認定NPO法人制度の見直しに関する全国キャンペーン!
2002年11月1日午後7時より、えひめNPOセンター主催で、表記の集会が開催された。
会場となった、コムズ5階会議室には、愛媛県選出の塩崎恭久衆議院議員(自民党)がかけつけ、NPO関係者と意見を交わした。
この集会は、「NPO・NGOに関する税・法人制度連絡会」(以下、連絡会)が、認定NPO法人制度の見直しを図るために展開している全国キャンペーンの一環。現在、政府や国会で、「認定NPO法人制度」の改正が検討されていることを受け、その改正を強く後押しする目的で、愛媛でも開催された。
司会進行は、えひめNPOセンター代表理事・菊池修がつとめた。
集会には愛媛県選出の関谷勝嗣参議院議員(自由民主党)の秘書が代理出席し、また、小野晋也衆議院議員(自由民主党)からは、激励の祝電が届いた。
はじめに、シーズ=市民活動を支える制度をつくる会事務局長・松原明氏から、下記の状況報告があった。
1998年、NPO法(特定非営利活動促進法)がスタートし、2002年10月30日現在、8315団体が認証を受けている。これらNPO法人の約6割が年間収入1000万円以下の団体であり、財政基盤の脆弱さがうかがえる。 これら団体の財政面をバックアップするために、2001年10月1日より「認定NPO法人制度」がスタートした。一定の要件を満たしていると国税庁長官が認定したNPO法人「認定NPO法人」に寄付をした寄付者(個人・団体)に対して、一定金額まで寄付金が課税所得から控除されるという制度である。この制度により、個人や団体が認定NPO法人に寄付をしやすくなり、認定NPO法人は寄付を集めやすくなる。
これにより認定NPO法人は収入増加を見込めるのだ。しかし、現行の認定NPO法人制度には改善すべき点が多く、2002年11月1日の時点で認定を受けている団体はわずか9法人、全体の約0.1%にしか満たない。
具体的には、日本版パブリックサポートテスト、複雑な申請書類、地域性の要件、2年ごとの更新、共益性の排除等、これらが主な問題点として挙げられる。
なかでも最大の問題は、日本版パブリックサポートテストである。「総収入金額に占める受入寄附金総額の割合が3分の1以上でなければならない」というのが要件で、シーズの調査によると、96%超のNPO法人がパブリックサポートテストをパスできない。
分母の総収入金額は、事業収入・寄附金・会費・助成金・補助金・利子収入等から成っている。また、分子の受入寄附金総額は、寄附金・対価性のない会費・助成金からなっている。対価性のない会費とは、賛助会員等による支援的な会費のことであり、対価性があると認められる正会員の会費は含まれない。
このように、分子として扱われる項目は少ない。また、事業を広く展開している団体、正会員を多く集めている団体は分母が大きくなってしまう。つまり、受入寄附金総額の割合が総収入金額の3分の1以上になるのは極めて困難なことなのである。
補助金が分子に加えられていないことも問題だ。NPOは自主自立し、補助金に頼るべきではないと行政は考えているようであるが、現在、行政とNPOとのパートナーシップが、国際協力や福祉などの分野で進められており、その形式は委託や補助といったものだ。その議論の中で、補助金のあるべき姿が問われ、新たな補助金の概念が確立されようとしている。このような動きを評価し、補助金も分子に加えるべきではなかろうか。
これら日本のパブリックサポートテストが多くの問題を抱えているのに対して、アメリカのそれはNPO法人を支援する制度として評価できるものである。認定要件が日本より緩く、門戸が広くなっている。日本の認定NPO法人制度も要件の緩和を図り、団体の社会的な活動を促進するものになっていくべきである。
この状況説明を受けて、塩崎議員が、次のようにNPO支援のための決意を述べた。
ようやく政府もNPO税制優遇制度の認定要件が極端に厳しいものであると認識し、緩和を検討し始めた。しかし、緩和措置を施すにしても、この制度の有効性を目で見て取れるようにするための数合わせ程度のものであればよいという考えでしかない。
問題は何のためにNPOをサポートし、どのようなバックアップするべきかという「哲学」の問題である。アフガニスタン支援などで、NPO/NGOと政府や国連の協力関係は重要となってきている。補助金が分母分子に入らないというのは、このような政府のサポートをNPO/NGOが受けないようにしているようなものだ。まず「哲学」を政府役人に理解させなければならない。その上で、制度の抜本的な改革を実現していきたい。
つづいて、塩崎・松原両氏による対談がおこなわれ、次の点が議論された。
- 認定要件が緩和されれば、悪い団体が入ってくる可能性もある。情報公開の強化や、虚偽報告等の悪事を働いた団体に対しての罰則規定も必要となってくる。
- NPO側もアカウンタビリティーを、よりいっそう自覚する必要がある。
- 一般的にまだまだNPOについて理解されていないのが事実であるが、政治家もまたNPOについて理解できていないのが実情である。制度を抜本的に改革するためには、政治家を動かす必要がある。まず政治家にNPOを理解させねばならない。そのために、連絡会は「NPO支援税制の改善に関する要望書」を提出する。
最後に、参加者から下記の発言があった。
- パブリックサポートテストの3分の1要件を5分の1に改める等、数字の議論ばかりしていたのでは、NPO本来のミッションが歪められてしまうのではないか。メディアに取り上げてもらうことで、一般国民にNPOに対する理解を深めてもらうことの方が大事ではないか。マスコミによる周知が制度の改革を進めていく上で不可欠である。
- NPOの基本哲学が浸透し、官・民両方からの支えをもとに、多くのNPOが幅広く活発に活動できるような制度を確立して欲しい 。
報告:えひめNPOセンター
2002年11月21日