その他 : 認定NPO法改正要望書、各党に提出予定
NPO/NGOに関する税・法人制度改革連絡会(以下、連絡会)は、11月14日、NPO法人制度の税制改正に関する要望書をまとめた。
来年度の税制改正を要望するもの。各党に要望書を提出していく予定。
認定NPO法人制度は2001年10月1日に施行され、丸7年が経過しているが、認定を受けたNPO法人はわずか89法人(2008年11月1日現在)にとどまっている。
これまで5度の改正がされてているが、要件が緩和される一方で複雑さや煩雑さが今まで以上に増し、実効性のある制度になっていない。連絡会では、多くのNPO法人が認定NPO法制度を活用し、寄付者からの支持を広めることができるよう、制度の実効性のある要件緩和を求めている。
NPO/NGOに関する税・法人制度改革連絡会は、1999年に設立された全国41のNPO支援センターの全国ネットワーク。NPO法改正や認定NPO法人制度の改正について、NPO側の意見をまとめたり、各地での制度改正の運動を展開している。シーズは世話団体の1つを務めている。
とりまとめた要望書全文は以下の通り。
NPO法人制度の税制改正に関する要望書(PDFファイル)はこちら
NPO法人制度の税制改正に関する要望書
2008年11月14日
NPO/NGOに関する税・法人制度改革連絡会
日頃から、国会議員の皆様には、NPO活動への理解をいただき、その発展のために尽力いただいていること、深く感謝申し上げます。
さて、2001年10月1日から、認定NPO法人制度がスタートして、すでに丸7年が経過いたしました。
この制度は、市民や企業が、NPO法人にいっそう寄附しやすくするよう税制上の支援を行うもので、日本社会においてますます重要性を増すNPO活動を発展させていくために極めて重要な制度であると、期待しているところです。
しかし、認定要件が極めて煩雑で厳しいことから、施行後7年を経た現在に至っても、認定を受けたNPO法人はわずか89法人(2008年11月1日現在)にすぎません。
この数字は、約3万6千あるNPO法人のわずか0.25%でしかなく、ほとんどの団体にとって、認定が受けられないという状況が続いています。
今年5度の改正をいただいているわけですが、要件が緩和される一方、複雑さや煩雑さが今まで以上に増し、まだまだ実効性のある制度にはなっていないのが実状です。
また、NPO法人自体も、小規模な法人が多く、大規模な公益法人等に適用される税制をそのまま適用することは、法人の運営を阻害するなどの問題もでてきています。
さらに一部の自治体が実施している地方税における1%支援税制のような支援措置も国がバックアップすることで、全国に広がり、NPO活動を一層推進していただくことを期待しています。
多くのNPO法人が、これらの制度を幅広く活発に利用し、寄附者に支持されるため事業成果を高めるなどの切磋琢磨を通じて逞しく成長することで、日本社会の発展により一層資することができるように、その内容を簡素化し、抜本的に改正していくことが必要と考え、以下の項目を要望いたします。
【1】今回緊急的に取り組んでいただきたい改正要望
1.初回および2回目申請の実績判定期間を選択制で2年でも可能とする措置の実施
今年4月の税制改正で、認定の有効期間が5年間に延長していただいたことは、たいへん高く評価しています。(シーズのアンケートでも、認定団体の90%以上が「評価できる」と回答)
しかし、実績判定期間も同時に原則5年間に伸びたことで、初回申請に関してまで、2年以上5年以下の書類が求められるようになりました。(法人化後5年以内の書類が必要となりました。)
このため、これまで2年間の書類で申請しようとして準備していた多くの団体が、再度書類の作りなおしや、申請を諦めるなどするという事態が起こってきています。また、せっかく、2年間努力して申請のための条件を整えてきた団体が申請できないという事態も起こっています。
一方、すでに過去5年間以内の書類の準備を行っている団体もあることから、初回の認定申請のみに関しては、選択制で、申請団体の判断により、2年以上5年間以下の期間で、任意の実績判定期間を選べるようにしていただけるようお願いします。
また、2回目の申請を行う団体に関しては、過去4年間の実績は整理されているものの過去5年間となると、認定要件に満たない団体が出てくる可能性もあります。改正したために、かえって認定が受けられなくなるのは不合理です。2回目の申請以降は、その団体の認定の有効期間に合わせた実績判定期間の採用をお願いいたします。
