業務の便宜上、法人の代表印を複数作ることは可能でしょうか。
NPO法第16条では「理事は、すべて特定非営利活動法人の業務について、特定非営利活動法人を代表する」としています。つまり、理事長や会長などの肩書きを持つ理事と、そうでない理事がいたとしても、法律上では理事全員がNPO法人の代表者ということです。このことから、各理事それぞれの印鑑を届出て複数の代表印を法人が持つことも可能です。
しかし、契約の度に代表者名や印鑑が違ってしまうと、外部の人はいぶかしげに思うかもしれません。また、もし理事同士が対立してしまったような場合、それぞれが総会や理事会を招集してしまったり、他の理事が知らないところで、ある理事が勝手に契約を結んでしまったり、などということもあるかもしれません。
(そのため、NPO法第16条では、理事全員が法人を代表しているけれど、「ただし、定款をもって、その代表権を制限することができる」とも規定しています。)
よって、全国にいくつかの事務所を持っているNPO法人の場合なら、代表印を2つ以上持っておくと便利なことがあると思いますが、そうでない場合は、混乱を避けるため代表者印を複数持つことはお勧めしません。
ちなみに、どうしても複数の代表者印を持ちたい場合について、以下のことを東京法務局本局から教えてもらいました。
法務局では、ひとつの印鑑ごとに一人の理事名で届け出ます。よって、その届出の理事以外の理事は、同じ印鑑は使えません。たとえ「特定非営利活動法人○△会 代表者之印」という理事の氏名が入っていないような印鑑の場合でも同様です。
つまり、理事である○山△子さんの印鑑として「特定非営利活動法人○△会 代表者之印」を法務局に届け出ている時は、他の理事である×川○男さんが契約する時には、その代表者印は使えないということです。
また、同じ文言が入った印鑑を複数代表者印にすることはできないそうです。つまり「特定非営利活動法人○△会 代表者之印」という同じ文字が入った印鑑を複数作って、複数の理事の印鑑として法務局に届け出ても受け付けてくれません。
しかし、「特定非営利活動法人○△会 理事長の印」と「特定非営利活動法人○△会 副理事長の印」というように、違う文字のものを、それぞれ違う理事の印鑑として届けることは可能だそうです。