「認定NPO法人制度」改正を求める東京決起集会
2004年11月17日(水)午後6時半から、東京都新宿区の日本青年館国際ホールにて、「NPO/NGOに関する税・法人制度改革連絡会」主催、「認定NPO法人制度改正を求める東京決起集会」が開催された。
「NPO/NGOに関する税・法人制度改革連絡会」(以下「連絡会」)は、特定非営利活動促進法(通称NPO法)に関する税制改革と法人制度改革について検討し実現する運動体として、1999年6月8日に発足。現在、シーズを含めた全国のNPO/NGO支援団体41団体が参加している。
連絡会は、現在、来年度の税制改革大綱がまとまる12月中旬に向けて、政府や国会で「認定NPO法人制度」の改正が検討されていることを受け、その改正を強く後押しする目的でこの集会を開催。
集会には、全国から約180人のNPO関係者が集まり、与野党の5名のNPO担当国会議員が登壇。また2名の国会議員が参加者として来場し、会場は熱気に包まれた。
この集会に登壇者として出席したのは、熊代昭彦衆議院議員(自由民主党)、若井康彦衆議院議員(民主党)、山本保参議院議員(公明党)、吉川春子参議院議員(日本共産党)、福島みずほ参議院議員(社会民主党)。参加者として来場したのは、小宮山泰子衆議院議員(民主党)と山本たかし参議院議員(民主党)。
総合司会は、子ども劇場全国センター事務局長の武藤定明氏が務めた。
はじめに、NPO事業サポートセンター専務理事の宇都木法男氏が、「2001年10月に施行された認定NPO法人制度は、施行後すでに丸3年が経つにもかかわらず、この制度で税制上の支援が受けられる『認定NPO法人』は、わずか25法人。認定要件が厳しすぎ、実態に合っていないことから、市民活動を促進するものとして機能していない。市民社会のリーダーとして市民に支えられて活動を続けるNPOを発展させるためには、支援税制の確立が不可欠。そのために、認定NPO法人制度が使えるものになるよう、改正を強く求めていきたい。」と開会の挨拶をした。
つづいて、大阪ボランティア協会理事兼事務局長の早瀬昇氏が、集会に先立って連絡会が行った全国キャンペーンについて報告。全国のNPO法人代表者に「認定NPO法人制度の改善に関する要望書」への賛同署名を募り、集会当日、2,597通の署名を添えた改正要望書を230名の国会議員に手渡したこと、全国各地で改正を求める集会を開催していることが報告された。
早瀬氏は、現在約1万9千のNPO法人が活動しているにもかかわらず、そのわずか0.13%の25法人しか認定を受けていない現状から、この制度には要件と手続きの双方に問題があると指摘。認定要件の問題点をとして、パブリックサポートテスト、共益団体排除の規定、単年度主義、寄附者名簿の公開などを挙げ、手続き的な問題としては、申請書類の煩雑さ、隔年の更新事務などを挙げ、「これらを総合的に抜本的に改正しなくては解決できない。」と訴えた。
次に、北海道と熊本県から、改正を求める声の高まっている状況が下記のように報告された。
■ NPO推進北海道会議チーフプロデューサー 北村美恵子氏
北海道には721のNPO法人があるが、認定を受けたのは1法人だけ。今回の全国キャンペーンでは、北海道で賛同要請したうちの約半数の団体から署名が集まった。代理出席も含めて8人の国会議員が参加した集会も盛況で、改正を求める声は日増しに高まっている。最近、国税庁に認定申請の相談に行った団体が、端から無理だろうと言われ、「だったら、法律変えます!」と言って帰ってきたという話も聞いた。
■ NPOくまもと代表理事 上土井章仁氏
2000年11月、九州で支援税制創設を求める集会を開催した折、ものすごい盛り上がりがあったことを思い出す。しかし、念願かなって施行されたこの制度は、全く使い物にならないものだった。NPOの実情に合わない認定要件、複雑すぎる仕組み、煩雑な手続きなどを改正してもらいたいという要望は切実なものだ。加えて、地方税においても、寄附金控除やみなし寄附金制度などの優遇措置を実現して、地域社会でNPOの文化が根付くようにしてほしい。
