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2004年の報告

2007年08月29日 14:56

NPO支援財団研究会第4回シンポジウム

「助成する側・受ける側-その対話を通じて、市民セクターに望まれる資金助成を考える-」

 9月12日、午前9時半から午後4時半まで、NPO支援財団研究会主催の第4回シンポジウムが、千代田区の東京商工会議所会議室で開催された。

 NPO支援財団税制研究会は、2001年に、助成財団の資金強化策の検討と、いかにして助成財団とNPOの協働によって社会のニーズに対応していくかを研究することを目的に、財団関係者とシーズの松原を含むNPOの有志で立ち上げた研究会。これまで、3回のシンポジウムを開催してきたが、4回目となる今回のシンポジウムは、「市民セクター全国会議2004」の協賛プログラムとして開催された。シーズは後援団体として参加。

 会場には、財団、NPO、企業などから約100名の参加者が集い、助成財団とNPOのパートナーシップ、NPOへの資金助成についての関心の高さをうかがわせた。

 総合司会はNPO支援財団研究会事務局損保ジャパン記念財団の神納由美子氏。

 はじめに、助成財団センター専務理事の堀内生太郎氏から、「今回は市民セクター全国会議の協賛プログラムということから、地方からも、また、企業、行政といったさまざまなセクターから、このシンポジウムに参加していただくことになった。今日は、参加者の皆さんと、国家の財政が厳しい状況にあるなか、社会のニーズに応える活動に取り組むNPOの活動に、助成財団などの民間資金をどのように活かしていくかを考えたい。」と、開会の挨拶があった。


<第1部 基調講演と課題発表>

 午前の第1部では、NPO法人自立支援センターふるさとの会の水田恵理事長による基調講演があり、続いて、財団、企業、自治体の助成事業について各々の課題などが報告された。

基調講演

NPO法人自立支援センターふるさとの会理事長 水田恵氏

 自立支援センターふるさとの会は、東京都台東区の山谷地区でホームレスの自立支援活動を行っている。路上生活から、宿泊所生活、就労、アパート入居、時には入退院といったホームレスの人たちのさまざまな生活場面に応じた継続的なケアが必要なため、支援事業は多岐にわたり、事業のなかから新しいニーズが生まれることも多い。

 新規の支援事業を立ち上げようとしたとき、事業実績が無いことから公的な補助金は得られない。そのような折に助成財団からの資金支援が役立った。事業を立ち上げた後に実績ができれば、公的にも評価されて自治体からの補助金などもつく。また、支援事業自体が地域の産業のひとつとなって、他のNPOや企業などの参入が始まり地域振興にもつながる。「NPO」という語を「New Public Organization」と解釈して、助成金や補助金といった公的な資金を地域振興に転換するための「つなぎ役」となればいいと考えて活動している。

 助成財団に求めるのは、申請時の煩雑な事務手続きを、もう少し簡略化してもらえないかということ。申請書は最低限の記載を求めるにとどめ、活動現場を実際に見て、採否の判断を下してもらえるようになるといい。

課題報告1) ビデオ上映「新しい社会の創造を目指して~助成財団の挑戦~」

 まず、今回のシンポジウムのために作成されたビデオ「新しい社会の創造を目指して~助成財団の挑戦」が上映された。

 ビデオは、助成財団関係者と、助成を受けて活動を発展させたNPO関係者へのインタビューで構成。

 インタビューでは、助成財団側から「財団が世の中にとっていいことをしようと思うとき、これからはNPOとタイアップするのが効率がいいし、また正確だと思う。」、NPO側からは「助成金を通して気持ちと気持ちを通わせ、支援する側とされる側が力をあわせて社会を変えていけるといい。」といった発言があった。

報告:(財)三菱財団常務理事 石崎登氏

 今回は、助成財団への理解を深め、NPOの活動の一助としてもらうために、ビデオを作成し、この会場で上映することとなった。このビデオは、関係各方面に配布していく予定だが、各地で上映会を実施してもらえればと思っている。

 金利が低下している昨今、助成財団の資金繰りは厳しい状況にあるが、より効率的に社会の役に立つ助成事業をおこなうためにも、時代と社会のニーズに応える活動をしているNPOへの支援は重要なものとみなしている。

 ひとくちに「助成財団」といっても、その成り立ち、理念はさまざまなので、財団の特色を理解して申請を行ってほしい。そのためにもNPOと財団の相互理解が必要で、財団はPRにつとめ、NPOは活動を理解してもらうための説明責任を果たしてほしい。

