私たちNPOは使える支援税制がほしい(熊本)
認定NPO法人制度改正のための全国キャンペーン意見会
日時: | 平成14年2002年11月23日(土) 18時30分~20時30分 |
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場所: | くまもと県民交流サロン「パレア」9階会議室2 |
主催: | 特定非営利活動法人「NPOくまもと」 |
共催: | NPO/NGOに関する税・法人制度改革連絡会 |
協力: | シーズ=市民運動を支える制度をつくる会 |
助成: | トヨタ財団 |
現在、認定NPO法人制度の改正が検討されている中で、NPOの活動を支援する税制に変えてほしいと要望すると同時に、各方面の御協力を得て熊本からも声を上げていこうと、今回集会を開催した。
集会には、地元選出の木村仁参議院議員(自民党)に出席していただき、また野田毅衆議院議員(保守党)と松野頼久衆議院議員(民主党)の秘書も代理出席していただいた。その他の熊本県選出の松岡利勝衆議院議員(自民党)・園田博之衆議院議員(自民党)・野田毅衆議院議員(保守党)・三浦一水参議院議員(自民党)からも激励のメッセージが届いた。
集会では、まず木村仁参議院議員に国会での活動状況等を報告していただき、その後、「シーズ=市民運動を支える制度をつくる会」の松原明氏に「認定NPO法人制度に関する現状と課題」及び、NPO/NGOに関する税・法人制度改革連絡会が11月15日に提出した「NPO支援税制の改善に関する要望書」について報告していただいた。
半数の参加者は、NPO法人関係者やこれからNPO法人の立ち上げたいという人、NPOについて勉強したいという人で、NPOへの関心が広がっていることをうかがわせた。この参加者のうち、認定NPO法人制度について少しでも勉強したことのある人は約半数であった。
この集会で、現行の認定NPO法人制度の不備を再確認し、今求められている協働社会を担うNPOを育てるために、認定NPO法人制度の改正を求めていこうとの意見が出された。
司会は「NPOくまもと」代表理事の上土井章仁が務めた。
内容の要旨は以下のとおり。
木村仁参議院議員(自民党)からの国会活動等の報告と今後の活動への決意表明
自民党の中にNPO議連があって、会長が額賀福士郎衆議院議員、事務局長が熊代昭彦衆議院議員であり、私も参加している。税については、ちょうど党の税調がヤマ場で協議中である。私は党の国土交通部会に入っており、現在、国土交通省関係の税改正についての仕事をしている。
また私は、東京の玉川学園にある「みどりのゆび」という環境NPO法人で理事をしているので、NPOと無関係というわけではない。NPOに対して、寄付税制も必要であるが、NPO法人自身の税についても必要である。しかし認定NPO法人制度で認定を受けているのは9法人であるが、一万近くの法人があって9法人しか認定を受けていないのは制度自身に欠陥があると考えているので、これから取り組んで勉強していきたい。また、NPO議連があっても積極的に参加していきたい。今後とも長いお付き合いをしていきたい。
「シーズ=市民活動を支える制度をつくる会」事務局長 松原明氏 報告
去年10月1日からスタートした認定NPO法人制度は、税制をつかってNPOをバックアップする制度である。ところが、今NPO法人が9,000あるが、たったの9法人しか適用を受けることができていない。さすがに政府のほうもこれでは問題であると、制度を導入した意味がないのではないかということで、政府、与党3党のほうで見直しを進めている状況である。
しかし、どれくらい社会にニーズがあるのか、それからどこを見直していいのか、ほんとに効き目があるのか、といった問題がある。そして、やはり制度の見直しを財務省に指示していただくのは政治である。そこで、全国各地でNPOの側が見直しを求めているということをわかってもらうために、こういう集会を各地で行っており、10月31日から、宮城県、愛媛県、広島県、愛知県、埼玉県、群馬県、福岡県、北海道、兵庫県、茨城県、東京都、そして今日が熊本県、あと大阪府、栃木県、岡山県と全国15ヵ所で開いており、徐々に参加者も増加して、北海道で90名、兵庫県で100名、茨城でも100名、東京は350名の参加者で、熱気に包まれた集会を各地でやっている。
現在の状況は、かなり我々の要望に沿った内容でリストに入れていただいているが、この集会は意見表明の場であると同時に、我々も理解し、改正されれば制度をどんどん使っていこうということで、事前に勉強する場にもなっている。
