNPOへの期待と連携の決意を述べ、開会の挨拶とした。
続いて、10府省の担当官から、平成19年度NPO関連予算の概要説明が行われた。
■ ■ ■ 午前の部 ■ ■ ■
■外務省
- 国際協力局民間支援室主席事務官
鈴鹿光次氏 - 国際協力局民間支援室課長補佐
高根和正氏 - 国際協力局民間支援室外務事務官
井實 聡氏
外務省の19年度要求額は総額で141.9億円(18年度予算額:151.1億円)。登壇した担当官は、政府開発援助の担い手として、草の根レベルで現地のニーズを把握し、災害時などに迅速な対応ができるNGOに大きな期待を寄せているとし、今後5年間でNGO参画型事業の実績を飛躍的に増大させたいと述べた。
予算としては、来年度、日本のNGOを対象に33.1億円を計上。その中には、これまでの「日本NGO支援無償資金協力」を「日本NGO連携無償資金協力」に名称を変更して28億円を、さらに、NGOの能力強化策も4.7億円盛り込まれている。この能力強化策のなかには、新規事業として、NGOの中堅職員を対象にした長期スタディプログラムと若手職員を対象とした研修プログラムが含まれている。
加えて、外務省は、日本のNGOを対象にしてはいないが日本のNGOにも裨益しうる予算として、「草の根・人間の安全保障無償資金協力」に100億円、「草の根・人間の安全保障無償調査員経費」として8.8億円を計上している。
■総務省
- 官房企画課課長補佐
渡辺氏 - 自治行政局地域振興課課長補佐
佐藤氏 - 情報通信政策局情報通信利用促進課課長補佐
高田氏
総務省の要求額は3.3億円(18年度予算額:3.2億円)。これには、「情報通信人材研修事業」3.1億円と、「ICTメディアリテラシー育成事業」2千2百万円が含まれる。これに加えて、NPOなどの活動の活性化に要する経費(NPO法人認証、NPOに参加する人材研修、活動助成など)について地方交付税措置が、高齢者、障害者などとの共生社会を支える市民活動支援のための施設整備に対する地方債、地方交付税措置が講じられるとのこと。
■経済産業省
- 政策局経済社会政策室課長補佐
大西啓仁氏 - 政策局経済社会政策室
宮澤裕義氏 - 政策局立地環境整備課長補佐
安藤保彦氏 - 商務情報政策局サービス産業係長
泉井厚志氏 - 商務情報政策局医療・福祉機器産業室係長
寺崎秀朗氏 - 産業技術環境局環境調和産業推進室課長補佐
藤井法夫氏 - 産業技術環境局環境調和産業推進室
佐々木秀裕氏 - 資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部政策調査官
茅根康弘氏 - 資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部新エネルギー対策課係長
市川国昭氏 - 中小企業庁経営支援部経営支援課
二井内公人氏 - 中小企業庁経営支援部商業課係長
近藤 毅氏
経済産業省の担当官は、景気回復には民間が活力を取り戻すことが必要であり、その活力の担い手としてNPOに期待していると述べた。
来年度予算案には42.9億円を計上。そのうち、最も金額が大きいのが広域的新事業支援連携等事業費補助金の17億円。他には、新規事業として、中間支援機能の強化を通じたコミュニティビジネス支援に1.6億円、中小企業等環境配慮活動活性化促進事業委託費0.9億円を盛り込んでいる。
これに、中心市街地活性化事業63億円、地域新エネルギー導入促進対策費補助金44.7億円などの内数が加わえると、NPO関連予算要求額は180.3億円(18年度予算額:130億円)となった。
■環境省
- 総合政策局環境教育推進室室長
北沢克巳氏
環境省の担当官は、同省は環境保全に関して、NPOを重要なパートナーと位置づけており、積極的に協働、連携を図っていきたいと述べた。19年度の予算案は12.5億円(18年度予算額:13.3億円)。地球環境パートナーシッププラザの運営、地域の「環境パートナーシッププラザ」の増設を含むパートナーシップ事業には、例年並に、2.0億円を計上している。予算案のうち最も大きいのが「地球環境基金助成金」で9.7億円。新規には、環境ボランティア活動に対する支援等として、里地里山・里親プラン事業の3千2百万円。この事業は、団塊世代の都市住民が活動に容易に参加できるための情報システムの確立と、研修の実施だとのこと。
■ ■ ■ 午後の部 ■ ■ ■
■厚生労働省
- 職業安定局総務課課長補佐
小宅栄作氏 - 職業能力開発局キャリア形成支援推進室室長補佐
國分一行氏 - 職業能力開発局能力開発課課長補佐
畑 俊一氏 - 医政局指導課緊急医療係主査
平野貴之氏 - 健康局疾病対策課課長補佐
三好英文氏 - 雇用均等・児童家庭局少子化対策企画室子育て支援係長
香取 徹氏 - 雇用均等・児童家庭局育成環境課予算係長
竹中大鋼氏 - 社会・援護局地域福祉ボランティア係係長