なお、これに関連して、任意団体からNPO法人化した時、引き継いだ資産が、現在のパブリックサポートテストでは、寄附として経常収入に組み入れられています。これも初回の申請の大きな阻害要因となっています。法人化の際、任意団体から引き継いだ資産は、経常収入ではないので、パブリックサポートテストの分母分子に算入しないで済む措置をお願いいたします。
2.審査期間の短縮による申請団体の負担減の実施
現在、初回の認定においては、認定申請を行ってから、認定の可否の結論が出るのに、平均約8か月かかっている状況です(シーズのアンケート)。
認定を受けた団体の6割以上が、初回の認定には6か月以上かかっており、1年以上かかっている団体も1割強あります。最長でまるまる2年かかった団体もあります。
申請相談に国税局を訪問すると、「2年待ち」と言われて、申請を断念するという事例もあります。
いったん認定を受けた団体でさえ、再申請の際、6か月以上かかっている団体がある状況です。
このような審査期間の長期化は、申請団体に大きな負担となっています。
国税庁では、誠意をもってご対応いただいてはいるのですが、人員が不足し、審査体制が手薄なこともあり、スピーディーな審査ができない状態となっています。これでは、せっかく認定要件を緩和していただいても、申請が増えていきません。
ぜひとも、認定申請の迅速化を可能とするよう体制を充実していただくことをお願いします。
さらに、審査期間に「4か月以内」というような限度を設け、また、再申請の場合は、一定期間以内に国税局から通知がない場合は、認定を受けたものとみなす措置の導入をするなど、安心して申請できる仕組みの実現をお願いします。(青色申告の申請等の手続き等と同様の措置の導入をお願いします)
【2】認定NPO法人制度の全般的な改正要望
1.NPO法人の50%(現在0.25%)は認定が受けられるように、改正の数値目標を明確にすること
認定NPO法人制度は、すでに5度の改正をしていただいていますが、認定要件が依然厳しいことと、煩雑さのために、申請自体が少ない状況にあります。(制度創設から7年で、申請数は延べ305件しかありません。このうち、認定を受けた数が再認定も含めて171件を占めています。)
抜本的な改善を図る上でも、明確な数値目標を示して、制度の改善をすすめていただきたくお願いいたします。
2001年に、政府は国会答弁で、「NPO法人のうち5割程度はパブリックサポートテストに適合する見込みである」という趣旨の答弁をした経緯もあり、この50%という数値が不適切であるとは考えられません。
NPO活動の盛んな米国では、毎年3~4万の寄附税制優遇NPOが生まれています。
ぜひとも、日本でも、NPO活動を一層盛んにし、市民の社会貢献活動を促進するためにも、明確な数値目標を示して、制度の改善を図っていただきたくお願いいたします。
2.認定要件の一層の緩和を
認定要件に関しては、いままでのご尽力をもちまして、一定の緩和が実現してきたところです。しかし、まだ、認定NPO法人の数が増えないことや、介護保険事業などを行う事業型のNPO法人の認定が受けにくいなどの課題も残っています。
ぜひ、一層の緩和をお願いいたしたく、以下の項目の実現をお願いいたします。
(1)日本版パブリックサポートテストの要件を大幅に緩和すること。例えば、総収入金額に占める寄附金額等の割合を10分の1以上(現行は暫定措置として5分の1以上)とする、また、一者当たりの寄附金基準限度額を寄附金総額の20%(現行10%)まで認めるなど。
(2)事業型(対価収入の割合が多い法人)も認定が受けやすくなるように要件を改正すること。例えば、特定非営利活動に関る事業収入を分母から差し引くなど。
(3)任意団体からNPO法人化した時、任意団体から引き継いだ資産は、経常収入ではないので、パブリックサポートテストの分母分子に算入しないで済む措置を講ずること
(4)「実績判定期間における受入寄附金総額の70%以上を特定非営利活動に係る事業に充てる規定」および「実績判定期間における総事業費のうち80%以上を特定非営利活動に係る事業費に充てる規定」の中で、この対象事業費に、「将来のために使途が明確な繰入金(特定費用準備資金)や積立金(資産を取得するための資金を含む)」および「無償の役務提供等に係る費用(ボランティア活動)」(いずれも新公益法人制度にあるような制度)を認めること。
(5)パブリックサポートテストにおいて、分子、分母の寄附金収入に、無償の役務提供等に係る費用(ボランティア活動)の算入を選択により認めること(新公益法人制度と類似の措置)。
(6)1,000円未満の寄附金を分子、分母から除外する規定は廃止すること。