ここで、与野党の5名のNPO担当国会議員が登壇。
ここからは、シーズ事務局長松原明がコーディネーターを務めた。
まず、日本NPOセンター副代表理事の山岡義典氏が、「認定NPO法人制度の改善に関する要望書」を読み上げ、連絡会からの具体的な要望事項を各党国会議員に示した。
そして、出席した国会議員一人一人に、要望書と全国のNPO法人代表者2,597人からなる賛同署名名簿を手渡して、制度改善の必要性を訴えた。
こうしたNPOからのアピールを受けて、集会に参加した5名の国会議員は、次のようにNPO支援の決意を表明した。
■ 熊代昭彦衆議院議員(自由民主党)
受け取った要望書の内容は、自民党の税制改正要望事項とも共通する部分が多いので、党として改正に向けて頑張りたい。この制度によって、日本におおらかな寄附文化が醸成されることを願っている。公益は行政だけが担うものではない。民間公益活動が発展するためにも、NPOへの支援税制をしっかり定着させなくてはならない。今年は、ぜひとも改正を実現して多くのNPOが認定を受けられるようにしたい。
自民党は、今年から組織本部の団体総局の下に、NPO・NGO関係団体委員会を置き、全国でタウンミーティングを開催するなどNPOとの連携を深める努力をしているので、各地のNPOの関係者も、地元議員に積極的に制度改正を訴えていただきたい。
■ 山本保参議院議員(公明党)
2001年にNPO支援税制が施行されてから2年後の2003年には認定要件などが一定緩和された。2004年は改正1年目ということで見直しは見送られたが、活用されていない実態が明らかになっており、今年こそはさらなる改正を実現したい。
10月15日の参議院本会議の首相の所信表明演説に対する代表質問で、公明党の浜四津敏子代表代行は、「認定NPO法人の要件緩和はまだ不十分。」と、この制度の改善の必要性を訴えた。NPOの要望はしっかりと受け止め、党として改正に向けて努力をしていきたい。
公益的な業務に、今以上にNPOが活用されるべきだと考えている。今年9月、公明党厚生労働部会は、厚労省に坂口力厚労相(当時)を訪ね、障害者の就労支援のための法改正を求める要請を行い、社会福祉法人に限られている通所施設の運営主体について、NPOや医療法人などが運営できるよう規制緩和を求めた。その結果、早ければ2006年度から法定通所施設へのNPOの参入が実施されることになった。党として、NPOがいっそう発展するようにバックアップしていきたい。
■ 若井康彦衆議院議員(民主党)
民主党は、すでに税制改正を含めた法案を提出済みだが、その中でも、NPOへの支援税制が拡充するための要望を盛り込んでいる。
自分自身も長年、NPO活動に参加してきたので、NPOの自立、市民活動の活性化には積極的に取り組んでいきたい。
民主党は、NPO関係者との意見交換会を実施して、党のマニフェストに対する評価を行ってもらい、「市民からみたマニフェスト」という報告書にまとめた。加えて、今秋には全国各地で「市民政策<地方>議員懇談会」を開催して、NPO団体の関係者を招いて、NPOの知識、卓見を政策形成・法案に取り入れていくための取り組みを続けている。
■ 吉川春子参議院議員(日本共産党)
NPOが社会でよりいっそう活躍するためには、社会福祉法人並みの税制優遇が必要だと考えている。党としても、NPO支援のための関連法案提出には、これまで同様、これからも積極的に取り組んでいく。
自分自身も、あるNPO法人の設立に関わった折、無意味な所轄庁の指導を受けたり難題を突きつけられた経験がある。法人認証にすら、依然として煩雑な手続きが求められており、ましてや認定を受けることは「ラクダが針の目を通るような」状態だといえる。それらを改善していくことは党の方針とも合致しているので、与野党歩調をあわせて改善を実現させたい。