寺床慎也氏 - 老健局介護保健課財政第一係係長
登内晋司氏 - 老健局計画課課長補佐
村上洋二氏 - 老健局老人保健課課長補佐
須藤浩克氏
厚生労働省のNPO関連予算案は、労働分野と厚生分野に分けて説明された。2分野の合計は1693.2億円(18年度予算:1573.4億円)。労働分野は、内数で表されるものも含めて198.6億円(18年度予算:244.8億円)。来年度予算には若者に対する支援事業が多く、都道府県に設置される若年者のために実施される企業説明会やセミナー事業を委託して就職支援をおこなう「若年者地域連携事業」に、24億円を計上。加えて、内数ではあるが、働く自信をなくした若者に対する合宿形式の労働体験学習事業と、ニートの自立支援に関して各々約10億円づつ、また、公共職業訓練の民間委託として134.5億円を計上。
厚生分野は、内数で表されるものも含めて1494.6億円(18年度予算:1328.6億円)。主なものは、介護予防事業への交付金の573.5億円と、地域介護・福祉空間整備等交付金の421億円。内数では、子育て支援に関する事業に、計449.41億円が示された。
■放課後子どもプラン関連(厚生労働省・文部科学省)
- 厚生労働省雇用均等・児童家庭局育成環境課課長補佐
倉林良男氏 - 文部科学省生涯学習政策局生涯学習推進課教育事業振興室室長
濱口太久未氏
「放課後子どもプラン」は、文部科学省が新規事業として「放課後子ども教室推進事業」を立ち上げ、最終的には全国2万か所の小学校区で実施できるように、厚生労働省が行う「放課後児童クラブ」(通称「学童保育」)と「一体的または連携」して市町村が推進していくというもの。子ども施策で縦割りとの批判が強かった厚生労働省と文部科学省が、19年度から本格的に連携して行う。
具体的には、文部科学省が放課後や週末の子供たちにさまざまな体験・交流プログラムを提供している「地域子ども教室」と、小学1~3年生の共働き世帯の児童を対象にした厚生労働省の「放課後児童クラブ」通称「学童保育」を、「放課後子ども教室」として一体化、あるいは連携させる。
両省の説明では、この「放課後子どもプラン」の事業費は、国、都道府県、市町村で3分の1ずつ負担。両省は国の負担分として、来年度予算に約130億円を「地方公共団体向け補助金」として要求している。内訳は、文部科学省が68.2億円。厚生労働省が158.5億円。
共働き家庭の子どもを対象にした従来の「学童保育」は、行政や、NPOなどの民間の運営主体が、厚生労働省の補助金を受けながら、小学校や児童館、民家を利用して行っている。しかし、共働き家庭が増える中で、学童保育の拡充を求められていた。そこで、「放課後子どもプラン」では、これまでの学童保育を引き継ぎ、最終的には活動場所をすべて小学校内に移した上で、これまで実施されていなかったすべての地域に、学童保育を広げたいとしている。
今回、別枠で「放課後子どもプラン」関連の予算説明が求められたのは、多くのNPOが「学童保育」に取り組んでいる中で、この新たな取り組みが大きな関心事となっているため。
「放課後子どもプラン」については、会場からの発言も相次いだ。参加したNPOからは、「学校施設を活用して、両事業の一体的または連携を図るという枠組みでは、学童保育の事実上の廃止にすすむ市町村が出てくる可能性があり、これまで第2の家庭としての学童保育が果たしてきた役割が果たせなくなり、子どもたちに不利益となるのではないか。」、「地域子ども教室推進事業と学童保育は、その目的・役割、内容・体制もまったく異なる事業であり、それぞれに必要な事業なので、その目的にそって双方の拡充を図りながら連携していくことが必要である。」といった意見が出た。
こうした意見に対して、両省の担当官は、「新事業は決して学童保育を廃止するものではない。」、「共働き家庭からのニーズがある限り、プラスアルファの機能として存続することは間違いない。」、「地域の子育てということで、地元NPOの果たす役割は欠かせないものなので、省としても市町村への働きかけはしていきたい。」と述べた。
■文部科学省
- 文部科学省生涯学習政策局生涯学習推進課教育事業振興室室長
濱口太久未氏 他12名
文部科学省の予算案は、263.2億円。(平成18年度予算:192.0億円)「生涯学習分野」、「初等中等教育分野」、「スポーツ・青少年分野」、「科学技術・学術分野」の4分野からなっている。
「生涯学習分野」は、77.1億円。ここに新規事業の「放課後子どもプラン」の68.2億円、「学びあい、支えあい」地域活性化事業の6.2億円が含まれる。他には、子どもの生活リズム向上をはかる「早寝早起き朝ごはん」運動推進に向けた調査研究・指導資料作成に2.4億円が盛り込まれている。
「初等中等教育分野」は、2.4億円。不登校児童生徒に対する学習カリキュラム、活動プログラムの開発に、昨年度予算とほぼ同じく、1億円を計上。
