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2005年の報告

2007年08月29日 15:51

シーズセミナー「寄附・会員集めベーシック」

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6月24日(金)午後7時より、シーズでは表題のセミナーを中野サンプラザ研修室にて開催した。

「日本には寄附の文化がない」、とはよく言われることだが、本当にそうなのだろうか。

このセミナーは、シーズが日本オラクル有志の会から助成を受けて、寄附や支援会員集めに成功しているNPOや、寄附(助成)をする側の企業の聞き取り調査をいくつか実施し、日本の寄附の実態、成功しているNPOの事例、米国のNPOの考え方など、いくつかの視点から、寄附や会員集めに必要な基礎を解説したもの。

参加者は約50名。そのうち大部分は、これからNPOを立ち上げようと考える人も含む、NPO関係者。寄附、そして会員を集めることが大切だとは知りながら、現実的にはなかなかできていないことから、このセミナーの内容に期待する人も多かったようで、みな熱心に耳を傾けていた。

講師は、シーズ・事務局長の松原明と、シーズ・プログラムディレクターの轟木洋子。

以下のような内容が、事例などを引きながら説明された。


■ 日本のNPOの寄附集めの現状(轟木・松原)

まず、そもそも日本では、「寄附を集める」ということにネガティブな考え方があり、シーズでも調査をすればするほど、熱心に寄附を集めていない、集めようとしない団体が多いことがわかった。

また、NPOが寄附を集めやすくする為には、寄附者の税額が控除されるという税制面での国の援助が後押しとなるが、2001年10月から施行された「認定NPO法人制度」では、国税庁長官の「認定」を受けるための要件は厳しく、全国に22000団体以上あるNPO法人のうち、認定を受けているNPO法人はたった34団体に留まっている。その「認定NPO法人」になるために一番難しいのが、「総収入に対する寄附の割合が一定を超えなければならない(パブリックサポートテスト)」という要件。認定を受ける前、つまり寄附者への税制面の優遇がないうちから、寄附を多く集めなくては要件をクリアできないという矛盾した点がある。日本で寄附の文化を育てる為にも、税制の改正が必要である。

■ 「日本には、寄附の文化がない」というのは本当か(松原)

政府税制調査会の資料によると、日米の寄附に関するデータの比較で、アメリカでは一世帯あたりの寄附額は1620ドル(約17万円、2001年)であるが、一方で、日本の一世帯あたりの寄附金額は2936円(2002年)と、比較にならないほどの開きがある。しかし、寄附をした人の割合を見ると、米国では89%の個人が寄附をしているのに対し、日本でも87%と、非常に多くの人たちが寄附していることが分かる。このことから、日本は、寄附金額は圧倒的に少ないが、多くの人が寄附はしており、「日本に寄附の文化がない」とは一概には言えないことがわかる。

■ NPOの7つの財源(松原)

NPOの財源としては、次の7つが挙げられる。

  1. 会費
  2. 寄附
  3. 本来目的の事業からの収入
  4. 本来目的外(収益目的の)事業からの収入
  5. 民間の助成金
  6. 行政の補助金
  7. 借入金

このうち、1.~4.が、自己財源であり、このうち1.~3.で運営してく努力が必要であること、5.~7.に関しては、財源として取り入れていく場合、決して本来の活動の目的を見失わない注意が必要であることがいくつかの団体の例を挙げて解説された。

■ 同志的結合体から、パートナーシップ的な経営戦略へ(松原)

多くのNPOが「自分たちは正しいことをやっている。すばらしいことをやっている。だから、皆が共感し・支援してくれるべきだ。」と思っている。これは非常にシンプルな考えで、間違いではないが、それでは寄附は集まらない。また、ある目的を達成するために集まった人たちが団体を作り、自分たちのお金を出し合って目的を達成するというのが一番シンプルなNPOの形だが、これだけでは広がりに限界がある。

自分たちの主義主張を理解した人たちが、同じ心意気になり、寄附をしたり、ボランティアとして関わってくれるというカタチが最も良い形かもしれないが、むしろこれからは、このような同志的な結合体という考え方から、パートナーシップ的な経営戦略という考え方が重要だ。つまり外部の人と、どのようにパートナーシップを結んで、調合した事業を作り、目的の達成につないでいけるかということだ。これが、新しい会員や、寄附者を獲得していくことにつながる。これは、これからのNPOの経営戦略の大きな柱となる。

新しい外部のニーズに合った、そして自分たちの目的を達成できる事業をどのように設計し、寄附者をどう位置付けられるかということが大事である。

■ 日米のNPOの寄附の実態調査結果から(轟木)

日本では寄附に関する調査データが非常に少ない。しかし、シーズが2003年に行った調査によると、日本のNPO法人の寄附金の総収入に対する割合が10パーセント未満の法人が、93.5パーセントという結果が出ており、いかに寄附を集めていないかがわかる。経済企画庁(現:内閣府)が2000年に行った調査結果によると、将来的に収入を寄附金でまかないたいと考える団体は5.9パーセントにとどまっている。またNPO法人の寄附募集の調査では、「特に募集していない」という団体割合が、38.9パーセントと一番大きい。