民主主義を根付かせるためには、NPOの発展が欠かせないと考えるので、そのためにも支援税制である認定制度の改善に全力を尽くしたい。
■ 福島みずほ参議院議員(社会民主党)
1998年にNPO法を議員立法で成立させた折より、社民党は党として、また超党派でNPOの支援に取り組んできた。今日受け取った要望書の内容は、すべてもっともな内容で、早速にも改善するように取り組んでいきたい。
地方分権化の中で、NPOが関わっている分野、例えば教育、子育て支援、婦人保護などの分野で一般財源化がすすむと、自治体によってはこうした分野での市民活動が後退するのではないかと懸念している。そのためにもNPOの支援税制である認定NPO法人制度を改善して定着させていかねばならない。
他党とも協調してNPO支援に取り組んでいきたいので、税制に限らず、NPOの現場の声を聞かせてもらいたいと思っている。
ここで、新潟から駆けつけた「くびき野NPOサポートセンター」の秋山三枝子理事から、「今回の震災にたいして、全国各地から大きな支援を受けて感謝している。これまで認定を受けることは諦めていたが、実はこの震災を機に認定申請に奮起する気持ちになった。災害ボランティア活動支援として大口の寄附の申し出があったが、うちの団体に対する寄附では税の控除が受けられないということで、ほかのルートに移ってしまった。これまで正会員を増やすことに努めてきたが、正会員の会費は寄附金とみなされないため、正会員が増えることがパブリックサポートテストにパスすることの妨げになっている。会費は、サービスの対価でないので、寄附金とみなしてもらいたい。こうした点をぜひとも改善して欲しい。」という訴えがあった。
つづいて、各地のNPO法人関係者が、それぞれの団体の抱える問題をあげて制度の改正を訴えた。
■ ブリッジ エーシア ジャパン理事兼事務局長 新石正弘氏
アジアの社会的に困難な状況にある人々の自立のための支援を行っているが、昨今は、国連関係機関だけでなく、日本の海外支援政策もNPOとの協働スキームにもとづいて展開されることが増えおり、ブリッジ エーシア ジャパンも外務省の補助金による事業に携わることが多い。それが原因で認定が受けられない。具体的には、米国のパブリックサポートテストのように、政府の補助金や助成財団からの助成金はパブリックな資金なので、分母と分子の両方に算入できるようにしてほしい。
また、認定を受けると、20万円以上の寄附者の氏名、住所、寄附額が公開されることになっているが、個人情報の保護の観点から、情報を公開しないでもらいたい。寄附者名簿の公開は寄附にブレーキをかけてしまう。
■ わんぱくクラブ育成会副理事長・事務局長 宮本富江氏
区立の学童保育が受け入れてくれない障害児のための学童保育を行っている。わんぱくクラブ育成会では、運営は障害児の父母が担い、資金のほとんどが指導員の人件費に費やされる。資金源は会員の会費。会員は障害児の父母が中心。賛助会員、「支える会」からの寄附なども大きい。
寄附者の中からは、寄附控除を受けたいとの申し出もあり、認定を受けたいが、障害児の父母が会員となって会費を払い、その子どもがサービスを受けていることから、「共益団体の排除の要件」にひっかかってしまう。また、この要件では「会員等」の範囲に反復継続してサービスを受ける人を含めてしまうが、障害者支援では反復継続しないわけにはいかない。法人の目的から、会員やサービスの受益者が特定の人たちに限定されていても、誰もが会員になれる場合には共益団体とみなさないように制限の緩和をしてもらいたい。
■ カスパル理事長 近藤美津枝氏
認定NPO法人として、東南アジアを主とした児童買春の根絶、困窮家庭の子どもたちの救援活動を行っている。
