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特別連載コーナー

2007年08月23日 17:23

寄附・会員集めのABC(3)「松下電器産業株式会社」 森 信之さん

コーナーのご紹介:

このシリーズでは、上手に寄附や支援的な会費を集めておられる日本のNPOをインタビューし、少しゆっくりめのペースで6回ほどご紹介していきます。シリーズのなかには、寄附をくださる企業側の方のお話も入れる予定です。どうぞ、ご期待ください。

なお、このシリーズをホームページに掲載するにあたっては、「日本オラクル有志の会」よりご支援をいただきました。


第三回「松下電器産業株式会社」 森 信之さん

ゆっくりめの連載ですが、第三回目はNPOなどに寄附をする側である企業の担当者のインタビューです。松下電器産業株式会社のコーポレートコミュニケーション本部社会文化グループの東京リーダーでいらっしゃる森信之さんのお話をお届けします。

企業の社会貢献活動は、今日では当然のことのように思われてきていますが、松下電器の社会貢献活動は1960年代にまで遡ります。分野も、人材育成・教育支援、芸術・文化支援、社会福祉支援、地球環境との共存、市民活動と、他社と比較しても非常に幅広く、活動地域も世界に広がっています。

その松下電器の寄附窓口の担当者から、NPOが企業に寄附のアプローチをする際に気をつけるべきポイントなどを、分かりやすくお話いただきました。おそらく、他社にアプローチする際にも、役に立つ情報だと思います。


<松下電器産業の社会貢献>

私は、松下電器のコーポレートコミュニケーション本部(CC本部)の社会文化グループというところにおります。コーポレートコミュニケーションというのは、企業と社会との、双方向のコミュケーションを意味しています。このCC本部には、他に宣伝グループ、広報グループ、ブランド室、企業スポーツ室などがあり、松下電器の社会貢献については、私たちの社会文化グループが窓口です。

社会文化グループは1969年にできましたが、我が社の社会貢献はそれ以前から始まっており、さまざまな変遷を経てきました。古いところでは、浅草の雷門がそうです。雷門のチョウチンには、松下電器の名前が入っています。「こんなところでまで宣伝して」と思われる方もあるかもしれませんが、実はチョウチンはほんのフロクで、雷門と二神像を1960年に当社が寄贈しております。

雷門の写真

松下幸之助が1960年に寄贈した浅草の雷門と提灯

それから、国際科学技術財団、松下政経塾、パナソニックスカラシップ社などを通じた事業も、松下電器の社会貢献活動の一環です。

以前は、松下電器全体として、すべてトップが決める、ということが多かったのですが、最近は担当部門で決定をくだすことが多くなっています。そのため、どういう社会貢献活動をするのかも、私たちの部署で決めるということになってきております。

<寄附集めの6つのポイント-寄附をする企業の立場から->

では、私たちのような企業にNPOの方々が寄附のアプローチをする時のポイントということで、何点か簡潔にお話をいたします。

第一に、支援依頼のために当社を来られる前には、まず私たちのことを少しは知ってから来ていただきたい、ということです。

私たちのパンフレットを見ると、いろんな社会貢献をやっているようにも見えますが、実は結構絞っています。ホームページも開設していて、どこに重点を置いているのかも説明しています。こうしたことに関係なしに、「松下さん、お金あるんでしょう」ということで、自分たちの思いだけをとうとうと話されるような団体も実際あるのですが、さすがに私たちも全分野をカバーすることはできないのです。

だから、依頼に来られる前には、まず相手先の企業のことを少しは勉強してから、どういう社会貢献を目指しているのかを知ってから来ていただきたいと思います。

第二に、担当部署で支援先を決定するようになってきたとはいっても、「なぜこの団体への支援を決めたか」ということについては、私たちからトップや社内に説明しなければなりません。ですから、理解してもらい、納得してもらうための材料が必要となります。

加えて、私どもの会社の場合、担当は平均で同じ部署には4、5年しかいません。正直いって、目利きが育ちにくい環境にあります。ということは、目利きの専門家であれば、ちょっとNPOから説明を聞いただけで理解でき、自分で文書をつくって社内を説得するということが可能かもしれませんが、それが難しくなってきているということなのです。

ですので、来られる時には、助成金をもらう時のような複雑な申請書のようなものは不要ですが、それでも私たちが理解しやすく、また社内にも説明しやすいものを持ってきていただけると助かります。

第三に、なぜ当社への支援依頼なのか、そのNPOの優位性は何なのか、ということも説明していただきたいと思います。

NPOの方が自ら「私たちの活動はユニークです」とお話になっても、実は「似たような活動をしているところがありますね」ということが結構あります。企業でしたら、他との優位性ということをきちんと説明します。常に競争相手がいて、我が社の商品は、他者と比べて何が優れているかを訴えています。NPOにもそうした努力が必要だと思います。

