行政 : 国交省、過疎地の集落維持でNPO
国土交通省は、人口減少や高齢化が進む過疎地域の集落についての調査報告をまとめ、8月17日に公表した。報告書では、NPOなどによる社会的サービスの提供によって集落機能の維持を図る仕組みつくりが重要だとしている。
日本における過疎対策は、1970年に過疎地域対策緊急措置法が制定され、以降、十年おきに過疎地域振興特別措置法、過疎地域活性化特別措置法として更新され、それらのほうに基づいて対策が講じられてきている。
現在は、2000年に制定された過疎地域自立促進特別措置法を基に、十年間に渡る過疎対策が実施されている。現行法における過疎地域とは、この法律で定められている要件に該当する市町村。
8月17日に公表された「平成18年度国土形成計画策定のための集落の状況に関する現況把握調査」は、過疎地域等を対象として、集落の現状や取組を総合的に把握し、今後の施策のあり方を検討することを目的として、国土交通省及び総務省が共同で調査したもの。農山村や漁村の今後のあり方を検討することを目的としている。
報告によると、、前回調査時(平成11年)と比べると、全国の人口がほぼ横ばいであるのに対し、過疎地域等の人口は約1割減少している。この結果、全国的に集落の小規模化が進んでいることが明らかになった。
過疎地などの全国6万2273集落(2006年4月時点)の約1割は世帯数10世帯未満の小規模集落。
集落のおかれている条件が厳しくなるほど小規模集落の割合は高くなっている。
世帯数10世帯未満の集落の割合は、役場(本庁)までの距離が20km以上離れている集落が約15%、山間地の集落が約2割、地形的に末端にある集落ではさらに小規模集落が多く、世帯数10世帯未満の集落が約3割を占めている。
また、過疎地域等における集落では高齢者の割合も高くなっており、65歳以上の高齢者の割合が50%以上の集落が全体の1割以上を占めている。
これも集落のおかれている条件が厳しくなるほど高齢者の割合が高くなっている。
高齢者割合50%以上の集落の割合を見ると、役場(本庁)までの距離が20km以上離れている集落は約2割、山間地の集落は約25%、地形的に末端にある集落は約35%を占めている。
過疎地などの全国6万2273集落(2006年4月時点)のうち、「今後10年以内に消滅する恐れがある」のは423集落。「いずれ消滅する恐れがある」のは2220集落。合わせて全体の4.2%が「消滅する恐れがある」と予測している。山間地など地形的に末端にある集落では2割以上が消滅の恐れがあるとのこと。
集落で発生している問題としては、市町村に対しアンケート調査を行った結果、6割を超える市町村で、耕作放棄地の増大(63.0%)が指摘されているほか、空き家の増加(57.9%)、森林の荒廃(49.4%)、ごみの不法投棄の増加(45.9%)、獣害・病虫害等の発生(46.7%)などが挙げられている。
集落機能の維持・保全のために、NPOや住民等の活動を含め、各集落が独自に取り組んでいる事例としては、景観保全対策(35.7%)や地域文化の保全対策(33.9%)などが多くなっている。
これらの結果から、報告書では、下記のような「過疎地域等における今後の集落対策のあり方」を提示している。
・行政として巡回などによる日常的な目配りをして、集落の実態や集落機能の維持状況、あるいは住民の将来居住意向などを把握しておくこと。
・行政だけではなく、地域住民や民間事業者、NPOなど多様な担い手との連携によって、生活を維持する上で最低限の社会的サービスが提供されること。
・地域文化の継承や集落景観の保全など、住民発意による集落対策に対して、行政が側面的に支援していくこと。
・集落機能維持のための集落再編すること。
・集落対策については、単に国土利用や国土保全の観点のみならず、農林水産業の振興、伝統文化や産業の保全、医療・福祉・教育のあり方などについて各省庁が連携していくこと。
さらに、報告書では、消滅集落における資源管理・活用のあり方についても、国土保全上・景観保全上の観点からの対策が必要となるとしている。
「平成18年度国土形成計画策定のための集落の状況に関する現況把握調査」は、国土交通省サイト内、下記に掲載されている。
http://www.mlit.go.jp/kisha/kisha07/02/020817_.html