カスパルは、認定を受けたことで大変な苦労をしている。そもそも、この制度では認定期間は2年間。しかも更新制度がないので、期限が近づくと一から書類を作成して申請しなおさないといけない。
カスパルは、現在2回目の申請の時期をむかえ、書類作成などの準備を始めたが、一から書類を作成する手間は膨大で、しかも、前年度にやり残した事業用の資金を繰り越そうとしたら、国税庁からだめだといわれ、もう認定を受けるのをやめようという気になっている。受け入れた寄附の7割以上を単年度で使い切らねばならないという単年度主義を改めて欲しい。それに、単年度主義だと、年度末に大きな寄附があって使い切れなかったら認定要件を満たせないことになってしまう。
手続きについては、初回申請に手間がかかるのは仕方ないとしても、せめて更新制度を設けて2回目からは手続きを簡素化して欲しい。
また、認定期間も伸長して、5年間くらいは落ち着いて認定NPO法人として活動できるようにしてもらいたい。
認定NPO法人になってみて、申請手続きをめぐっては、国税庁に対してうんざりすることばかりだが、考えてみれば国税庁は法律に則って指導をし、判断を下しているだけのことなので、この法律自体を改正しなくてはならないと思う。
この発言を受けて、コーディネーターの松原が、「認定制度に関する学習会や集会では、申請書類が膨大で小さなNPO法人には負担が大きすぎて無理だ、という声が必ずあがる。申請書類は高さ7センチだったとというような、枚数すら数え切れないようなものだと聞いている。NPO法人の3分の2は年間収入1千万未満で常勤スタッフも1-2名というのが現実。NPO法人の実態に合わせた申請書類の簡素化が求められている。」とコメント。
また、会場からは、「現在、申請手続きを行っているところだが、やってみて、いかに不備の多い制度かがわかった。国税庁とのやり取りもなかなか進展しない。現状では全てのNPO法人が門前払いされているとしか思えない。ぜひとも制度を改善してもらいたい。」との声があがった。
こうした訴えを受けて、国会議員からは次のような発言があった。
■ 熊代昭彦衆議院議員(自由民主党)
申請手続きの簡素化は急務だ。自民党は、全国でNPO・NGO関係者とのタウンミーティングを開催している。また、党のホームページ内にNPO・NGOのコーナーを作る準備をすすめている。そうした機会を利用して、NPOの現場の声を議員に届けていただきたい。
■ 山本保参議院議員(公明党)
手続きの簡素化については、チェックシートで簡単に申請できるようになればいい。認証については役所の裁量の余地が最小になるように制度設計されたが、税に関しては初めからそうはいかなかったので改正していかねばならない。
民間公益活動の活性化にむけて、NPO法人への支援は拡大されるべきだ。認定法人へのみなし寄附金制度の拡充などを含めて、この制度を改善していきたい。
■ 若井康彦衆議院議員(民主党)
今日のような集会に参加するたびに、NPOの世界の多様性、豊かさを実感する。認定NPO法人制度を、この多様性と豊かさを活かすための法律にしていきたい。
■ 福島みずほ参議院議員(社会民主党)
個人的にも、長年NPOの活動に参加してきたので、今日はNPOの怒りの声を我が事として聞いていた。寄附者にとって、寄附控除というのは大切なこと。そのためにも、より多くのNPO法人が認定を受けて寄附を集めやすくするために制度を改善しなくてならない。
最後に、ひろしまNPOセンター理事の山崎克洋氏が、「広島には278のNPO法人があるが、認定はゼロ。これではいけないと実感している。今日は各党の国会議員が超党派でNPO支援に取り組まれていることを大変頼もしく感じさせる集会だった。要望を受け取っていただいたことに感謝しつつ、制度改正をあらめて強くお願いしたい。」と閉会の挨拶を述べ、参加者一同が期待と激励の拍手で議員を見送り、集会は終了時間を30分超過して9時に閉会した。
報告:徳永洋子(シーズ)
2004.11.24