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2002年の報告

2007年08月29日 11:48

米国の情報公開と評価の手法

NPOにとっての効果的な情報公開と評価の手法とは

- 米国ガイドスター会長バズ・シュミット氏を囲むセミナー -

 2002年7月3日(水)午前10時から12時まで、表記のセミナーが東京都千代田区丸の内において、日本NPOセンターの主催で開催された。後援は財団法人 日本国際交流センター。NPO、財団、マスコミ、政府関係者など約15名が参加した。

 このセミナーは、米国においてこれまでに90万件以上のNPOの事業内容や財政情報を集約してホームページ上で公開しているデータベース「ガイドスター」について、これを運営しているフィランソロピック・リサーチの創設者で会長であるバズ・シュミット氏からの説明が中心だった。

 シュミッツ氏の説明の概要は次のとおり。


 ガイドスターを運営するフィランソロピック・リサーチの目的(ミッション)は、「情報を通じ、慈善事業と非営利団体活動に革命を起こす」こと。

 助成財団や個人寄付者が、どこに寄附をするか決定するにあたって、日本においても最近NPOを評価するシステムが必要だと言われているが、シュミット氏によれば、評価については次のような問題があるという。

  • NPOは複雑な組織であり、ひとつの指標ではかれるようなものではない
  • NPOを比較するのは困難。基準にあてはめようとするのは無理がある
  • 事業の効果性をはかることも困難である
  • それぞれの寄付者・支援者は千差万別で、独自の価値観をもっている
  • 寄付者・支援者の期待値や関心はそれぞれ違う

 たとえば、米国では一般に収入のうち75%以上を事業費に充てているNPOを、運営が良好だと判断する傾向にあるが、分野だけで切り取って比較してみると、フードバンクの活動をしているNPOの事業費の平均は90%を超えているが、美術館運営をするNPOの場合の平均は60%台であり、分野だけの違いを見ても単純な比較は不可能だということが分かる。

 このため、フィランソロピック・リサーチでは、ガイドスターというデータベースを構築し、ここでNPOの事業内容、会計や税務についての詳細な情報を提供し、寄付者・支援者側が自分で判断できるようにしている。

 ガイドスターには、年に約25万のNPOの確定申告書のイメージデータがIRS(米国内国歳入庁・日本でいう国税庁)から提供される。ガイドスターでは、これを独自に加工し、NPO毎にミニウェブサイトに展開して提供している。

 ウェブの利用者は、ガイドスターの「アドバンスド・サーチ」にカテゴリー、所在地などを入力して検索すると、知りたいNPOの情報にアクセスすることができる。ひとつひとつのNPOの情報は、活動内容、収支計算書、財産目録、理事名、確定申告書、活動計画、また目標に対してどの程度達成できたかに関する自己評価などを含んでいる。また、ガイドスターの会員であれば、パスワードを入力すると、さらに詳細な情報(財政分析や税控除に関するものなど)を入手することもできる。

 ガイドスターの利用者は、個人寄付者、NPO、助成団体、マスコミ、会計事務所、専門家や研究者、政府関係者など多様だが、特に、ガイドスターの利用によって意思決定を行うのは個人よりも組織。


 シュミッツ氏の説明の後には、質疑応答の時間が設けられた。以下はその抜粋。

Q:IRSから確定申告書の情報を受けているとのことだが、こうした情報を受けている団体は他にあるのか?

A:ガイドスターとファウンデーション・センターのみ。IRSでは、確定申告書をスキャンしてもらうが、この経費は支払っている。IRSの中の税控除部門とは緊密な関係を持っている。そこにはこちらからも情報を提供していて、いわば依存されている。なお、ガイドスターに関しては、営利団体との競合は近い将来はないだろう。というのは、営利団体にとっては、それほど魅力的な事業とは思わないから。IRSからは、情報は無料で提供するようにとの指導がある。

Q:コストはどのくらいかかるのか?

A:この8年間でかかった経費は、約17億円(1ドル100円として)。ただ、この8年の間の技術革新はめざましく、もし今始めるならお金はこんなにはかからないだろう。

Q:データベースの質を保つ為のしくみとコストは?

A:質については非常に気を使っている。正確さを保つために数字は2度入力。スペルもしっかりチェックする。経費はかかるが、そのためほぼ100%正確だ、といえると思う。
また、NPOの住所や理事の変更については、NPOがウェブ上で自ら変更することもできるが、IRSから毎年くる確定申告書でもチェックできる。

Q:主に、経済的指標で評価するということか?

A:そうだ。もちろん活動にも関心はあるが、ガイドスターとしてできることは、掲げた目標とその結果を聞くことと、その成果を団体がどう判断しているかを聞くことだけだ。これらの情報は集積してきている。

Q:IRSからはイメージデータをもらっているようだが、NPOの申告そのものをデジタルデータとすることは検討されていないのか?

A:現在進行中であり、2年以内には実施されるだろう。しかし問題は、義務化はされないことで、手書きの確定申告も残ること。


 セミナーの最後には、日本国際交流センターの勝又英子事務局長が、

「4月に米国訪問の際にガイドスターを知り、学ぶべきものが多いと感じた。日本では評価基準についての議論がされているが、大事なことは判断を押し付けるのではなく、客観的なデータを示してそれぞれに判断してもらうことだと思った。米国のNPOはガイドスターに掲載してもらうことで、きちんとした運営をしよう、説明の責任を果たそうとしている。こういう効果もある」

と締めくくった。

 ガイドスターのホームページアドレスは次のとおり。

 http://www.guidestar.org/

文責:轟木 洋子

2002.07.05

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