一方、1995年に、中央共同募金会が、寄附をしなかった人を対象に行ったその理由を尋ねる調査によると、「呼びかけがなかったから」という理由が一番多い。

この結果から、日本では寄附が集まらないというよりは、寄附を集めていない、という実態が分かる。

一方、米国では寄附に関する調査データは蓄積されている。2005年の「Giving USA」(いわゆる寄附年鑑)によると、2004年の米国での寄附は、日本円で26兆円を超えている。

なかには、「アメリカの企業は日本の会社と違ってたくさん寄附をするから」という人もいるが、寄附者のタイプを見ると、75.6パーセントが個人からの寄附である。続いて多いのは財団からの寄附で11.6パーセント。遺贈・相続の寄附が8.0パーセント。企業からの寄附は、わずか4.8パーセントである。圧倒的に個人からの寄附が多い。

翻って、日本での世帯毎の平均寄附額の推移をみると、1995年・2004年など、大きな災害のあった年には寄附額が増えている。このことから、日本でも必要性が明確に分かれば寄附は増えることもわかる。

■ 寄附集めのポイント(轟木)

米国では、寄附を集めることは理解者を広げることとして、とても大事にされている。

シーズが2002年に米国のNPOを調査した結果から、米国のNPOは寄附に対してポジティブな発想を持っていることもわかった。つまり、「世の中には様々な問題があり、誰もがみなそれを解決したいと思っている。しかし、一人では無理だ。だから、NPOが解決の手段(活動)を示して寄附の依頼をすることは、人々に対して解決の過程に参加する機会を提供するものだ」という考え方だ。「寄附をすることは、社会を変えていく過程に参加することで、自分も社会を変える力を持ち得る」という喜びを与えるものだ、という捉え方だ。

■ NPOの経営モデルとまとめ(松原)

寄附者には寄附者の「ニーズ」や「思い」がある、それとNPOの事業をどうマッチングさせて、寄附行為につなげていくのかということが大切である。そのための次のような一定の手順がある。

  1. 必要性を明確にする
  2. 寄附者のニーズは、集める側のニーズと違うことがあるが、それをつなぐための仕掛けをどう作るかを考える(パートナーシップ戦略)
  3. NPOの信頼性を構築する
  4. 依頼先を確保する(ハウスリストを作成・管理)
  5. 依頼する
  6. 寄附に対して感謝・成果の報告をする
  7. 人の輪をつくる
  8. 継続支援の依頼

新規に寄附をしてくれる人を開拓するのは大変なことだけに、一度寄附をしてくれた人を大事にしていくということは、非常に重要である。


この後、次のような質疑応答があった。

Q:アメリカと日本での違いは宗教の違いなのだろうか。

A:
確かに、宗教的背景は一部あると思うが、米国の場合、開拓時代、政府を頼らず自分たちでお金を集めて橋や学校をつくるなどしてきたという歴史もある。しかし、日本でも「助け合い」という地縁組織はもともとあった。日本でも、努力をすれば、寄附は集まるはず。(轟木)
商品経済が成り立つ以前は、どこの国でも「助け合い」として寄附は行われてきた。アメリカでも、宗教的動機というよりは、やはりパートナーシップ的な動機、つまり、ニーズのマッチングにより行われてきたと言える。(松原)

Q:寄附をする側は、スタートして間もない団体よりも、規模の大きいNPOを支援するのではないだろうか。

A:
成功しているどの団体も最初は小さかった。企業の担当者に聞くと、小さいから支援しないということではない。但し、小さくともしっかりと運営されている団体である必要はある。(轟木)
団体の規模に応じて得る金額はStep by Step。最近は小口の助成金・小口の寄附もある。寄附者は育てるもの。寄附者が育つプログラムをどう作るか、そういうプロセスが大事。(松原)

Q:米国では、小口の寄附を集めて助成金として配分している中間支援団体があるが、そういう組織は日本にあるのか。また、そういう中間支援団体への寄附の場合、寄附者は寄附の効果が分かりにくいのでは。

A:
そういう組織は全国各地にあるし増えてきている。老舗では共同募金などもそう。課題は、寄附者に対し、どのように報告、あるいは効果があったかをPRしていくかということ。寄附者は、寄附先を選ぶのに苦労しているという実態があるので、そういう意味で中間支援的な組織の存在は必要となっている。(松原)


セミナー後に参加者から書いてもらったアンケートには、次のような感想があった。

  • 自分は寄附について実は何もわかっていなかったことがわかった。
  • 具体例の提示により、実際に寄附を集めていく際の行動のイメージができた。
  • 寄附行為の社会的意味合いを語り合っていく自信が持てた。
  • 米国で聞いた寄附集めのポイントが参考になり、これまでの自分たちの寄附集めについての問題点が整理された。
  • パートナーシップ戦略の話が、これからの寄附の集め方を考えるヒントとなった。
  • 寄附についての考え方が変わった。今後は積極的に寄附を得るための努力をしたい。

報告:シーズ 丁(テイ) 理惠
撮影:前田美穂
2005.08.30

【設立のご報告】
皆さまのご支援のおかげで、寄付文化の革新を目指す「日本ファンドレイジング協会」を、全国47都道府県の580人の発起人・360人の当日参加者の方と共に、2009年2月18日設立できました!
ご参加・ご支援ありがとうございました!

日本ファンドレイジング協会に関する今後の情報は、「日本ファンドレイジング協会オフィシャルブログ」をご覧ください!

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