「スポーツ・青少年分野」は、「子どもゆめ基金」として23.0億円。この分野には、toto(スポーツ振興くじ)による助成も含まれるが、収益額が確定していないため、現時点での助成金額は示されなかった。
「科学技術・学術分野」は、160.7億円。「本物の舞台芸術に触れる機会の確保」として、学校の体育館での舞台芸術鑑賞などの請負事業として、33.0億円が計上された。
■農林水産省
- 大臣官房企画評価課課長補佐
土肥義博氏 - 水産庁漁場資源課課長補佐
江口静也氏 - 農村振興局農村政策課企画官
吉川益夫氏 - 農村振興局農村政策課課長補佐
福田和久氏 - 農村振興局地域整備課課長補佐
日置秀彦氏 - 林野庁計画課課長補佐
井上康之氏 - 林野庁整備課課長補佐
齋藤 哲氏 - 林野庁研究・保全課課長補佐
林 視氏 - 林野庁業務課課長補佐
石橋岳志氏
19年度の予算要求額は366.2億円。(平成18年度予算:10.2億円)大幅な増額は、内数として、「農山漁村活性化対策費」、「農村振興対策経費」、「農村振興対策経費」が合計で351.2億円計上されたから。同省では、今後の政策目標として、農山漁村への定住者を平成28年度までに150万人増やし、二地域居住者も300万人増やすとしていることから、都市と地域のつなぐ役割、農山漁村の活性化にNPO活動の積極的な活用を想定しているとのこと。
■国土交通省
- 総合政策局政策課課長補佐
林 雄一郎氏 - 総合政策局政策調査第2係長
米澤明男氏
NPOに関連する19年度の予算額は内数も含めると、31155.17億円(平成18年度予算:31732.0億円)。他の省庁に比べて大きな予算額になっているが、12.1億円以外はすべて内数。
31155.17億円のうち、8割以上を占める25665.74億円は、国や地方公共団体がNPOと協働で実施する事業に対するもの。そのうち、11662.32億円が計上されているのが、「子どもの水辺」再発見プロジェクト。この事業は、遊歩道の設置などの施設整備に加え、NPOなどが中心となって協議会を設置して「子どもの水辺」の登録をおこない、登録された「子どもの水辺」に対しては、「子どもの水辺サポートセンター」から活動に必要な資機材の貸し出し、情報提供などの支援を行うというものだそうだ。
■法務省
- 大臣官房会計課上席補佐官
神田 滋氏 - 矯正局専門官
五十嵐定一氏 - 保護局補佐官
今福章二氏 - 人権擁護局補佐官
降旗優次氏
法務省の担当官によれば、同省では、直接NPOを支援するための予算枠はないとのこと。ただし、ボランティア活動等に関連する予算を71.7億円(平成18年度予算:63.8億円)計上しているとのこと。このうち、60億円は、立ち直りを支える保護司活動等経費。保護司活動の実費弁償のほか、ボランティアに対する研修や顕彰のための費用が盛り込まれている。また、子どもの人権に関する取り組みが求められている中、「子どもの人権専門委員活動経費」の予算要求額は、今年度予算の0.25億円から、1.26億円に増額。
■内閣府
- 国民生活局市民活動促進課課長補佐
出口恭子氏 - 国民生活局政策企画専門職
武井亜起夫氏
はじめに、内閣府の担当官は、「NPO法が施行されてから8年が経過し、認証数は3万に近づいている。NPOは行政でも企業でもない新たな社会の担い手として重要な存在。内閣府としては、NPO法人などが充分に活躍できるための環境整備に努めている。」と述べた。
19年度予算案におけるNPO関連予算要求額は、総額で3.0億円(平成18年度予算:2.89億円)。
このうち、「市民活動団体等総合支援事業」に対しては、1.1億円を計上。この事業は、NPO等の市民活動団体の活動により、多様化する地域ニーズに適確に対応するとともに地域再生の推進を図るため、各地の先駆的な人材育成事業及びネットワーク形成促進事業への支援を実施するもの。事業を実施する団体と内閣府とが請負契約を結ぶ形で支援が行われ、1件当たりの請負金額は500万円程度とのこと。
また、「IT利用による市民活動情報の提供の高度化」に1.0億円。この中には、内閣府が管理運用している「NPO情報ポータルサイト」と内閣府への申請団体及び内閣府所轄のNPO法人に関する縦覧・閲覧書類のネット上での公開が含まれている。
また、認証・監督業務などのNPO法の施行体制の整備に、0.55億円。市民活動促進に向けた調査研究には、0.3億円を計上している。
参加者からは、昨年11月に一部新聞で、「NPOの会計基準統一」記事が掲載されたことについての質問が出た。この報道の内容は、内閣府が、2008年度をめどにNPOの会計基準を作成する方針を固めたというもの。会場からの「この報道は事実なのか?」という質問に対して、内閣府の担当官は全面的に否定した。
当日は、約1時間の昼食休憩をはさんで、8時間を超える長丁場だったが、参加者は各府省庁の説明に熱心に耳を傾けていた。
文責:徳永洋子(シーズ)
2007.02.06