「認定NPO法人制度」改正決起集会(東京)
2002年11月18日(月)午後6時半から、東京都千代田区永田町の星陵会館ホールにて、「NPO/NGOに関する税・法人制度改革連絡会」主催、トヨタ財団助成による『「認定NPO法人制度」改正決起集会~政府、国会議員に実現の要請行動を~』が開催された。全国から約350人のNPO関係者などが集い、認定NPO法人制度の改正を求める熱い思いを語り、出席した国会議員に対して、その必要性を訴えかけた。
「NPO/NGOに関する税・法人制度改革連絡会」(以下「連絡会」)は、特定非営利活動促進法(通称NPO法)に関する税制改革と法人制度改革について検討し実現する運動体として、シーズを含めた全国のNPO/NGO支援団体28団体が参加して、1999年6月8日に発足。現在は40団体が参加している。
この日は、政府や国会で、「認定NPO法人制度」の改正が検討されていることを受け、その改正を強く後押しする目的で集会が持たれた。
総合司会は、NPO事業サポートセンター専務理事・田中尚輝氏。シーズ事務局長・松原明がコーディネーターをつとめた。
はじめに、国際協力NGOセンター常務理事の伊藤道雄氏が、「今日の集会はNPOにとって、ホップ(NPO法成立)、ステップ(支援税制として認定NPO法人制度が発足)、からジャンプにつなげる記念すべき集会となるだろう。ここに集った国会議員とNPO関係者が手を携えて、認定NPO法人制度を改正して、新しい社会をつくるNPOの飛躍につなげよう。」と開会の挨拶をした。
つづいて、日本NPOセンター常務理事の山岡義典氏が、「現行の認定NPO法人制度は、認定を受けるための要件が厳しすぎて、2001年10月1日に同制度がスタートしてから、全国のNPO法人約8700法人のうち、わずか9法人しか認定されておらず、ほとんどのNPOが申請にも至らない」と現状を説明。
認定要件の問題点として、(1) パブリックサポートテスト(以下「PST」)、(2) 広域性の要件、(3) 共益団体排除の規定、(4) 社員などの親族の制限、(5) 海外送金手続きの煩雑さ、(6) 情報公開基準、(7) 書類の煩雑さなどを挙げ、「これらを総合的に抜本的に改正しなくては解決しない」と訴えた。
さらに、このキャンペーンについて、日本NPOセンター企画スタッフ李凡(リ・ファン)氏が、「現在、連絡会は、認定NPO法人制度改正を確実に実現させるため、来年度の税制改革大綱がまとまる12月中旬に向けて、全国キャンペーンを展開している。全国15ヶ所で国会議員を交えての集会を開催中だ。同時に、全国のNPO法人に対して、『認定NPO法人制度の改善に関する要望書』への賛同署名を呼びかけた結果、3064団体の代表者からの賛同署名が寄せられた」と報告した。
そして、出席した各党国会議員に山岡義典氏から、この賛同署名が手渡された。
こうしたNPOのアピールを受けて、集会に参加した7名の国会議員は次のようにNPO支援のための決意を述べた。(以下、発言順)
■山本保参議院議員(公明党)
公明党は、より一層、NPOの活動がしやすい環境整備を進めるために、支援税制の認定要件の緩和、みなし寄付金制度の実現、活動の地域要件の緩和を図ることを目指している。
民間で公益のために尽くしているNPOに対する優遇税制はもっと拡大されるべきだと思う。
さらに、NPOを経済政策の中で位置付けていきたい。NPOへの寄附は経済効果になり得る。消費拡大を唱えるなら、NPOへの寄附をしようという政策があってもいいはず。
■小池百合子衆議院議員(保守党)
自分もNPO法人を立ち上げているので、事務手続きの煩雑さは理解している。
「民の自立する心を育む」NPO法と税制を育てていきたい。
税収が減っている昨今、減税になる優遇税制の導入は難しい時期だが、NPOは働く場として、やりがいのある場所なので、税制でバックアップすることで雇用対策にもつながるだろう。
与党3党は、認定NPO法人制度に関して、改正にむけて動いている。その中には、(1) PSTの3分の1要件を5分の1にする、(2) 広域性の要件を外す、(3) 海外NGOの支援のために海外送金に関する届出義務の緩和を盛り込んでおり、22日に与党3党で首相に改正の要望を提出する。小泉首相はNPOに対して理解があるので、がんばりたい。
■石毛えい子衆議院議員(民主党)
支援税制の改正に関して、野党4党の共同提案法案が、参議院で14日に趣旨説明をして、19日に審議となっている。その中で、国税に関しては、次の3つの要点を提起している。
(1) 事業による自立を阻んでいるPSTの改善、(2) 広域性の要件の排除、(3) 国税庁長官ではなく、認定機関を第三者機関にして自立性を高める。(1)と(2)により、全体の6割程度は認定されるだろうと試算している。さらに、寄付金税制の対象になる寄付金については、1万円のすそきりをしない、などといった提案も盛り込んでいる。
