NPO議員連盟総会
2001年11月28日午後5時30分より、衆議院議員会館第1会議室にて、第5回NPO議員連盟総会が開かれた。
NPO議員連盟は1999年8月に発足した超党派の国会議員の会(共産党を除く)で、会長は加藤紘一衆議院議員、事務局長は熊代昭彦衆議院議員である。
今回の、総会の目的は、NPO議員連盟としての「NPO法改正・要綱(案)」および「平成14年度NPO関連税制改正要望事項」についての検討であり、とりわけ、この2つについてNPOからの意見も聞く、というものであった。
参加者は、各党からの約50名の国会議員(代理出席含む)に加え、内閣府、経済産業省、警察庁等のNPO担当者、また、福祉、国際協力、まちづくり、環境などのNPO団体関係者で、約100名収容の会場はほぼ満席の状況であった。
まず、会長の加藤紘一議員より、「昨年秋は、仙台や滋賀、熊本など、全国各地に出かけてNPO議員連盟の地域フォーラムを開催し、NPO支援税制を作るために働いてきた。その結果、支援税制はできたのだが、認定要件が厳しすぎてまだ2件しか申請がないという。役所的には、10月に施行したばかりで、すぐ改正というのは難しいのかも知れない。そこは政治が動かなければならない。各地で聞いた皆さんの意見は、今回の支援税制の改正にも生かさなければならない。超党派で頑張って、NPO法改正案、支援税制改正ともにすんなりと実現していきたい。みなさんの意見も十分聞いて進めていきたい」と挨拶があった。 |
加藤紘一衆議院議員 |
熊代昭彦衆議院議員 |
次にNPO議員連盟事務局長である熊代昭彦議員より、NPO議員連盟の「NPO法の改正案・要綱(案)」と「平成14年度NPO関連税制改正要望事項」について説明があった。 「NPO法の改正案・要綱(案)」と「平成14年度NPO関連税制改正要望事項」のポイントは次のとおりである。 |
<NPO法の改正案・要綱(案)>
1. 現行の12の活動分野に次の4つを追加
(1) 情報の伝達・普及を図る活動
(2) 科学技術及び学術の推進を図る活動
(3) ベンチャー教育等、起業活動の環境整備を図る活動
(4) 消費者の保護を図る活動
2. 設立認証の申請書類を簡素化する
3つの書類の省略、および4つの書類を2つに統合
3. 「その他の事業」を明確にする
特定非営利活動に係る事業以外の事業として「その他事業」を規定
4. 定款への記載事項の追加
「その他事業」に関する事項と、事業年度を追加
5. 暴力団等の排除の規定を実効性のあるものに
6. 事業追加の際の申請書類を追加(事業計画書と収支予算書)
7. 虚偽報告、検査忌避等に対して20万円以下の過料という罰則規定を新設
8. 課税の特例を明記する(認定NPO法人について)
<税制改正要望事項>
第一
- 「広域性」要件の削除
- 国際機関・公益法人からの助成金不算入
- 日本版パブリック・サポート・テストの修正・緩和
- 共益団体等の排除規定の緩和
- 役員・社員の親族要件等の緩和
- 宗教・政治活動の制限の緩和
- 海外送金の届出の緩和
- 情報公開の内容の緩和
- 単年度主義の撤廃
- 申請書類の簡素化
- 認定の有効期間の延長と認定審査期間の明確化
- 認定更新の仕組みの導入
第二
(1) 国税に関する認定NPO法人への税制措置
(2) 地方税に関する認定NPO法人への税制措置
(3) その他の公益法人の活動を支援するための税制改善
説明の最後に、熊代事務局長から「NPO支援税制はせっかく法律で明確にしたのに、要件が厳しすぎて使えない。NPO議員連盟の案は、米国並のおおらかな哲学で作ったもの。ポイントは米国並の基準をということだ」とのコメントが加えられた。
各党の国会議員からも、次のような抱負が語られた。(要旨)
(以下、発言順)
江田五月参議院議員(民主党) 加藤会長、熊代事務局長らのご努力で、NPO支援税制もとりあえずスタートことができた。しかし、認定申請は今のところ2件のみで、問題がある。皆で力を合わせて改正していきたい。 |
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赤羽一嘉衆議院議員(公明党) NPO支援税制は、ともかく風穴を空けようとして、小さな穴だけ空けてしまったようなもの。NPOは党の重点政策でもある。公明党は与党として、12月7日までは党内で内容を詰め、8日からの与党税調では、しっかりと連携をはかって改正していきたい。 |
