米国の寄附事情(予告)
新コーナーがはじまります!
ナビゲーターからのメッセージ:
皆さん、こんにちは。シーズ事務局の轟木洋子(とどろきひろこ)です。
新しく始まる特別連載コーナー「米国の寄附事情」で、ナビゲーターを務めます。どうかよろしくお願いいたします。
さて、このコーナーは、2002年5月、国際交流基金日米センターから助成を受けて、シーズが米国を訪問した際の記録です。私もこの調査団の一員として、ニューヨーク、ワシントンDC、デンバーの3都市を巡り、さまざまなNPOや財団、そして企業の方々のお話を直接伺うことができました。
米国訪問の目的は、寄附に関しての聞き取り調査を行い、米国のNPOや財団、そして企業は寄附をどのように捉えているのか、またNPOは募金のためにどのような努力をしているのかを知ることでしたが、日本とは違った事情や社会背景など、さまざまなことを学ぶことができました。ここでは、お話を伺ったなかから、特に興味深かったと思われる記録を皆さまにご紹介いたします。
さて、「日本には寄附土壌がない」とよく言われます。なかには、寄附を集めることはあきらめた、というNPOもあります。確かに、2000年一年間の一世帯あたりの平均寄附額を比較すると、米国では1,620ドル(約19万円)、日本ではたった3,199円でした。愕然とするほどの違いです。しかし、一方で日本にもたくさんの寄附を集めているNPOはあります。そうしたNPOからは「日本にも寄附土壌はある。ただ、それをきちんと耕そうとしていないだけだ」という答えが返ってきます。
寄附というのは、単に資金源として大事なだけではないと、私は考えています。募金活動は、何よりも社会問題への「気づき」を人々に提供するきっかけとなりますし、理解者を増やしていく重要な手段でもあります。例えば、日本国内で募金に成功しているユニセフは、世界の子どもたちの直面する問題を私たちに知らせてくれる仕事もしていて、それによって理解者を増やしているのです。もし、NPOが募金活動をあきらめるのなら、それはNPOが社会へ開く扉を自ら閉じてしまうことになるのではないでしょうか。そこからは、理解者・支援者の輪は広がってはいかないでしょう。
確かに募金活動というのは、手間隙がかかるものです。なかなか大変な作業です。しかし、米国のNPOのほとんどは、それをいとわず様々な努力を続けています。米国では、書店で「fundraising(募金活動)」関係の本を探すと、山のように見つかります。そうした努力が、現在の米国の寄附土壌を耕してきたのだと思います。
このコーナーで紹介する米国の募金担当者の言葉は、そっくりそのまま日本にあてはまるものではありません。しかし、みなさんが募金について考える時のヒントも隠されていると思います。どうぞ、楽しみながらお読みください。
ナビゲーター 轟木 洋子(シーズ事務局)
(2003.05.20)
※ インタビュー記録では、黒田かをりさんにもご協力いただきました。ありがとうございました。
この調査発表は、国際交流基金日米センターの助成事業です。