役員の辞任について、何か制限はありますか。
NPO法にもNPO法が準用している民法にも、理事の辞任に関する定めはありません。理事とNPO法人との関係は、NPO法人を「委任者」理事を「受任者」とする、民法上の委任関係と解されます。従って、原則としては理事はいつでも辞任をすることが出来ます(民法651条1項)。
但し、完全に自由というわけではなく、次のような制約があります。
まず、NPO法では理事の人数は3人以上でなければならないと定められています。このため例えば3人しか理事がいないときに、そのうちの一人が辞任しますと法定数を欠くことになりますので、辞任の登記が出来ません。法人の内部的には辞任したことになっても、対外的には登記上理事のままですから、第3者との関係では理事としての責任が残ることになります。
この場合NPO法人としては、早急に新しい理事を選任し、その登記と同時に辞任した理事の辞任の登記をすることになります。
次に、理事が委任者であるNPO法人のために「不利な時期」に辞任する場合には、辞任すること自体は自由にできるのですが、その辞任によってNPO法人が損害を被ったときにはその損害を賠償しなければなりません(民法651条2項)。但し、理事の辞任が、例えば病気などのやむを得ない事情によるものであるときは、損害賠償責任はありません。
なお、どのような場合にNPO法人に損害を被らせることになるかは、ケースバイケースですが、実際にはその損害の算定はなかなか困難なものです。
(浅野)