自民党NPO特別委員会開催
自由民主党の非営利組織(NPO)に関する特別委員会は、11月25日、委員会を開催し、来年度の税制改正要望に関してNPOからヒアリングを行った。委員会には自民党議員や秘書が出席、NPOからはシーズを含め9団体が参加して認定NPO法人制度の要件緩和などを訴えた。
11月25日午前8時半より自民党本部に於いて、非営利組織(NPO)に関する特別委員会(以下「NPO特委」)が開催された。NPO特委は、自由民主党政務調査会の下につくられた委員会。
委員長は加藤紘一衆議院議員、委員長代理は熊代昭彦衆議院議員が務める。
委員会では、平成17年度の税制改正要望をまとめるにあたって、認定NPO法人制度に関するNPO団体からのヒアリングを行った。来年度税制改正の議論は、12月中旬にかけて、大詰めを迎えており、現場のNPOの要望をヒアリングすることが目的。
自民党からは27名の国会議員や秘書が参加。内閣府の担当者が出席し、ヒアリングには以下の9団体が参加した。
- シーズ=市民活動を支える制度をつくる会
- 特定非営利活動法人 アビリティクラブたすけあい
- 特定非営利活動法人 「世界の子どもにワクチンを」日本委員会
- 特定非営利活動法人 ピースウィンズ・ジャパン
- 特定非営利活動法人 ブリッジ エーシア ジャパン
- 特定非営利活動法人 ヨットエイドジャパン
- 特定非営利活動法人 ジャパン・プラットフォーム
- 特定非営利活動法人 所沢市学童クラブの会
- 特定非営利活動法人 ぱれっと
開会にあたって、委員長の加藤議員から、「NPOは我が党としても、だんだん市民権を得てきたように思う。NPO団体は数が多くなってきていて、それぞれに色々な思いや体験を持って活動されていると思う。議員として政策を考えていて、進歩したり迷ったりすることがある。それを集約するのがある意味、税制の問題と思う。税制は税金が軽減されるということもあるが、国民が考えるNPOはどういうものが良いのかというのを考える基準をつくることにもつながる議論。今日はNPO団体のみなさんのご意見・要望をしっかりと聞きたい。」と開会挨拶があった。
その後、NPOからの意見のヒアリングが行われた。
最初にシーズの松原事務局長が、NPO/NGOに関する税・法人制度改革連絡会がとりまとめた要望書と署名を提出。全国から改正を求める声があがっていることを報告した。
続けて、参加したNPOからは次のような要望が伝えられた。
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在宅福祉サービスを行っている。特定非営利活動からの事業収入は比率がとても大きく、日本版パブリックサポートテストにあてはめるととても要件を満たさない。特定非営利活動からの事業収入は分母から除外して欲しい。
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地域で高齢者介護支援を行うには特定の対象者に対して繰り返し活動を行う必要がある。この活動が共益的な活動として認定要件に合致しないとされるのは納得がいかない。
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寄附金額の7割をその事業年度内に特定非営利活動として支出するという要件がある。申請しようとしていたが、この要件のため申請できなくなった。年度末に多額の寄附をいただき、せっかくのご寄付を無駄に支出することは出来ないから、こ繰り越して使ったからだ。年度によって収支の変動はあるのだから、単年度ではなく、複数年度の合計でみてほしい。
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国税庁に相談に行ったら、申請の際には、法人の役員、社員、寄付者が親族関係にないことを証明する書類を出すように言われた。不可能である。
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プライバシー保護の観点から20万円以上の寄付者名簿の公開はやめて欲しい。
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社員(正会員)からなぜ認定NPO法人にならないのかと聞かれる。社員からの会費に関して、総会での議決権は会費の反対給付とはみなされないようにしてほしい。
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日本版パブリックサポートテストの要件で、国・地方公共団体、国際機関、公益法人、認定NPO法人からの補助金・委託金・委託事業費を分母・分子に全額入れられるようにして欲しい。
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日本版パブリックサポートテストの要件は満たしているが、スタッフはみんなボランティアで、煩雑な申請書類を作っていられない。手間を考えると申請できない。申請書類の簡素化を図って欲しい。
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所得控除ではなく税額控除にして欲しい。1万円の足切りは撤廃して欲しい。
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地方公共団体からの委託を受けているが、これは元々税金であり、当団体の実績が認められてこそ受けることの出来た委託である。十分に公の資金と言えるものであり、日本版パブリックサポートテストの分母・分子に全額入れられるようにして欲しい。
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税制優遇がないなら、同じような活動をする社会福祉法人に寄附をすると言われた。経済的に自立したNPOを活動を展開していきたいのに、認定要件を満たさないために、寄附を受けやすくする体質になれていない。
会合に出席した議員からは、次のような意見が述べられた。
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「認定NPO法人が25しかないのは、要件が厳しすぎるのだろう。NPOというと、役所にとっては、どうにも監視していないと危なくて仕方ない存在と思っているようだ。制度改正の努力が必要であると感じた。」(森岡正宏議員)
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「日本版パブリックサポートテストの分母・分子に、国・地方公共団体、国際機関、公益法人、認定NPO法人からの補助金・委託金・委託事業費を分母・分子に全額算入できるようにすることは、シビルソサエティーを構築して行くには、必要不可欠な要件緩和である。」(塩崎恭久議員)
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「11月20日に静岡でタウンミーティングを行った。議員とNPOの関係が信頼関係が不十分であるという印象を持った。」(上川陽子議員)
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「国・地方公共団体等からの補助金・委託金・委託事業費は、既に議会の場で予算を審議して決定されたものである。議会制民主主義をとる我が国において、議会はパブリックなものであり、元々が税金として公から集められているのだからこそパブリックである。」(熊代昭彦議員)
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「NPOが豊かに活動できる社会づくりを目指していきたい。」(今井宏議員)
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「認定をとれたNPO法人の数がまだ25である実態はつらい数字である。すばらしい活動を展開しているNPOを支援するためにも、要件が緩和されなければと思う。」(小渕優子議員)
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「官と民がパートナーシップ大事である。しっかりと役割分担を持って、活動をしていってもらいたい。」(小杉隆議員)
最後に加藤議員が、「参考になる意見を頂いた。今日の要望を受けて、税制改正に活かしていきたい。頑張ります。」と抱負を述べた。
自民党非営利組織(NPO)に関する特別委員会では、このヒアリングを受けて、平成17年度税制改正要望をまとめ、同日、自民党税制調査会に提出した。
鈴木 歩
2004.11.29