NPO法人は現在、最新の統計で全国で8,679法人あり、加速度的に伸びている、人気がある成功した制度だと喜んでいる。ところが、NPO法人の設立や運営上の問題が表れ始め、特に財政面の問題が指摘されている。また、NPO法人、雇用の担い手、経済的な主体として、地域ビジネスの担い手として期待されているが、有給スタッフの数も少なく、ひとりあたりの給料も少ないのが現状である。
そこで、NPO法人が安心して活動できるように、2001年に認定NPO法人制度ができた。これは、寄付をした個人や法人が所得税や法人税の軽減を受ける制度である。しかし、認定NPO法人という資格を得た団体の数と言うのは、わずか9法人(申請は18法人)である。そこでこの制度はNPOの現状を反映したものになっていない制度ではないかということで、認定要件を見直すことが必要だとわかってきた。
現状の制度には多くの問題点があり、NPO法人の育成を阻害するような制度になっているとも言える。シーズによるアンケートの結果により、その理由が明確になってきた。
まず、日本版パブリックサポートテストには、現在のNPO法人のうち3.4%しかパスできない。現在、3割のNPO法人が行政や国際機関からの委託事業があるが、その比率が大きいほど難しくなる。これでは行政とのパートナーシップが阻害要因となっている。補助金や助成金も同様である。また、正会員からの会費は議決権がその対価とみなされ、正会員が多いほどパスできない。これでは介護保険事業や子育て事業など、他省庁が推進しているものは会員制をとるよう指導されているが、こうした福祉分野のNPO法人が排除されることになる。そして、NPO法人が担うことへの期待が大きいこうした地域密着型の事業は、広域性の要件でも排除されている。他には、2年の更新制であること、3,000円以下の小口寄付金は寄付の実績として評価されないこと、申請書類の多さなどをあげることができる。
そこで、各省庁、自治体、経済界からも改正を求める声があがっており、NPOの我々も認定NPO法人制度の改正を求め、国会に声を届けることが必要である。NPO制度も市民の声からできた制度であり、NPO法人を育てるためには、まず、今ある認定NPO法人制度をNPOの実態にあったものに変えていき、認定されやすい制度にしていくことが急務である。その他の優遇制度は、認定NPO法人となって社会に信頼されていけばついてくる制度である。
そのため、11月15日に「NPO支援税制の改善に関する要望書」を国会に提出し、認定要件の緩和、みなし寄付金制度の実現、認定期間と更新手続きの再検討、地方税における優遇措置の実現、の4項目を要望した。
参加者との質疑応答
1 認定NPO法人制度とは、寄付をしてくれる人や団体のための制度なのか。
- 基本的に寄付税制であり、まずNPO法人を育てるためには広く市民に知ってもらうことと、NPO自身の財政基盤の強化が優先課題であるから。2 地方税についても優遇税制の運動をしてほしい。
- すでにNPO法人への優遇税制を実施している自治体がある。要望書にも盛り込んであるが、やはりその地元で制度を求める声をあげていくことが必要である。3 認定NPO法人制度の根拠法規は何か。
- 一般法ではなく租税特別措置法で規定されている。しかし、細かい要件などは省令などに委任されている。4 寄付税制も必要だが、NPO自身への地方税などの軽減も活動のために重要なのではないか。
- NPO制度も私達が活動して生まれた制度である。認定NPO法人になることが大事で、認定を受けると、各種の優遇措置はあとからついてくる。今後、税制以外の制度も求めていくが、地方税についてはやはり地元からの声のほうが採用されやすいので、ぜひ活動して欲しい。
「NPOくまもと」理事 古賀倫嗣熊本大教授の総括
NPOの出発点にあるのが、もうひとつの公共とかもうひとつの公益という概念である。会員以外からどれだけ支えられているかという担い手の問題、会員以外の人にどれだけサービスを提供しているかという、担い手とサービスとの公開性を考え直す必要がある。
また、なぜ支援税制が寄付税制から始まるのか考えると、広く寄付を集めることがこれから私達がつくりあげていくシステムであるということだ。そして、松原氏の報告を聞いて、私達の声が国や地方の流れや制度を変えていくのであることを改めて感じた。「NPOくまもと」でも地元でもっと活動を広めていきたい。
報告:NPOくまもと
2002年12月2日