NPOセミナー「日米の事例に学ぶ 寄附集めのポイント」
5月21日(水)午後1時半から5時まで、シーズでは表題のセミナーを東京都新宿区の研究社英語センターにて開催した。
このセミナーは、シーズが国際交流基金日米センターから助成を受けて進めている「NPOのアカウンタビリティモデルの事例を通じた日米比較プロジェクト」の一環。
定員100名を大きく上回る150名の参加があり、席数を増やして対応することとなった。
セミナーは二部構成となっており、それぞれ以下のような概要であった。
第一部「日米の寄附の仕組み、社会背景の違い」
講師は、シーズ事務局長の松原明と、シーズ職員の轟木洋子。
まず、日米の寄附に関するデータの比較として、米国の2001年の寄附総額は2120億ドルであったが、日本では匹敵する調査さえ行われていないことが報告された。また、あえて国税庁の申告所得税の実態から見た寄附総額と比較すると、日本は米国の2%にしかならないことや、一世帯あたりの寄附金額は米国が年間約17万円であるのに対し、日本は約3200円であることも解説された。
しかしながら、阪神淡路大震災が起こった1995年の数字を見ると、日本の一世帯あたりの寄附額は前年の約2倍に増えている。一方で、9.11が起こった2001年の米国の寄附額をみると、ほとんど伸びていなことも明らかとなっており、日本でも必要性がわかれば寄附をする層は存在していることが強調された。
その後、2002年に行われた訪米調査の報告と、ここ10年間に米国で起きている寄附のトレンドが報告され、米国で学んだ寄附集めのポイントについて解説が行われた。例えば、以下のような流れである。
- 必要性の明示
- 解決策の提示
- リターン(明確な効果や非金銭的な見返り)
- 依頼
- 繰り返し
第二部「福祉分野と国際協力分野の寄附の成功事例から学ぶ」
続いて、第二部では次の2名がゲスト講師として事例報告を行った。
- 福田雅章さん(認定NPO法人 青少年の自立を支える会 事務局長)
- 須見 彰さん(認定NPO法人 プロジェクトHOPEジャパン代表)
最初の報告者である福田氏が事務局長を務める「青少年の自立を支える会」は、栃木県宇都宮市で養護施設を出た後の子どもたちに居場所を提供する「星の家」の運営をしている。
福田氏は、パンフレットを作って配布しただけでは会員(支援する寄附者)は増えないが、地元新聞への連載など、マスメディアを通じて活動を知ってもらった効果が大きかったと語った。また、地域に根ざした活動を目指しており、星の家の活動が、日頃から近隣の人たちの目に見えていること、それらを通じて星の家の運営の苦労がよく理解され、人から人へと支援者が広がっていることを報告した。
一方、2番目の報告者である須見氏が代表を務める「プロジェクトHOPEジャパン」は、アジアを中心とした途上国での医療支援を行っているNPO。寄附に関しては、特に企業からの寄附が多いのが特徴である。須見氏は、企業から寄附を得るためには、団体の社会的信用や、現地活動を寄附者に直接会って伝えること、資金の使い方が明確であること、また、その企業のトップの考え方などが決め手になると語った。また、寄附者と、途上国でプロジェクトの恩恵を受ける人の双方が「ハッピー」な関係になれるよう、NPOが寄附者にきちんとした報告をしていくことが重要だと強調した。
ゲスト二人の報告の後、松原がファシリテーターとなり、さらに2つの団体の支援者拡大の工夫を聞いた。福田氏からは、バザーやチャリティコンサートなどのイベントが、支援者拡大の機会となっていること、須見氏からは、企業の寄附を得る際には経費率の低さもアピールのひとつになっていることなどを語った。
セミナー参加者からは、「寄附集めのノウハウがとてもよくわかった」「2つの事例がとても具体的で参考になった」「汗をかかないとダメだし、逆に汗をかけば何とかなる可能性があると、希望がみえてきた」など、役に立つ内容であったというコメントがアンケートで多く寄せられた。
【文責:安部嘉江】
2003.06.10