 公益法人としての財団は、社会への奉仕をいう使命を決して忘れてはならない。社会の変化を正しく見極めながら、助成財団として社会に役立つ事業を展開していきたい。

課題報告2) 企業とNPOの協働による助成

報告:NPO法人市民社会創造ファンドプログラム・オフィサー 浜本由里子氏

 市民社会創造ファンドは、2001年に設立され、企業の委託を受けて助成プログラムの企画と運営をおこなっている。現在は、ファイザー、中央ろうきん、フィリップモリスとの協働プログラムに取り組んでいる。

 企業と中間支援組織のNPOが協働しておこなう助成事業は、全国規模のものでは10件ほど。バブル崩壊後に財団の新規設立が減少し、昨今、企業は企業内の社会貢献事業として助成事業を行うところが増えている。まだNPOと連携して助成事業を行う企業は少ないが、活動領域に専門性のあるNPOや、社会の新しい動きを見極める眼力をもつNPOなどを活用した取り組みは今後増えていくだろう。今後の課題は、パートナーとなるNPOの人材育成だと思う。

課題報告3) 自治体またはその関係組織による助成

報告:千葉県環境生活部NPO活動推進課副主幹 内山真義氏

 千葉県は、堂本知事のもとで「NPO立県」を目指し、NPOへの支援に積極的に取り組んでいる。

 自治体の場合、助成事業は地方自治法、条例、規則にもとづいて行われ、助成制度の類型は、一般財源による「補助金」と、「基金・公益信託」による二つに分かれる。それに加えて、自治体の外郭団体が創設する基金も、広い意味で自治体による助成とみなすことができる。

 昨今は公募型の助成が増え、審査の過程で書類審査とあわせて公開プレゼンテーションなどを実施するところも増えてきて、透明性の確保に留意されている。

 また、助成の対象となる団体については、NPO法人格の有無を問わないものが多くなっている。対象となる事業は新規事業が多いが、法人立ち上げを支援するものも多い。ただし、一般的に団体の運営費や備品購入費などは対象外とするものが多い。

 行政の予算の立て方から、助成期間は単年度のものがほとんどだが、一年ごとに再審査をすることで複数年にわたって継続的な助成をおこなうところも出てきている。

 また、新しい動きとして、市民が希望をすれば個人市民税の1%を納税者自身が選んだNPOへの助成金とすることができるというようなNPO支援施策に取り組もうとしている自治体も出てきている。

課題報告4) 各地の共同募金会の助成の動き

報告:中央共同募金会企画広報部副部長 阿部陽一郎氏

 共同募金運動は57年前に戦災後の救援運動として始まった。

 全国の都道府県に共同募金会があり、100%市民からの寄付で運営されている。ちなみに、今回の「市民セクター全国会議2004」を東京都共同募金会が後援しているように、支援対象としての募金配分先を、社会福祉だけでなく地域課題の解決に広げてきている。

 これからの課題としては、いかにして地域課題の「境界領域」に支援を拡大していくかということ。たとえば、河原の清掃というのは、本来ならば対象外だが、その清掃を地域のお年寄りと子どもたちの交流の場としていくプログラムとして配分先となった。また、エコロジーの人力車は、高齢者の移送サービスに使われることで配分先となった。このような地域のニーズは、NPOが精通する事柄なので、各地の共同募金会に対して、ぜひNPO側から積極的に提案してほしい。

 また、長年継続して配分している支援対象の見直しも行っている。単に支援を打ち切るというのではなく、たとえば、傷痍軍人の会に対する支援は、彼らが若い世代に戦争について語り継ぐプログラムとして配分していくというように、時代と社会の変化に即した支援に努めている。


<第2部 事例報告と意見交換>

 午後の第2部では、午前の課題報告を受けて、3つの分科会に分かれて事例報告と意見交換が行われた。

 分科会の構成は以下の通り。

分科会A:助成財団のプログラム事例

 分科会Aのコーディネーターは、(財)三菱財団の石崎登氏。

 事例報告者は、金澤俊弘氏((財)キリン福祉財団常務理事・事務局長)、小川浩氏(大妻女子大学人間関係学部助教授・社会福祉法人横浜やまびこの里仲町台センター次長)、西山美子氏(甲府市池田地区愛育・健康づくり推進会会長)

分科会B:企業とNPOの協働プログラム事例

 分科会Bのコーディネーターは、市民社会創造ファンドの浜本由里子氏。

 事例報告者は、菊池健氏(松下電器産業(株)コーポレートコミュニケーション本部社会文化グループ フィランソロピー・クリエイトチーム チームリーダー(兼任)CSR担当室)と日比野純一氏(NPO法人たかとりコミュニティセンター専務理事)