それに、NPOのA団体に支援を決めたのに、同じように支援依頼をしにきたB団体やC団体には支援しない、という場合、最近はその理由を説明しないと納得していただけないようになってきている。だから、なぜその団体の活動が当社の価値観や方向性にフィットしているのか、B団体やC団体とは異なるA団体の優位性は何なのか、ということもご説明していただきたいと思います。

第四に、松下電器が支援したということについて、機関誌とかチラシとか、どこかで少し触れて欲しいということです。

以前は松下も「陰徳」といいましょうか、別に支援しているからといって、そのことを世の中に知らせて欲しい、という意識はあまりありませんでした。しかし、今は、企業の利益をひそかに誰にも知られないように別の団体に渡す、というのは認められなくなってきています。株主や社会へのアカウンタビリティ(説明責任)とか、情報公開という流れのなかで、支援しているということもきちんと公開しなければなりません。その時に、私たちだけが言うのではなくて、支援を受けたNPOなどの団体にも、松下の支援であるということをちょっと出していただきたいのです。

松下の名前を前面に出す必要はありません。でも、なんらかの形で出していただきますと、社内でも支援の効果を説明しやすくなるものです。それによって、継続支援も可能になる場合もあるかもしれません。

第五に、NPOとしての基盤をきちんとおつくりいただき、足腰を強くしていただきたいということです。

たとえば、年間予算が100万円とか150万円とかの団体の場合、もし私たちが50万円や100万円の寄付をしたらどうなるのだろう、と考えます。その年はいいかもしれませんが、次の年はどうなるのだろう、と不安になるのです。やはり、会員をもっと募って組織基盤を作っておくとか、小口の継続寄附を毎年もらえるように努力することも必要で、そのうえで、ここは大丈夫だから私たちも寄附しよう、ということになるのだと思います。

第六に、安売りはしない。そして、きちんと約束は守る、ということです。

私たちもNPOとパートナーシップを組んで一緒に事業に取り組む、ということがあります。こういうときには、相手側のNPOがどのくらいのマネジメント能力を持っているかということは重要です。団体としての管理能力、企画提案力、企画遂行力ということです。なかには、「その部分は、私たちはボランティアだからお金は結構です」とおっしゃる団体もあります。「いくらです」とはっきり言ってくれないんです。けれど、私は正当な価格提示があってもよいと思っているんですね。

私たちは企業ですから、仕事に見合った分はお支払いすることは当然と思っています。そのかわり、約束したことは、雨が降ろうが槍が降ろうが、きちんと守っていただきたい。「ボランティアさんでやっているので」ということで、ちょっとした些細な理由で来るべき人が来ないままになってしまうとか、そういうことでは困るんです。やはり、松下という企業全体でパートナーとしてコミットしていますから、約束したら実行していただかないと困るということです。

ふれあいフェスタの写真

NPOや市民団体約30団体が参加して 聞こえない人たちと芸術・文化を楽しむ「ふれあいフェスタ」を協働開催。(会期中3日間は ボランティアや各市民団体が約束どおり全員来てくれるか不安に? 結果は各団体の自主運営とボランティア全員の協力で大成功。また来年もやろう!)

<トップ自ら本気で寄附集めを>

なんだか、えらそうなことばかり言っていますが、最後にNPOの方々に申し上げたいことは、「皆さん、本気になって寄附集めをしていますか」、「トップ自らが寄附集めの努力をしていますか」ということです。

実は、私はアメリカ生活も長かったのですが、アメリカでは、大きい団体の会長や理事長であっても、トップ自らが、自分の時間を4割とか5割とかも使ったりして寄附集めをしています。寄附集めといっても、ドアをたたいて「寄附をください」というような下手なやり方ではないんです。もっとうまく人脈をたどってコミュニケーションしていくような方法です。それから、普段からさまざまな情報を提供していて、寄附者が自然に「ここなら出そうかな」と思うようにさせたり・・・。

別にアメリカが一番いいとは思いません。日本には、日本流の寄附の集め方があると思います。けれど、集める皆さんは真剣なのか、トップが本当に集める気があるのか、これがなかったら、企業だろうと個人だろうと、寄附は出しませんよ、ということだと思います。


松下電器の社会貢献活動は、次のホームページから。
http://panasonic.co.jp/ccd/

森 信之さんプロフィール

1969年、松下電器に入社し3年間国内営業を担当。1972年には、国際ビジネス研修のために1年間富士の裾野にある貿易研修センターに社外留学。その後は海外部門に転籍し、年間100日以上の海外出張の生活を約20年間続ける。1993年に、カナダ松下電器の副社長に就任。1998年には、米国松下放送機器社の上席副社長に就任。2000年に帰国し、東京社会文化チームの担当部長に就任し現在に至る。

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