自民党の税制改正要望事項とも共通する部分が多いので、与野党力を合わせて、NPOが活動しやすい税制改革の実現に向けてがんばりたい。
■広野ただし参議院議員(自由党)
日本の場合、官庁が民間をコントロールしようという意識が強い。これがある限り、NPOの活動がしやすい環境が整わないだろう。個人が協力して、民間の力を発揮することに資する税制でなくてはならない。
議員立法で成立したNPO法の原点に返って、NPOを支援するための税制を実現したい。
■吉川春子参議院議員(日本共産党)
民間団体の活動を保障することは、民主主義と平和の実現に不可欠だ。
19日、参院財政金融委員会で、特定非営利活動の促進のための法人税法の一部改正の審議が行われるが、野党4党の改正案が審議される。
全国で8300のNPO法人があるが、6割が年間収支規模1000万以下、常勤スタッフは3人未満、有給職員平均年収は134万という現状。認定NPO制度が出来ても0.1%の認定率という現状では、改正が急務だ。
また、認定機関を第三者機関にするということも政府の干渉を排除するために提案している。
■植田至紀衆議院議員(社会民主党)
NPO法は、既存の主体的、自立的な市民活動を法律的に保障していくための法律だと理解している。
社民党としては、昨年12月に基本的な考えとして、(1)PSTの要件緩和、(2)広域性の要件の排除、(3)みなし寄付金制度の導入、(4)事務手続きの簡素化、の4点を確認している。
とりわけ(1) に関しては、脆弱なNPOの財政基盤を強化することが目的なのに、認定のハードルが高いという現状は、制度の趣旨に反する。野党4党の共同提案にも、こうした理念は盛り込まれている。
NPOが活発に活動していく中で、地域社会の活性化にもつながるだろう。こうした面からも、NPOについて考えていきたい。
■熊代昭彦衆議院議員(自由民主党)
認定NPO法人制度を、アメリカに劣らぬものとしたいという気持ちで、22日に総理に改正要望事項を提出したい。
具体的には、PSTの修正、特に、(1) 寄附金の算定対象外を1000円(現行3000円)未満とする、(2) 国、地方公共団体、国際機関、公益法人、特殊法人または独立行政法人からの補助金・助成金・委託事業費について分母分子に全額算入する、(3) 広域性の要件の削除などによって、いろいろな形でNPOが成り立つようにしていきたい。税制は、今からが勝負なのでがんばっていきたい。
一方、NPO法の改正だが、近日中に議員提案として国会に提案して、議論の上、法律を通したい。
いいNPOが大きく育つための、無用な行政の干渉を受けない制度つくりを目指したい。
つづいて、下記のNPO関係者が、認定NPO法人制度の要件を実際のNPOが満たすことが非常に厳しいものになっている現状を語り、必要とされる改正のポイントを訴えた。
■早瀬昇氏(社会福祉法人大阪ボランティア協会事務局長)
政治家の構想力によって、制度の抜本的な見直しを期待したい。
特に、現行の共益団体等の排除の規定の緩和を求めたい。たとえば、移送サービスにおいては、国土交通省は、NPOを「白タク」を区別するため、会員制を条件とするよう求めているが、認定NPO法人制度では、会員制の団体は認定を受けにくくなってしまう。
また、一律ではなく、団体の規模、設立年数の応じた認定基準があってもよいのではないか。■長有紀枝氏(NPO法人難民を助ける会事務局長)
今の認定要件、特にPSTの計算式では、国・国際機関・特殊法人からの委託金は、事業収入に含まれてしまい、政府とのパートナーシップ事業などを受ければ、受けるほど認定が受けにくくなる。また、社員からの会費が寄附金扱いにならないため、PSTをパスするために会員をやめてもらわなければならないという矛盾が生じる。
さらに、海外に送金したり、金銭の持ち出しをする場合には、事前の届出が必要となっており、NGOの場合、事後の補正も含めて、事務処理の負担が大きくなってしまう。
活動の中立性のためにも、自己資金の充実が必要なので、それに資する認定NPO法人制度であって欲しい。■坂口郁子氏(NPO法人たすけあい大田はせさんず理事長)
現行のPSTの計算式では、介護保険事業による収入が増えれば増えるほど、認定を受けにくくなる。
また、地域密着型の活動が認定要件の広域性に反するのも、改善して欲しい。
現在、たすけあい事業が課税対象の収益事業に該当することについて、国税庁と係争中だが、認定NPO法人制度に限らず、NPOが自立していけるための税制を求めたい。■田村拓男氏(NPO法人日本音楽集団代表)
公演による事業収入が収入の多くを占める。よって、現行のPSTの計算式では、事業を行えば行うほど、認定が受けにくくなってしまう。
