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2007年11月12日 10:30

行政 : 経産省、成長と公平性に関する報告書

 10月26日、経済産業省は、昨年10月より審議を行ってきた産業構造審議会基本政策部会における報告書、「経済成長と公平性の両立に向けて」を公表した。報告書では、「経済成長」と「公平性」の実現に影響を持つ、教育、労働、社会保障など「人的資本に関わる施策」について提言。施策の実現には「公」と「私」の連携が必要だとし、寄附税制の拡充やボランティア活動促進の環境整備を求めている。

 

 産業構造審議会基本政策部会は、2005年4月に、日本経済社会の持続的な活力の向上を実現すべく、広く経済社会のあり方について調査審議する目的で設置された。

 10月26日、産業構造審議会基本政策部会は、昨年10月より審議を行ってきた「経済成長と公平性の両立に向けて」を公表した。

 この報告書では、時代のニーズを踏まえた高度人材の育成が経済成長を支え、より高い所得を稼げる技能が身につく教育が格差是正につながるとし、人的資本の充実が日本経済の当面する課題解決の鍵であるとしている。

 しかしながら、人的資本に関わる政策は、教育、労働、社会保障、産業など多分野にわたることから、統一的な視座を欠きがち。その結果、以下のような社会問題が発生しているとしている。

・産業界と教育界の相互理解の不足により「使える」人材が育たない。
 大学卒の約35%が3年以内に離職(2004年)

・基礎学力不足や幼児期に育つべき基礎能力の不足により、「就職する力」がない若者が多い。
 日本型ニート人口:62万人(2006年)

・健康投資の不足が病気や失業につながり、社会保障への依存をもたらす。
 メタボリックシンドローム該当者920万人、予備軍980万人、合計1900万人(2005年)

 そこで、この報告書は、人的資本について、分野を問わず統一的視座を示すことを目的として編集された。

 具体的には、人生のライフサイクルに対応した典型的な4つのステージに分けて7つの提言を行っている。

<幼少期:基礎能力を充実する>

提言1:就学前を含めた幼少期の人的資本形成の包括的プログラム。例えば、感じる力、遊ぶ力、観察する力、人とつきあう力育成。シングルペアレントを応援。

<成長期:自立力を養う>

提言2:産業界のニーズを踏まえた高等教育の成果を活かす人材マネジメント。学校から職場への移行をうまく進める複線型教育プログラム。

提言3:女性の就労促進に向けた育児サービスの充実、働き方に中立的な社会保障制度等。

提言4:若年労働者、シングルペアレント等にとっての円滑なスキルアップや人材移動の実現。

<充実期:仕事・生活を調和させる>

提言5:ワークライフバランス等働き方改革の推進のための自主的情報開示の推進。

提言6:予防医療等により健康寿命の延伸を図り、失業・貧困に陥るリスクを減少。

<円熟期・高齢期:社会に還元する>

提言7:高齢者の社会活動への参加・継続就労を促すとともに、OB人材のノウハウを地域等で積極活用。

 さらに、ライフステージを超えた視点として下記の4点をあげている。

1)雇用慣行

・正規、非正規雇用の二元論からの脱却。
・能力の適正な評価とスキルアップ。

2)「人生前半施策」の充実

 「人生前半施策」とは、幼少教育、高等教育や職業訓練、若年労働者のスキルアップ、無職者・低所得者への就労支援、健康寿命延伸、共働き支援等の所得稼得能力を対象とした施策のこと。
・漸進的に進め、現在の高齢者にはしっかり手当。
・真に困っている人々に重点化。

3)支え合う「公」と「私」

・企業と社会で人的資本を育て活用する。
・コミュニティビジネス、NPO等の場の充実。

4)地域特性を活かした取組

・PPP(官民連携)の拡大。
・地域特性を活かした幼少教育、産業人材育成取組。
・住民・地域ニーズを反映する仕組(「特別コミュニティ政府」等)。

 なかでも、3)の項では、民間団体(非営利法人、地域ネットワーク・コミュニティ、ボランティア団体等)が、政府に代わり、あるいは政府と協働して、自主的な立場からセーフティネット等の公共サービスを柔軟にカバーしていくことを促進することが必要だと提言。

 あわせて、円熟期・シニア人材による地域・社会貢献も期待。そのためには、寄附税制の拡充や省庁横断的な取組による公的サービス担い手支援の拡充、ボランティア活動促進の環境整備を求めている。

 産業構造審議会基本政策部会報告書「-経済成長と公平性の両立に向けて-」は、経済産業省サイト内、下記に掲載されている。
 http://www.meti.go.jp:80/report/data/g71026aj.html

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