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植田至紀衆議院議員(社民党) 社民党の「市民活動促進プロジェクトチーム」のメンバーである。認定申請可能なNPO法人は約1800くらいと聞いているが、申請は2件しかなく、NPO支援税制の使い勝手が悪いのは明らかである。社民党のプロジェクトチームでも、しっかりと検討していきたい。 |
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鶴保庸介参議院議員(保守党) NPOについては、小池議員とともにやってきた。このNPO議員連盟が発足した頃、地元の和歌山県にはNPO法人は1つしかなく拍子抜けもしたが、今は20くらい設立されている。NPOの発展性は分かっていた。火を消さないよう、自民党と協力しながら頑張りたい。 |
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小池百合子衆議院議員(保守党) 各党とも、NPO支援税制についての、今の問題は共有している。あとは、どういうタイミングで、どうやるか、そして変えるという意思を強く持つことが重要だ。超党派の議員連盟なので、ポイントを決めてアタックしたい。私もNPOを立ち上げたので、事務の煩雑さの問題も承知している。NPOは日本の将来に非常に重要な存在である。 |
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石毛えい子衆議院議員(民主党) :私もNPO出身の議員だが、NPOが日本社会をリニューアルすると考えている。民主党も、法案を作ってきたりしたが、議員連盟でも取り組むということで喜んでいる。これから、自民党税調からは力をいただくことになるが、共に進めていきたい。 |
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金田誠一衆議院議員(民主党) :NPO法成立の時からずっと関わっており、今日はNPOの方々に久しぶりで会えてなつかしい思いだ。しかし、日本社会は、このままでいくと失業率6~7%になるのではないかと思われる。雇用の面でも、NPOは大変な効果がある。そのNPOを支えていく税制の問題である。超党派で力を合わせて頑張りたい。 |
また、出席したNPO側からは、NPO議員連盟の働きに感謝し、期待を述べるとともに、活動上でかかえる制度の切実な問題を訴えた。
まず、松原は、NPO法の改正に関しては、以下の3点を訴えた。
松原 明
1.NPO法人になってから、とても負担となる事務は会計である。今、多くのNPO法人が会計事務で苦しんでいる。NPO法の第27条の第1項には、「収入及び支出は予算に基づいて行うこと」となっており、これが所轄庁や公認会計士の誤解を招いている。つまり、この条文でNPO法人の会計は公益法人会計の方法ですると勘違いしてしまう。そして、それが、NPOの活動の柔軟性を阻害している。英米のNPO制度でも、NPOに対して予算主義をとらせているようなことはしていない。撤廃してほしい。
2.議連の案に「その他事業の明確化」がある。それはいいことだが、その一文に「その他事業を行う場合において、収益を生じたときは、これを特定非営利活動に係る事業のために使用するものとする」という一行は削除してほしい。福祉系の団体などでは共済活動をしている団体もある。そのような団体の共済部分の収益は、その事業で必要となる場合もある。
3.NPO法の第24条で、「役員の任期」に関して、「役員の任期は、2年以内において定款で定める期間とする」となっている。この場合、事業年度と役員の任期の期間が同じとすると、その事業年度終了後の社員総会を開くときには、場合によっては、役員の任期が切れてしまう場合がある。これは登記上のトラブルを招く可能性がある。商法などでは、「役員の任期は定款をもって任期中の最終の決算期に関する定時総会の集結に至るまではその任期を伸張することをさまたげず」としている。このような規定を、NPO法でも取り入れて欲しい。
また、松原は、支援税制の認定要件の緩和については、「議連の案は、連絡会の案をたくさん受け入れてくれたもので、感謝している。ぜひ、この方向で議論を進めて欲しいが、心配は、この緩和する要件のどれかがOKになり、どれかがダメとなることだ。認定要件は、複雑に絡み合っている。今回の議連の案を、ぜひすべてセットで実現していただきたい。」と要望した。
この後、日本NPOセンターの治田友香氏、NPO事業サポートセンターの田中尚輝氏、ピース・ウィンズ・ジャパンの石井宏明氏、東京ランポの林和孝氏、ヘリテイジ・トラストの早坂毅氏、ブリッジエーシアジャパンの根本悦子氏などが発言した。
治田友香氏
「NPO議員連盟の改正案はよく出来ている。しかし、実現の際には、改正案のどれかが通ってどれかが落ちるというのではなく、全部をセットで通して欲しい。実は、私の団体は、米国版のパブリックサポートテストなら合格すると米国の財団からは認定された。しかし、日本版のテストだと不合格になる。このテストは厳しすぎる。また、寄附集めの手間をかけられないNPOも多い。事業税の軽減という意味で、みなし寄附金制度もぜひ実現させて欲しい。また、議連の法改正案の分野の追加は歓迎だが、ベンチャーや起業だけでなく、地域産業の育成も含まれるようにして欲しい」(日本NPOセンター、治田友香氏)
田中尚輝氏
「NPO議員連盟案では、日本版パブリックサポートテストの分母から、対価を得て行った特定非営利活動による事業収入を控除できるようになっていて、とてもありがたい。福祉系のNPOは、対価を得て介護事業を行っているところが多いので、これが通ると認定を受けられる福祉NPOも出てくるだろう。また、地元密着型NPOも福祉系に多いので、広域性の要件の削除も大事な部分。なお、地域助け合い活動は、最低賃金以下で行うボランタリー事業で、私たちは収益事業とは考えておらず、課税されては困るのでその点は注意してほしい。」(NPO事業サポートセンター、田中尚輝氏)
石井宏明氏
「概ね、私たちが期待していた内容が、NPO議員連盟案に入っていてありがたい。私たちのような国際協力団体は、予算主義に基づいた現在の制度では緊急時に対応できないということがある。NPO支援税制の認定を受けると、たとえ1円でも海外送金は事前に届け出なければならない。緊急時は事後でもいいとされているが、その緊急時というのもあいまいだ。議連案は、これを200万以上の送金に限るというものだが、1000万円くらいにならないものか。また、議連案では、パブリックサポートテストにおいて、分母から国際機関や公益法人からの助成金を引けるようになっているが、ここに、海外政府も入れて欲しい。当団体は海外政府から助成を受けている。また、20万円以上の寄附者は、情報公開の対象となるが、寄附者を新たに開拓していくためにもこれをせめて50万円にして欲しい」(ピースウィンズ・ジャパン、石井宏明氏)
根本悦子氏
「私たちの団体の財源は、国際機関やJICAなどからの助成金がほとんど。そうすると、現行の日本版パブリックサポートテストをクリアするのが難しい。NPO議員連盟の案では、国際機関や公益法人からの助成金を、補助金と同等の扱いにしてテストに不算入とすることになっていてありがたい。また、認定を受けるために、社員に対して、社員をやめて賛助会員になってもらうなどの大変手間のかかる組織替えを考えていたが、議連の改正案を見て、希望が出てきた。この案が通ることを願って、もう少し待っていることにする」(ブリッジ エーシア ジャパン、根本悦子氏)
林 和孝氏
「NPO議員連盟の案については、もう何も言うことはないくらいである。ただし、今後のことを考える時、そもそもNPOは利益を目的としていないのに、収益事業に対して税を払うということはおかしい、ということもある。このことを、次には考えて欲しい」(東京ランポ、林 和孝氏)
早坂 毅氏
「現在のNPO法には、会計は『予算にもとづいて』行うこととなっており、これがNPOに大変な事務負担を与える結果になっている。この一文があるために、行政でも公益法人会計を指導しているところもあり、これに対応するためだけに人を雇ったNPOもある。しかし、公益法人会計を知っている公認会計士は実は5%程度。NPOが公益法人会計に準じると考えて、公益法人会計の本も売れているというおかしな現象もある。法律のこの一文を何とかして欲しい」(ヘリテイジ・トラスト、早坂 毅氏)
最後に、加藤紘一会長が「NPO法人の規模は、年間予算50万円の団体から、数億のところまで多様である。支援しようと思って作ったNPO支援税制が、できてみたら結局使えないものになっていた。普通、制度というのは1,2年経ってから手直しをするものだが、この税制はまだ始まって2ヶ月。これで改正というのは、担当役所からは声があげられないだろう。だから、私たち議員が頑張らなければならない。一方で、税金は、国民のお金であるから、NPOの信頼を損なわないためにも、おかしなものにしてはならないということもある。このNPO議員連盟の案を、各党持ちかえって手直しして欲しい。そして、各党から参加してもらって、早く変えていきたい」と述べ、1時間半にわたった総会は閉会した。
結論としては、来年1月からの通常国会にNPO法改正案を提出する方向で調整していくことと、NPO支援税制に関しては、各党でさらに協力体制を検討していくことが決められた。
リニューアル:2001.11.30 (作成:2001.11.29)