また、現行の認定NPO法人制度では、認定NPO法人についての、収益事業所得に対する「みなし寄付金」制度の導入が見送られたが、公演収益のような、税法上の収益事業に関して、その所得を特定非営利活動の非収益事業に支出した場合、所得の一部を「みなし寄付金」として収益事業の損金に算入できるようにして欲しい。
さらに、収益事業でも、低い利益に関しては、非課税としてもらえるといい。■田部眞樹子氏(NPO法人子ども劇場全国センター常務理事/三重県子どもNPOサポートセンター理事長)
会費制であるが、それは共益目的ではなく、公益活動を支援するための寄付金だと理解してもらいたい。
今の認定要件、特にPSTの計算式では、助成金・委託事業費が増えるほど認定から遠のいてしまう。事業型のNPOを育てることは、経済の活性化にもつながるのだから、それに資する認定NPO法人制度であって欲しい。
こうした訴えを受けて、国会議員から次のような発言があった。
■広野ただし参議院議員(自由党)
NPO支援税制ということでは、抜本的な改正が必要だと思う。後追い的な仕組みつくりではなく、市民活動がより一層やりやすくなるような制度をつくっていきたい。
■小池百合子衆議院議員(保守党)
戦後の税制は、復興のために国がゼロから始めるためのものだった。そのような余裕のない時代がおわり、パラダイムの変換の中で、寄附税制も生まれてきた。NPO支援税制に関しては、実績も積んできたので、今年は認定NPO法人制度の改正のチャンスだ。
■熊代昭彦衆議院議員(自由民主党)
社員からの会費を、例えば1500円なら、そのうちの500円を会費、1000円を寄付金として徴収することで、PSTの分子に算入できないだろうか。
これに対して、会場から、「社員から会費を取らねばならないという規定はない、と国税庁に確認して、会費の全額をゼロとすることで認定NPO法人になった。」という発言があった。
さらに、会場からは以下のような発言があった。
- 「認定NPO法人第一号になったが、認定要件の緩和で、認定NPO法人が増えたとしても、NPOの経済状況が向上するとは限らない。企業、個人の寄附文化の醸成が必要。そのためには、市民が寄附しやすい制度が欲しい。少額の寄附にも控除があるといい。」
- 「九州でも、改正を求める声は高まっている。西日本では認定ゼロの現状。とにかく、支援税制を改正していくために、国会議員に頑張ってもらいたい。」
- 「NGOやNPOをつくる人々を支援するような仕組みをつくって欲しい。民間と公共セクターが競争できるようにしていって欲しい。」
こうした会場からの発言を受け、最後に国会議員から下記の発言があった。
■熊代昭彦衆議院議員(自由民主党)
アメリカとの制度の違いを明らかにして、アメリカに負けないNPOの制度を作っていきたい。日本の活性化の起爆剤にNPOがなるといい。
事務当局の理解を得ながら、政治主導で改正に向けてがんばりたい。
私のホームページもあるので、e-mail で、意見を寄せて欲しい。■山本保参議院議員(公明党)
改正に向けて一歩一歩進めていきたい。「経済特区」にならい、ある期間を特別に定めて制度を施行する「経済特期間」という観点でも税制を考えている。広く意見を求めたいので、積極的に声を寄せて欲しい。
■小池百合子衆議院議員(保守党)
熱気あふれる集会だった。
税金に対しては、その多くが天引きのせいもあって、その使われ方に関しても無意識になりがちだが、NPOに限らず、自分のお金をどう社会に生かしていくかという観点からこの制度を考えていく必要があるだろう。■石毛えい子衆議院議員(民主党)
要望書に署名している団体名を見ると、夢のある名前が多く、多種多彩な思いが感じられる。この思いをしっかりと受け止めて、霞ヶ関も永田町も変わっていかなくてはならないと思った。
「民」といったときに、営利企業より先に、NPOが思い浮かぶようになるといい。
これらの発言を受け、コーディネーターの松原は、「今日、ご参加の国会議員は、NPOを理解し、常日頃から、NPO活動の発展のために尽力していただいている。しかし、現実には、まだまだ多くの国会議員や政府も省庁も、NPOへの理解は十分ではない。今後も、国会議員との意見交換を積極的に行い、多くの理解を得るための努力をしていかねばならない。また、そのような理解を広める中で、制度を改正していく必要がある。」と訴えた。
最後に、田中尚輝氏が、「超党派の国会議員と市民の動きによって生まれたNPO法は、とても貴重な法律。NPOの活動が拡大することで、経済、社会の活性化が見込まれる。NPO支援税制が変わることでそれが実現し、日本がいっそう元気になるに間違いない。」と挨拶し、閉会した。
なお、近藤昭一衆議院議員(民主党)からは、激励の祝電を頂戴した。
文責:徳永 洋子
2002年11月20日