内閣府が発表したNPO法の運用方針は、認証の基準として、本来事業に使う支出が初年度および翌事業年度とともに、総支出の半分以上でなければならないという要件を示しています。これは、どのように理解すればいいですか。
内閣府は、2003年3月「NPO法の運用方針」を発表し、同年12月にさらに改定しています。その全文は内閣府の次のホームページで読むことができます。
http://www.npo-homepage.go.jp/pdf/031218program.pdf
なお、内閣府だけではなく、都道府県の中には、この内閣府の方針を自らの所轄庁の基準として採用しているところもあるようです。
この運用方針を発表した目的は、NPO法の「認証基準」を満たしているかどうか、申請者にとって容易に判断できない場合があるため、その基準のうち、特に重要な事項である団体の「主たる目的性」と「非営利性」をさらに明確化することだそうです。
しかし、この「方針」は、法律でもなければ政令でもありません。どちらかというと「一種の解説」に近いものと捉えるべきです。
例えば、団体活動の「非営利性」を支出面だけで計る考え方が、全ての場合において合理性があるとは言えないからです。NPO法第2条には、確かに特定非営利活動を主たる目的とするものではなくてはならない、と定められており、これは本来事業が全体の活動の半分より大きい、ということを意味しています。
そして、この解釈について、当時の経済企画庁国民生活局(現内閣府国民生活局)が著した「Q&A ここが知りたいNPO法」(ぎょうせい発行、平成11年7月)には、次のように書かれています。
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「特定非営利活動法人は、特定非営利活動を行うことを『主たる目的』としなくてはなりません。しかし、何を基準にして、それを判断すべきかについては、法律には特に規定が置かれていません。
営利企業であれば、取扱高、収入額等金銭面をみて、その企業にとっての『主たる』事業を判断することも可能でしょう。しかし、NPO法人の場合、必ずしも経済的な取引を行っているとは限らず、とりわけボランティアなどに支えられた活動を行う場合には、その活動は金銭面には表れにくいものです。
このため、いくら特定非営利活動を活発に行っていても、並行して収益事業(注:現在は改正されて「その他の事業」)も活発に行っている場合は、団体の財務関係書類だけで見ると、あたかも収益事業(その他の事業)が『主たる目的』であると思える団体もあるでしょう。
したがって、所轄庁は、金銭面だけでなく事業面も合わせて、特定非営利活動(本来事業)がその団体にとって『主たる目的』かどうかを判断することが必要になるでしょう。このため、実際の認証申請を審査する際には、会計書類の他に、定款や事業計画書に書かれた活動内容なども十分参考にして判断することになります。」
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つまり、現在の内閣府の前身である経済企画庁国民生活局自身が、本来事業やその他の事業をはかる基準として、金銭だけが合理的な指標だとはいえない、と解説しているのです。
よって、もし内閣府が、本来事業に係る支出が総支出の半分以上であることという基準だけで、認証・不認証を決定するということになると、内閣府の基準は二重基準だとも言えます。
シーズでは本来事業に使う支出が総支出の半分以上でなくとも、それだけでは法令違反にはならないと考えます。しかし、もし所轄庁が不認証と判断し、それに異議がある場合には、裁判で争うこととなります。結局どうするかは、それぞれの団体で判断することになります。