NPO/NGOに関する税・法人制度改革連絡会総会
5月10日、NPO/NGOに関する税・法人制度改革連絡会の2004年度総会が、東京都内で開催された。
NPO/NGOに関する税・法人制度改革連絡会(以下、連絡会)は、制度改正のためのネットワーク組織で、シーズや日本NPOセンター、NPO事業サポートセンター、大阪ボランティア協会、国際協力NGOセンターなど41のNPO支援団体で構成。シーズは、6つの世話団体のひとつも務めている。
連絡会は、1999年6月8日に28団体が参加して発足、これまで、主にNPO支援税制の創設と改正に向け、全国キャンペーンや署名活動などを実施してきた。その成果として、2000年末の認定NPO法人制度の創設や2003年4月の改正、また2003年5月のNPO法の改正を実現している。
同会は、2002年4月に規約などを整備して、第一回総会を開催。今回は第3回目の総会となる。
総会では、2003年度の活動報告と2004年度の活動計画などについて話し合われた。特に、2004年度の活動計画については、認定NPO法人制度改正に向けて世論を盛り上げていくとの認識で一致したことに加え、公益法人制度改革にも積極的に関わっていくことが確認された。
また、政府が募集していた「議論の中間整理」に対する意見書が決議され、同日、行政改革推進事務局に提出された。
以下、概要を報告する。
冒頭、NPO事業サポートセンター専務理事の宇都木氏が、「社会改革の担い手としてNPOに期待がますます高まってきている今、市民活動を健全に発展させていくためにも、認定NPO法人制度への取組みをすすめるとともに、公益法人制度改革へもしっかりと対応していかなければならない」と開会の挨拶をした。
次に、議長選出が行われ、大阪ボランティア協会の早瀬氏が選任された。
まず、最初の議案として、政府の公益法人制度改革に関する有識者会議が発表した「議論の中間整理」に対する意見書が日本NPOセンター常務理事の山岡氏より提案され、若干の修正を加えたうえで決議された。
この意見書は、同日、行政改革推進事務局に提出された。
※提出された意見書については、以下のURLを参照のこと。
/2004/05/行政-連絡会、公益法人改革意見書提出/
続いて、連絡会の2003年度の活動について、シーズ事務局長の松原が以下のように報告した。
2003年4月には、認定NPO法人制度の要件緩和が一定実現した。政府サイドはこれを大幅緩和というが、この改正の効果はでていない。
2003年度、連絡会では、認定NPO法人制度のさらなる要件緩和について各党・政府に対して要望をしていくとともに、2003年の年明けから事態が急展開してきた公益法人制度改革についても、政府の動きを監視し、提言や情報収集に努めたほか、各地で勉強会を開催するなど、問題意識の共有に力をいれた。このような動きの成果として、政府の公益法人制度改革の流れを押しとどめ、NPO法人をいったんはずすということで6月に「基本方針」が出された。
認定NPO法人制度の改正については、改正の効果を見定める時間の必要があったことや、公益法人制度改革が同時並行していること、秋の衆院選挙のため与野党とも動けなかったことなどから見送りとなったが、税制改正大綱に検討項目としては、盛り込まれた。今年は政府として取り組むべき課題となっている。
秋のキャンペーンにおいては、引き続き認定NPO法人制度の改正について世論を形成していくことに力を注いだ。また、公益法人制度改革についても注意喚起が必要なため、全国9箇所で勉強会を開催し、政府の動きなどについて情報提供した。また、2003年12月1日がNPO法施行5周年にあたることから、「NPOの過去・現在・未来」と題する記念イベントを東京で開催した。
2004年度の連絡会の活動計画について、引き続き、シーズの松原が提案した。
2004年度の秋が、大きな運動の山場となりそうだ。
まず、認定NPO法人制度の改正については、昨年、税制改正大綱に検討項目として盛り込まれたことから、政府として検討しなければならないことになっている。
昨年のように検討せず見送りにはできないし、もし、改正ができないようなら、明確な理由が必要となる。また、7月には参議院選挙があるため、政党もNPO政策には積極姿勢をアピールしたい事情もある。我々が攻め手をもっているといってよい。
各省庁が予算要望を財務省に提出する8月より前、7月までに認定NPO法人制度の改正に関する要望書を提出していく必要があるだろう。それまでに、NPOの実態調査を行う必要があるかもしれない。秋には全国キャンペーンを展開し、世論を盛り上げながら、政府、各党に働きかけていきたい。
また、公益法人制度改革もこの年末までがひとつの正念場を迎える。有識者会議では、公益性の判断主体について、中立の第三者機関創設が多数意見となっているようだが、税調の方は別の判断をするかもしれないし、秋に発表される予定の有識者会議の最終報告には何ら拘束力はないので、政府が別の決定をする可能性も否定できないからだ。
おそらく、有識者会議は、7月頃には公益性の判断要件や判断主体の具体的枠組みの検討をするであろうから、それを受けて、連絡会としても対応していかなければならないだろう。
具体的枠組みが固まれば、税調の非営利法人ワーキンググループが議論を本格化させ、12月の税制改正大綱に向けて一定の結論をだしていくと思われる。そのため、その前の10月、11月が運動の山場となってくる。
このように、秋には、二つの制度改正についてキャンペーンを展開していく必要がある。
当事者である公益法人側にも動きがでており、3月には、公益法人協会やさわやか福祉財団など27団体で構成する公益法人制度改革問題連絡会(以下「公益法人連絡会」)が発足。対話集会を全国30箇所ぐらいで開催するとしており、4月27日には第一回の集会が東京で開催されている。政府の進める制度改革に対しては、当事者が発言していくことが重要だと考えるが、当連絡会としても、この動きと連携し、必要であれば協力しつつ運動を展開していきたい。公益法人連絡会には、NPO側から、シーズ、日本NPOセンター、NPO事業サポートセンター、国際協力NGOセンターも参加しているので、連携をとっていけるだろう。
以上のような提案に対して、連絡会メンバーからは、主に公益法人制度改革に対する連絡会の対応の仕方について、意見がだされた。意見には以下のようなものがあった。
- 公益法人側の運動に協力するというかたちだけではなく、もっと連絡会が前面にたって運動をリードしていく必要があるのではないか。
- 「公益法人制度改革に関する民間法制・税制調査会」とも連携していく必要があるのではないか。
- NPO法人がこの公益法人制度に合流した方がよいのか、それとも分離独立でいくのか、連絡会としての戦略はいつ頃、どのように議論していくのか。
- 流山訴訟で有償ボランティアの存在意義を否定するような判決がでている。NPO的な働き方を理解してもらえるような活動も必要ではないか。
公益法人制度改革については、今後の動向がよめないことから、連絡会メンバーで密接に連絡をとりあい、情報共有をしながら、その都度、運動の方向性の微調整をしつつ、対応を協議していくこととなった。
また、認定NPO法人制度の改正を働きかけるにあたっては、現行の支援税制では使いにくい現場の声を届けることが有効であることから、申請を準備しながらも断念した事例やその理由などについて、全国の支援センターで情報収集をし、要望書に反映させていくことが確認された。
最後に、NPOをめぐる状況は大きく動いており、これらの状況に適切に対応していくために、夏頃に、参加団体が集まっての今後の進め方に関する意見交換会を開催することが決められて、総会は終了した。
2004.05.26