NPO法施行5周年記念イベント(熊本)
「NPO法5年 NPOはかく語りき ~NPOからの発信 5年の課題とこれからの期待~」
平成15年11月25日、19時より、熊本県にある「くまもと県民交流会館パレア」で、表記のイベントが開催された。
NPO法(特定非営利活動促進法)は施行5周年を迎えた。このNPO法のもとで、現在1万3千団体を超えるNPO法人が誕生しているが、NPOをとりまく現状は、5年前とは大きく変化している。
NPO法施行後、行政との関係、企業との競合、問題のあるNPOなど、様々な新しい課題が浮上している。加えて、2年後に予定されている公益法人改革ではNPO法人の制度上の立場がどうなるかも確定していない。
この記念イベントでは、基調講演に松原明氏(シーズ=市民活動を支える制度をつくる会 事務局長)を迎え、地元のNPO関係者とともに、NPO法施行後の5年を振り返り、現在の課題を洗い出すとともに、今後NPOはどのように発展していくべきかを考えた。
【参加者数】 約50名
【主催】 NPO/NGOに関する税・法人制度改革連絡会
特定非営利活動法人NPOくまもと
【共催】 NPO/NGOに関する税・法人制度熊本勉強会(会長正木澄夫)
参加団体)
- 特定非営利活動法人IOBスポーツ事業団
- 特定非営利活動法人ドミソプロジェクト
- 特定非営利活動法人自立応援団
- 特定非営利活動法人熊本県マンション管理組合連合会
- 特定非営利活動法人セーフネット
- NPO ファシリテーターL&C
- 特定非営利活動法人フラワーコーディネーター協会ボランティアセンター
【司会】 NPO法人IOBスポーツ事業団理事長福島貴氏
【イベント内容の概要】
◆ 趣旨説明 NOP法人NPOくまもと代表理事上土井章仁氏
始めに、NPOくまもとの代表理事の上土井氏から、このイベント開催について、次のような趣旨説明があった。
NPOくまもとでは、NPOに関する様々なことを勉強する目的で、「NPOサロン」を毎月1回開催しており、この11月で33回目を迎えた。
県内のNPO法人が増える中で、最近、このサロンでは、はたしてどれだけのNPO法人がNPO法の根本的な趣旨にもとづいて、市民活動の原点に立った活動を行っているのだろうか、本当に地域に根ざして活動している団体がどれほどあるのだろうかという疑問の声があがっている。
そこで、NPO法施行5周年をむかえて、この5年間の熊本のNPO活動の歩みと全国のNPOの状況などをふりかえり、広く参加者と討議する場を設けようということで、この記念イベントを開催することにした。
今日は、NPO活動に関わってきた人たちに、それぞれの思いをたくさん語ってもらおうということから、イベントのタイトルを「NPOはかく語りき」とした。また、5年間に出てきた課題を整理したうえで、今後の期待を発信していこうということで副題を「NPOからの発信」とした。
◆ 基調講演 「5年経た振り返りと今後の展望」 シーズ=市民活動を支える制度をつくる会 事務局長 松原 明氏
基調講演では、シーズ=市民活動を支える制度をつくる会事務局長 松原明氏が、市民運動から生まれた市民活動がNPO法へと結びついていった経緯とNPOの現状について報告された。
NPO法について忘れてならないのは、NPO法が市民側がリードして国会議員と一緒につくった議員立法によってできた法律だということ。そこで、どうしてこの法律が必要になってきたのか、そして何を目指していたのかをふりかえることが重要になってくる。
80年代から中央主導の社会サービス提供には限界がでてきた。例えば、医療ミスなどがおきたときにどうすればいいかという問題に対して、我々は社会サービスのひとつと考えるが、政府の考える社会サービスにはなかった。そこで、市民主導の新しい社会サービスが任意団体やボランティアグループによっておこなわれるようになった。そのなかで、契約や所有に際しての法人格を持たすための制度、寄付に対する税制上の優遇制度など、市民活動をしやすい仕組みが必要となってきて、NPO法が生まれるにいたった。
市民活動の中で目指したものは、「市民がつくる公益性」。社会活動をする市民、公益活動をしようとする市民のセクターを確立していこうということ。それにもとづいてNPO法が生まれたことを忘れてはならない。
今後NPO法が、政府の規制緩和、地方分権、公益法人改革という流れのなかで、どのような影響を受けていくのかということも考えなくてはならない。地方分権、規制緩和の影響で、NPO法人への自治体からの委託は今後増えるだろう。しかし、行政がやっているサービスを単に民間が請け負うのであれば市民活動とはいえない。市民活動とはある目的をもって社会を変えていくことを目指すものだからだ。
「NPO法人とは何か」ということも問われている。社会に広まれば広まるほどNPO法人とは何だという疑問も広まってくる。また、NPO法を悪用している例も出てきている。このままいくと、公益法人改革の整理統合の中で淘汰されてしまうことすら懸念される。
