国際ボランティアセンター山形
今後は社会的認知度を高めて、企業側がスポンサーになることでイメージが上がるような仕組みを持たなければなりません。
~「国際ボランティアセンター山形」 安達三千代事務局長~
■IVY“3次元”での活動
『国際ボランティアセンター山形(以下、IVY)』の活動内容を説明させていただく時は、いつも「“3次元”で活動しています」という表現を使っています。ひとつはカンボジアなど海外への支援、もうひとつは山形県に定住する外国人への協力、そしてその両方を繋ぐ地元での活動という3つの次元から成り立っているからです。
IVYが設立されたのは、1991年8月にカンボジア国境にあった難民キャンプのスタディ・ツアーに行った10人が帰って来て、アジアの問題について、山形から何かできることはないかと考えたのがきっかけです。いきなり海外で支援活動というのはなかなか難しいので、いずれはアジアで活動したいということを念頭に置きながらも、まずは足元からできることを見直そうということになりました。
そこで、当時すでに山形に来ていた500名を越える外国人花嫁さんを支援するために、“各市町村に一校”を目標にして、日本語教室を開設することにしました。都会と違って日本語学校もなく、言葉や文化の問題を抱えた女性がたくさんいたのです。外国人向けの日本語教室の開催、生活相談、子どもたちへの学習支援は、いまでも継続して行っています。
カンボジアへの支援は、先のスタディ・ツアーで訪れた難民キャンプは閉鎖に向かっていた時期だったので、カンボジア国内に帰還した戦災孤児やホームレスのための、社会福祉施設を支援するところから始めました。時代が進んで戦災孤児たちがある程度成長してくると、活動は女性たちの自立支援という方にシフトしていきました。現在は、スバイリエン州州というところで、20村で女性を対象に、まずグループや組合を組織して、その組織力を生かし地域の相互扶助を高め、農業や生活改善に関する技術の普及を促し、野菜や家畜等の共同出荷を行なって、みんなで豊かになれるような活動を行っています。そしてその両方にリンクする活動として、地元で国際理解教育や環境教育のワークショップ、“地球の文化祭”というお祭りイベントを行っています。海外支援や外国人支援の活動は専門的で、なかなか一般の方々の目に見えるものではないので、地元の人たちと触れ合う場所として、コツコツと積み上げています。この活動は最近やっと軌道に乗ってきたので、地域との窓口として継続していくつもりです。
■事務局長就任の経緯
最初私は日本語教室の講師として関わっていました。ボランティアで何かできるかなと思って手を挙げたら、新しく日本語教室を開設するので、そこに講師として行ってくれと言われまして。しばらくして、IVYがカンボジア事業を始めることになり、担当者が欲しいということで94年に事務局に入ったのが最初です。IVYの設立が9年からなので、わりと初期の頃から籍を置くことになりました。
IVYがNPO法人になったのは99年で、そのあたりに事務局長になりました。どうしても局員が1~2年という短い期間で入れ変わってしまうのですが、そうなると事務局としての蓄積がなくなってしまうので、引き継ぎをするためにも、事務局の事情に詳しい私が事務局長になりました。
■会員との深い関わり
会員はいまのところ100名くらいです。IVY会員はお金だけ出すのではなくて、活動に関わっている人たちが多いのが特徴です。会員名簿を見れば、みなさんの顔を思い出せます。カンボジアのプロジェクトサイトに直接足を運ぶ人、イベントに関わっている人、外国人への協力活動のスタッフやボランティア、そういう人たちが支えている会なのです。やはりお金だけ出すよりは活動が伴っているほうが、協力をしている実感があるのではないでしょうか。年齢層は大学生からシニアまでわりとまんべんなくいて、男女もだいたい半々くらいです。
会費は1口10000円で、学生は3000円です。会費は郵便振込みが基本ですが、銀行口座の方もいます。いつかは引き落としも採用したいです。
会報誌は年6回出しています。会員継続の期限が近づいてくると、会報誌と一緒にアジア雑貨を一緒に入れて引き続きの支援依頼を送っています。やしの木のスプーンやカンボジアコショウなどのささやかな品々ですが、これを見て、私たちの活動を思い出していただけるので、会員の継続率は高いです。
■企業スポンサードへの取り組み
ファンドレイジングに関して、企業へのアプローチを考えています。
企業や団体への営業の強化はもちろん最優先です。そこで去年、「お知り合いキャンペーン」のような形で、IVYが開催するイベントのパンフレットに広告を掲載してくれる企業さんを自転車で回って集めました。今年はそういう部分をさらにパワーアップをしていこうと思っています。
その延長で、コミュニティラジオにも進出したいなと思っています。いまコミュニティFMがたくさんできて、この辺りでも2社ラジオ局があります。ひとつ番組の枠をもらって、海外の駐在員と電話で結んだり、活動内容を中継できればと思っています。そこに企業さんにスポンサーとして加わってもらい、毎回「この番組は、***社の提供でお送りしました」というような形で宣伝を行えればと考えています。今後はユニセフのように社会的認知度を高めて、企業がIVYのスポンサーになることによってイメージが上がるような仕組みを持たなければいけません。
今年、フルタイムの職員を1名追加する予定です。人員を補強した分で、山形県内、東北圏内を回って、企業や団体から寄付を集めようという計画です。事務所に入って業務をこなしていると、どうしてもこもりっきりになってしまうので、専門の営業担当者をつくる体制を今年から展開しようと思っています。
■ファンドレイジング対策としての理事会の強化
もうひとつの取り組みは、理事会の強化です。これまでは、理事がファンドレイジングを担うという意識は低かったんです。スタッフたちは自分たちが活動していかなければならないので、寄付金をどう集めたらいいか年中ハラハラしていますけれども、理事会はそういう認識は薄かったんです。今後は、社会的な信用度を増すような方に理事をお願いしたり、若い世代からも理事を選出したり、東北の各県から1名ずつ選出して活動エリアを広げるようにするなどといった理事会強化のためのアイデアが出ています。
<安達三千代事務局長のプロフィール>
IVYの前身であるJVC山形でカンボジア事業を担当、カンボジア関連のプロジェクトオフィサーや山形県内での活動を経て、99年に事務局長、理事に就任。精力的にプロジェクト、ファンドレイジング活動をこなしている。その他、大学での講師多数。外務省NGO相談員など。
<取材団体プロフィール>
団体名:
特定非営利活動法人 国際ボランティアセンター山形
活動開始:
1991年
法人設立年月:
1999年6月(NPO法人)
スタッフ数:
約8名
事業規模:
約3千万円
ニュースレター:
年6回
募金活動:
適宜
団体ホームページ: