公益法人制度改革の動きを知り市民活動の未来を考える緊急集会(大阪)
2月28日、「公益法人制度改革の動きを知り市民活動の未来を考える緊急集会」は79名の参加者を集め、大阪NPOプラザで開催された。
■山田裕子・大阪NPOセンター事務局長の挨拶で集会はスタート。
「認定NPO法人制度を作る際ほどの盛り上がりが公益法人制度改革の中では出てきていない。マスコミで報じられるようになって、ようやくいくつかの危機意識がでてきている。
公益法人も一定の役割を果たしているが、許可でできるため、公益=行政に都合の良い公益になりがちである。我々が考える、行政が考える公益ではない公益を明らかにしながらこの制度改革を論議していく必要がある。法制度と改革が連動して動けていないので、論点整理をしながら、これまでNPO法人制度のできてきた経緯を大事にしながら改革いけるように、今日の会合が進むように考えたい。」
■続いて、早瀬昇・大阪ボランティア協会事務局長より、経緯の説明を行う。
- 2000年12月 政府(森内閣)、「行政改革大綱」を閣議決定
天下り問題や国立大学の独立法人化などの1つとして公益法人制度改革が盛り込まれる - 2001年1月 内閣官房(内閣府)に行政改革推進事務局、設置
「行政委託型公益法人等の改革」が担当業務の一つと位置づけられる
すなわち、行政委託型独占業務を行っている公益法人のみを問題としたものであった - 2001年12月 行政委託型公益法人等改革の実施計画(補助金関係)中間とりまとめ、公表
- 2002年3月 2002年度中に「公益法人制度改革大綱(仮称)」を策定することを閣議決定
この時点で「行政委託型」がとれ、公益法人全般の議論となり、急展開
4月~6月 行政改革推進事務局、有識者18人(のべ27人)にヒアリング - 2002年8月 「公益法人制度の抜本改革に向けて(論点整理)」を政府行政改革推進本部に報告
ここでNPO法人、中間法人が議論に入る
非営利法人への一本化案、非営利・公益法人+中間法人案等の改革パターンを提示 - 8月2日~9月10日 パブリック・コメント募集 161件(団体47件、個人114件)
11月に内閣府行政改革推進事務局「公益法人制度の抜本改革に関する懇談会」、政府税制調査会「非営利法人課税ワーキンググループ」が共に発足。
「公益法人制度の抜本改革に関する懇談会」は11月1日から1月30日の間に7回の審議を行うハードスケジュールで進む一方、「非営利法人課税ワーキンググループ」はその議論の方向性を睨み、スローペースで進んでいた。しかし、2月7日の会合で税の取り扱いが浮上して、急激に議論が進んだ。
この両者の会議は、どちらも傍聴不可。議事録のみ後から出てくる。当初は資料も非公開であったが、堀田力委員の尽力で、現在は資料についてもホームページから入手できる。
■早瀬昇・大阪ボランティア協会事務局長より、続けて公益法人制度改革案の内容説明
180以上ある非営利法人の中の制度の中から3つのみをピックアップして改革が進められようとしているのが問題。
今後の改革案は以下のような3層になっている。
- 公益法人、中間法人、NPO法人を統合した「非営利法人」を準則主義で設立。原則課税。
- 公益要件を満たす法人は、総務省?・都道府県に登録し「登録非営利法人」。原則非課税。
- 国税庁の認定?により寄付金控除が得られる「認定法人」に。
「原則非課税」とは
今ある公益法人でも、課税されていないわけではない。
収益事業33業種にあたれば、課税はされる。これ以外のものは課税されないというもの。
収入より支出が多ければ、もちろん課税はされないし、利益が出れば課税される。
原則非課税とは、寄附金があって利益が出ても、課税される。会費にも課税されてしまう。企業は会費だろうが、寄附金でも課税される。
また、中間法人が入ってきたことで話がさらにややこしくなってきている。公益法人、NPO法人に比べて、中間法人は異質。中間法人を混ぜるので、そちらに引っ張られているのが現状である。
公益法人 | NPO法人 | 中間法人 | |
根拠法 | 民法34条 (非営利法人) |
民法34条(非営利 法人)特別法 |
民法33条(法人法定 主義)特別法 |
設立 | 許可 | 認証 | 準則 |
寄附金 収入 |
非課税 | 非課税 | 課税 |
事業収入 | 収益事業に 課税 (軽減税率) |
収益事業に 普通課税 |
普通課税 |
残余財産 | 分配不可 | 分配不可 | 分配可 |
そもそも法人税とは
法人というのは人間がやっているだけで、ある組織を人とみなして、組織に責任や権利をもたせることである。法人擬制説である。法人税は所得税の前取りをしているという考え方がある。公益法人等は利益非分配のものであるため、そもそも所得税という概念が存在せず、原則非課税となっている。中間法人は、残余財産は分配できるようになっているため、原則課税である。
税制優遇の受けられる登録制度について
百家争鳴状態で、具体的なことはまだわからない。2月7日の税制調査会でも、今の中ではみなが課税論者となっている。NPO法人の場合、現行では税法上の収益事業にあたらない場合は非課税だが、このままだと課税となるだろう。
また、内部留保が総経費の3割以上出たら、その出た分に課税しようという話になっている。もともと内部留保は株式会社における概念のため、非営利法人にそのまま当てはまるものではないが、繰越金、引当金が想定される。
今回の制度改革における問題点は以下の4つ。
- 密室。拙速。不透明。
シーズが本日要望書をもっていったが、閣議決定の内容は論点整理的なものになると言われたらしい。 - 枠組みがそもそもいいのか。公益法人が悪玉、NPO法人が善玉ではないが、公益法人を改革するための制度になぜNPO法人制度を引っ付けるのか。
- 法人税の基本がおかしいのではないか。
- 任意団体の方が税制上有利になる。NPO法人制度ができた意味は非常に大きかったが、それにブレーキがかかる。
■今瀬政司・市民活動情報センター代表より補足説明
2001年12月の中間とりまとめでは「行政委託型公益法人等」とある。等が付くと、公益法人以外が含まれる。途中で「等」が取れたが、公益法人だけの改革は難しく、NPO法人をダシにして改革しようという方向になった。NPO法人は議員立法のため、財務省にしても扱いづらいというところがある。
2月13日付けの財務担当官からの反論では営利法人との比較で課税という議論になっているが、NPOの素朴な理念が議論の中に含まれていない。最初は公益法人の上にNPO法人をのせるという議論だったが、途中から反対になった。一番ベースの市民活動性を忘れて議論している。内部留保や繰越金についてもNPO法人と公益法人の間でどれくらいの差があるのか、比較して議論していない。
■意見交換
Q:公益法人の内部留保の実態ついて情報は得られるのか
A:内部留保の中身を見ないことには単純な比較はできないが、1億円以上の内部留保がある公益法人は3350法人。全体の12.8%。NPO法人の場合、内部留保と言えない面があるが、99年度で800万円。Q:公益法人協会はどのような動きをしているか。
A:公益法人協会については、「公益法人制度の抜本改革に関する懇談会」に理事長が参加している。2月に、新公益法人をつくろうという提案をしている。この新公益法人には現公益法人とNPO法人が含まれる。中間法人は共益組織なので分けて考える案になっている。Q:第三者機関の検討についてはどのような議論がなされているか。
A:第三者機関に関する議論はイギリスのチャリティ委員会のような組織がイメージされている。日本で言えば、公正取引委員会のような位置。税務当局が担うべきという意見もある。あまり議論は進んでいないよう。Q:「非営利法人課税ワーキンググループ」ではNPOの資料が議論の中で出されていないという話があったが、NPO法人の活動のモデルを出していくというのは有効なのか。
A:個別の議論は財務省に通用しない。現実論的に言うとマクロ的に数字で議論していく必要がある。Q:税制という土俵で議論しているが、NPO法人については市民活動性の議論を加えていく必要があると考える。これからゆっくり議論してというのでいいのか。もう少し積極的な活動にしていくべき。
A:内閣府での議論と財務省での議論も別々に進行している。ちゃらにして議論すべき。また、議会との連帯も必要だろう。今のままの公益法人制度がいいとは誰も思っていない。ただ、公益法人制度改革を行いつつ、市民活動を育成していく枠組みにしていくのは非常に難しい。分離独立論が運動としては進めやすいと考えている。
それまで公益法人改革の動きは進んでいたが、税の話がでてきて急展開し、今日の集会に至っている。状況を認識したのは堀田さんより資料を見せてもらった、2月中旬だった。ただし、幸いにして公益法人改革は2006年度に向けての議論であり、税に関して具体的な話を作るのは12月の与党税調である。フロア 市民活動に深く関わったことがなく、全く部外者として感想を述べるが、私としてはすごく遠いところでの話しのように思う。そういう人は多いのではないか。市民活動法人なら非常によくわかるが「NPO」というのは誤解されやすい名前である。もっと一般に対しても発信し、また、政府に対してもNPOの精神を理解するようにしていく動きをおこすことが重要なのではないか。
フロア 議論がぐちゃぐちゃになっている。NPO法自体が民法34条の特別法であるからこのようになっているのではないか。NPO法ができるときに、NPO政策研究所の木原さんがNIRAでしていた、市民活動をいかに活性化させるか、という議論をもう一度やってはどうか。
木原 この議論にNPO法人が入っているということはNPOが社会的な力を持ってきたということでもある。NIRAの時にも非営利法人制度を提案した。現在の180ある非営利法人を抜本的に改革することは、いずれは必要であるという議論であったが、その当時はそれができず、現実的には市民活動促進法案ということで特別な位置づけがいいのではないかと思う。
180に上る非営利法人を全部入れるという話もあるが、民法の34条の体系自体がいびつである。第3者機関としてチャリティ委員会のようなものを別途位置づける必要がある。
- 非営利法人をすべて入れてしまう
- 第3者機関をきっちり位置づける
- 税制を別途検討する
という作戦があるのではないか。シーズではどういった動きなのか。
早瀬 非営利法人の制度がこんなに複雑になっていること自体がおかしいということは松原氏も含めて多くの人が言っている。ただ、一挙にすべてを変えるのではなく、ゴールに向けて少しずつ改善していくのがよいのではないか。
政府案はわかりやすく改革するための一里塚としてまずは3つの法人を1つにするというのが前々からの議論であったが、これが本当に一里塚になるのか、デッドロックになり動かなくなるのかは分からない。どうしても政府の公約として改革を進めるのであれば、NPO法人をのけておいて、公益法人を改革した上で統合するという考え方もある。じっくり話をしするべき。「公益法人制度の抜本改革に関する懇談会」にメンバーである山岡さんは2回しか出席していない。欠席した会合で次の日程が決まる状況で、完全に政府ベースになっている。
松原氏はだから、NPO法人制度は今回の議論には含まず置いておこうということにしている。フロア 有益な公益法人、NPO法人があることも事実。ただ、小泉改革はやったという形を作ることが先決になっている。役所が認可し、天下りをすることが悪いという制度上の問題としてスタートし、準則へ移行する案が出てきた。ところが、そうするとよく似た団体として中間法人、NPO法人があり、これらの税はどうするのかと、制度論から始まった議論が税に行き着いた。
税の優遇をするならば公益性や市民活動性をどこで見るか、という議論になり、やっている仕事だけではわからないので原則課税にするという話になった。これは非常に分かりやすい流れである。
それをどこでひっくり返すか。そのために市民活動性をいかに示していくのか。
現在は役所が認める公益以外、公益は何も残らない。市民活動性とは何か、を訴えるしかない。
パブリック・コメントが出ておらず、国会内でも話題になっていない。動きを始めて行きたい。フロア 議論が拙速すぎる。税については2月7日に始めて議題が挙がり、まだ20日。1ヶ月で議論が集約されそうで、政府に主導権を握られている現状は問題である。
今後の法人制度の全体像においての理想を考える必要がある。
営利法人は基本的には1つ。同じようなパターンでシンプルにできている。
非営利法人も基本的には同じ発想。商法的な発想で組み立てていくことについては将来的には分かるが、3つの法人に限定しているのがよくわからない。NPO法人は民法34条の特別法で、同じ立場である宗教法人や社会福祉法人が入っていない。
一方、NPO法人をすこしはずして議論をしてほしいというのはあるが、税制との関係の中で、公益法人は原則課税とし、NPO法人のみ議論から外すことは国民の理解が得られるのかが疑問である。
そもそもで言えば、収益事業を33業種に絞っていること自体おかしいとも思う。これからNPO法人が大きく社会の中で育っていく中で、NPO法人が大きな権益団体に見られてもいけない。
したがって、むしろ戦場は登録法人の認定システムをどうもって行くのかという点ではないか。
行政が公益性の判断をするようにしてはならない。チャリティ委員会をきちっと作ることが必要。今瀬 外されたNPO法人以外の民法34条特別法でできた法人と同じところ、違うところを議論していくことも有効なのかもしれない。
一方、NPO担当の生活局、財務省、議員、各省庁、政府税調、与党税調、これらがばらばらに動いている。制度論をきっちりと議論したうえで、課税の話をするべきであるが、どうしても財務サイドが強く、課税論議に引っ張られてしまう。市民活動性を軸に制度論から議論を起こすしかないのではないか。
市民活動の理念、税制・制度論といった土俵をいくつか作り、情報共有した上で議論を行なうことが大切なのではないか。早瀬 Eメールなどで全国各地での議論がチエックできるようになった。それらを見ていただくなど情報を入手しながら、これからも議論していきたい。
■木原勝彬・NPO政策研究所理事長より閉会の挨拶
時代の流れがそこまで来ているということかもしれないが、難しい議論でありながら長時間おつかれさまでした。
- 市民活動性を改めて強調するために分離独立というシーズの流れを支持していく
- 戦略的に公益法人協会と手を組んで、原則非課税の新公益法人制度に落ち着かせる
- 多くの非営利法人をすべて入れ込んでいく
- 第3者を確実に提案していく
といった運動展開が必要なのではないかと感じました。
特殊法人改革、構造改革は時代の流れで弱まることはない。
改めて市民活動が明快に存在を示せるよう、ともにがんばりましょう。
文責:大阪ボランティア協会
2003.03.11