分科会C:自治体またはその関係組織によるプログラム事例

 分科会Cのコーディネーターは、千葉県環境生活部NPO活動推進課の内山真義氏。

 事例報告者は、朝比奈ゆり氏((財)世田谷区都市整備公社まちづくりセンター)と松田宏氏(せたがや街並保存再生の会)


<第3部 各分科会からの報告>

 第3部では、第2部の各分科会からの次のような報告が行われた。コーディネーターはシーズの松原明。

 分科会Aの報告者は、金澤俊弘氏((財)キリン福祉財団)。報告の概要は以下の通り。

 この分科会では、NPO関係者から「半歩先を考えた助成をしてほしい。単年度では成果が十分に出せないので、経年的に支援してほしいと思う。」という発言があり、財団関係者からは「NPOは明日の夢を語るが、財団はとかく過去のことばかり語りがち。財団も未来を語るようにならなければいけないと思っている。継続的に支援していく場合は、どこまで支援していくかということを見極める力と、時には度胸が必要になる。」といった、率直な意見交換ができた。

 また、キリン福祉財団では、採択団体を訪れてリサーチして、その評価結果を選考委員会に提出し、他方、財団事務局での書類審査の段階で不採択と決まったものについて選考委員に報告することで、双方がいい意味でけん制しあえる仕組みをつくり、適切な助成先決定のために努力していると報告された。

 分科会Bの報告者は、米田佐知子氏(神奈川子ども未来ファンド)と、河合将生氏(関西国際交流団体協議会)の2人。報告の概要は以下の通り。

 この分科会では、事例報告者の菊池氏から、NPOと協働しておこなっている助成事業「パナソニック&JIYD子どもサポーターズ☆マッチング基金」の事例が報告され、「NPOを介在することで、企業と助成を受ける側のコミュニケーションがとりやすくなっている」という報告があった。

 また、助成を受けた日比野氏からは、「申請段階から事業終了時まで、細かく企業の担当者との接点、採択団体同士の交流の場が設けられていた点がよかった」との発言があった。「特に、申請時のヒアリングの段階では、質問を受けることで申請内容に磨きがかかったという効果もあった」との発言があった。

 分科会Cの報告者は、内山真義氏(千葉県環境生活部NPO活動推進課)。報告の概要は以下の通り。

 この分科会には自治体関係者の参加が多く、NPOに助成した後、その後の活動を行政との協働につなげていかなくてはならない、地域のNPOの自立につながるような助成方法を考えていきたい、といった意見がでた。また、NPOと関わるなかで自治体職員の意識がどう変わっていったかなど、活発な意見交換がなされた。

 助成を受けた側の松田氏からは、「行政の支援も単年度でなく経年にわたるものとして欲しい、助成金は単年度の事業で終わるものではなく、その後の活動発展につなげるように考えている」との発言があった。また、NPO関係者から、「世田谷区都市整備公社まちづくりセンターの助成事業は、公募、公開プレゼンテーションを他の自治体に先駆けて実施するなど先駆的なもので、その後他の自治体でも取り入れられるようになったが、プライバシーにかかわる家庭内暴力などに取り組む団体にとっては不向きな場合があるので柔軟に対応してほしい」との発言があった。

 各分科会の発表の後、参加者間で意見交換が行われた。

 会場からは、「助成申請をして採択されなかった場合に非採択の理由を通知してほしい」との要望があった。それに対して、各助成財団の担当者は、選考基準、採択団体の報告書などを送付することで納得してもらえるように努力しているが、応募件数が多い中で個別に理由を通知するのは難しいと答えた。また、非採択団体へのフォローを軽視するわけではないが、限られた時間と労力のなかでは、採択団体がよりよい事業を実施できるためのフォローの方を重視したいとの発言もあった。他方、自治体関係者は、行政は説明責任を強く求められるので、公開審査などで対応していると述べた。

 最後に、コーディネーターの松原が、「社会の多様なニーズに応えるものとしてNPOが生まれた。そして、そのニーズは多様化し、しかも常に変化している。NPOとNPOを支援する助成財団、企業、行政は、対話を重ねながら社会のニーズを見極めて事業を展開していかねばならない。今日のようなイベントに限らず、平素よりNPOと助成する側が理解を深める機会を設けることが、市民セクターの発展に資する資金助成の実現に欠かせないだろう。」と、コメントしてシンポジウムは閉会した。

 なお、当日は、昼の休憩時間に名刺交換会が行われ、会場各所でNPO関係者と助成財団関係者が歓談し交流を深めていた。

報告者:徳永洋子(シーズ)
(2004.09.22)

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