総会の議決における票数を、社員の会費の口数に応じて増減することは可能ですか。
NPO法が準用している民法第65条は、社員の表決権は平等であるが、定款に別に定めがある時はこれによらない、と定めています。具体的には次のような内容です。
民法第65条
第1項 各社員の表決権は平等なるものとす
第2項 (略)
第3項 前二項の規定は定款に別段の定ある場合には之を適用せず
そのため、年会費の口数によって、総会での票数を多くするということも法律上は可能のように思われますが、これについては専門家の間でも議論があるところのようです。
NPO法ができる時、シーズでもこの件について調査したこともあるのですが、いくつかの解釈がありました。
なお、「NPO法コンメンタール」(日本評論社:堀田力、雨宮孝子編)という本の中で、弁護士である浅野晋氏は次のように書いています。
「本項(注:民法65条第3項)は、定款に別段の定めをすれば1項・2項は適用されないことを定めている。しかし、表決権は社員権のうち最も基本的なものであることから、定款をもってしても、一部の社員からまったくこれを奪ってしまうことはできない。
(中略)表決権については、定款で定めれば平等でないこととすることができる。したがって、定款で『ある種の社員については表決権を2票とする』といった定めが可能である。しかし、この不平等が極端な場合、たとえば、ある種の社員については1,000票とする、といった極端に差異がある表決権の定めについては、実質的に他の社員の表決権を奪ってしまうことになると思われ、無効と解される。ただし、どの程度の格差になると無効となるかについては、現時点では判例もなく、明確ではない。」
実際、社団法人であるアムネスティ・インターナショナル日本という団体では、社員(団体)は3票、個人の社員は0.1票、と定めています。この場合は、団体と個人を分けている訳ですが、票数の増減は可能であるということが分かります。
ただ、浅野弁護士の意見にあるように、会費に比例して天井なしに票数を与えるという場合には、他の社員の表決権を奪ってしまわないか、という問題もあります。
社員の票数の格差がどの程度なら良いのか、については明確ではないということですから、認証を行う所轄庁の判断にもよります。もし、所轄庁が不認証という決定をした時には、裁判で争うという手段はあります。