NPO法をつくるというプロジェクトはまだ終わっていない。5年がたち、NPO活動の意義はますますたかまりつつあるが、本当にどのような成果を挙げたか、どういう活動をしたかという中身が問われるのではないか。市民セクターとしての価値を、NPOをよく知らない人たちとの議論、企業との議論、行政との議論の中できちんと主張できないといけない。下手をすると、政府が規制を強めたり、企業との差別化が出来ないという点で課税強化されていくという可能性も生じてくる。
市民セクターの新しい提案、チャレンジ、次に進んでいくステップのなかで、NPOの活動が評価されていけば、未来は明るいと思う。
◆ くまもとの現状 「くまもとのNPOからのこの5年の課題と期待発信」
松原氏の基調講演をうけて、熊本県の3つのNPO関係者から、課題や今後の展望などが報告された。
・NPO法人ドミソプロジェクト理事長千賀泰幸氏の報告
NPOの発展を阻害しているのはNPOへの理解不足。現状では、NPO法人という言葉も認知されていない。非営利活動に対する認知度も低い。一方では、簡単に法人格が取得出来ることから、安易な法人化による行き詰まりや、問題のあるNPOのトラブルも発生している。熊本のNPOにそのような問題がでてきたときには、先ずは地域のNPOによって解決しようではないか。そのためには勉強をして、情報共有していかねばならないということで、「NPO/NGOに関する税・法人制度熊本勉強会」ができた。今日、参加していただいた方には、NPOのことを理解していただきたい。まずはNPO自身がNPO、NPO法を理解していくことが大切だと思う。
・NPO法人マンション管理組合連合会会長正木澄夫氏の報告
熊本県マンション管理組合連合会にとって、本年が認証を得て3年目。熊本県マンション管理組合連合会ってどんな活動をしているか、大体マンション管理組合の連合体が、NPO法人になるって、何なのかといわれる。1988年10月、将来マンションを巡るいろいろな問題がでてくるに相違ないとして、任意団体として活動をはじめ、NPO施行2年目に当たる平成12年4月に認証を得た。マンションの住環境は、建てさせるだけ建てさせ、共同生活・共同運営といった集合住宅のソフト面はマンションのそれぞれが対応すればいいと行政はまったく関知しなかった。その後、「マンション管理適正化推進法」、「マンション立替法」、「区分所有法」の改正がなされ、それに伴う管轄の国土交通省が「マンション標準管理規約」を示して、市民によるマンション管理活動を後追いする形で、ここ3年位の内に急速に行政が関与する状況に変わってきた。
もうひとつは、「認定法人」について。寄付をしやすい環境が今以上に整えばよいと期待している。
公益法人改革については、まずは、NPO法人自身が、一部の問題のある社団、財団を反面教師にして、NPO法人の掲げる精神と進むべき道を見つめながら歩んでいく必要があるだろう。問題のある公益法人と十肥一からげにされるようなNPO法人が淘汰されることを願う。
・NPO法人フラワーコーディネーター協会ボランティアセンター理事長松崎景子氏の報告
フラワーコーディネーター協会ボランティアセンターは、法人認証を受けてから4年半。それ以前は5年ほど任意団体として活動していたが、これまで活動と呼んでいたものが、いきなり事業という言葉になっただけで、意識も変わった。
これまでは、自分達の老後は生甲斐を持って、仲間と楽しく、そのためには自腹(会費)をきってでもやろうよ、ついでに人のためや、町のためにもなろうという程度だったのが、趣旨や目的を明確にした計画性のある活動をするようになった。マネジメントも考えないといけないと自覚してきた。
そこで、助成金の申請などを頑張った時期があるが、活動に必要な機材の助成などは大いに助かったものの、事業自体の助成になると、応募する財団等の要項に合わせて無理をするようなところも出てきて、「ほんとうは、こんなんじゃいかんなぁ」と反省することもあった。
やはり、お金を出すところと、貰うところという関係は、パートナーシップだといっていても、対等な関係とは遠い場合が多いように思う。
その一方で、そうした関係を好んでつくろうとしているNPOがいることにも憂慮している。行政からの委託もしくは補助金ありきのNPO法人がつくられていたりして、NPOの存在意義ってなんだろうと考えさせられる。
今後私たちが開発していかなければならないのは、寄付の文化だと思う。欧米で定着している寄付行為は、社会を支える、もしくは変えていくための力になるということをもっと認識するべきだろう。NPOが生きづく成熟した社会とは、活動や事業を支援したいと考える人たちの寄付によってこそ支えられていくのではないかとも思っている。
◆ 質疑応答・解説
NPOファシリテーターL&C 加藤ちひろ氏によって、質疑応答がおこなわれた。
質疑応答の中で、経済的基盤の脆弱さがNPOのかかえる課題のひとつであると確認された。一方で、経済的自立ばかりを標榜するために生じている混乱もあると指摘された。経済的自立のために努力していくことは大切だが、同時に、NPOとしての独立性の維持、市民セクターとしての意義を失わないための「自律」が重要だという意見が出た。
報告:NPOくまもと
2004.02.09