3.認定申請書類の煩雑さを改善し、簡素化を図ること
認定要件を緩和しても、申請が増えない最大の理由は、申請書類の作成の煩雑さにあります。
申請書類はできるだけわかりやすくし、申請書類以外の資料はできる限り事業報告書等で代用できるようお願いいたします。また、情報公開規定については、税務署への提出書類ではなく、すでに所轄庁へ提出している事業報告・会計報告の中で行う方向を基本としていただき、統一的なNPO情報の公開ができるようにしていただくことをお願いします。
具体的には、以下の点の実現をお願いいたします。
(1)申請書類として法定化されている書類は問題があるとき(報告聴取時)以外は提出しなくてよいようにし、書類のチェックリスト化・簡易化をすすめること
(2)収入金額の源泉別の明細は、事業報告書、収支計算書で代用できる場合には省略できるものとすること
(3)借入金の明細は、財産目録で代用できる場合には省略できるものとすること
(4)資産の譲渡等の内容に関する事項(資産の譲渡、貸付、役務の提供に係る料金及び条件等)は、廃止するものとすること
(5)取引の内容に関する事項のうち、収入の生じる取引の上位5者、支出の生じる取引の上位5者の名簿の提出・公開は、廃止するか、一定の金額以上のものに限定すること
(6)役員報酬及び従業員給与に関する事項のうち、従業員の氏名及びその金額については、廃止するものとすること
(7)給与を得た従業員の総数及び総額は、事業報告書又は会計報告書で確認できる場合には提出を省略できるものとすること
(8)支出した寄附金に関する事項については、事業報告書、収支計算書等で確認できる場合には提出を省略できるものとすること
(9)200万円以下の海外送金に関する事項については、廃止すること
(10)認定NPO法人が毎事業年度提出する租税特別措置法施行令第39条の23第1項第3号から6号までに掲げる要件を満たしている旨を説明する資料(活動や組織運営が適正に行われているかどうかについてのチェック)については、監事の監査報告書を提出している場合には、毎事業年度の提出を省略できるものとすること(申請時及び更新時のみの提出書類とする)。
4.審査体制を充実し、認定手続きの迅速化をはかること
現在、初回の認定においては、認定申請を行ってから、認定の可否の結論が出るのに、平均約8か月かかっている状況です(シーズのアンケート)。
認定を受けた団体の6割以上が、初回の認定には6か月以上かかっており、1年以上かかっている団体も1割強あります。最長でまるまる2年かかった団体もあります。
いったん認定を受けた団体でさえ、再申請の際、6か月以上かかっている団体がある状況です。
このような審査期間の長期化は、申請団体に大きな負担となっています。
ぜひとも、初回の認定および再認定において、以下の審査の迅速化をはかる措置の実施をお願いいたします。
A.初回の認定について
(1)初回の申請時には、実績判定期間を2年とすることを選択できるものとするか(今回の緊急要望事項)、もしくは、すでに米国で実施されている「仮認定」の制度を設け、申請後、一定の期間(例えば5年)を経てから本認定する仕組みとすること
(2)認定審査については、基本的に書面審査とし、申請内容に疑義があるときに限り、調査をすることとする
(3)審査期間は、書類提出から原則4ヶ月以内(調査がある場合を除く)とすること
(4)調査がある場合にも書類提出から4ヶ月以内に調査がある旨を通知するものとし、6ヶ月以内に認定又は不認定について通知するものとすること
B.再認定について
(1)現在認定の「更新」システムがないため、審査期間によっては認定NPO法人として活動できない期間が発生する可能性がでてくる。そこで、再認定ではなく、更新制度とすること
(2)申請書提出から一定期間内に通知がない場合には更新されたものとみなすこと
(3)更新のときの提出書類で、実績判定期間内に毎事業年度報告している書類(役員報酬等の内訳、支出した寄附金など)については、実績判定期間で合算して提出する必要がないものとする
(4)更新時の寄附者リストについては、毎事業年度提出しているため、基準限度額計算に関係してくる寄附者のみとし、それ以外は合計金額の記載とすること
5.税制優遇措置の一層の充実を図ること
税制優遇措置に関しては、毎年、改正が進んでおり、歓迎しているところです。日本でより大きな寄附文化の発展を実現するために、ぜひとも、下記項目の、より一層の税制優遇措置の充実をお願いいたします。
とりわけ、地方税の優遇措置は、条例の制定も遅れており、今後実現が不透明な状況もあります。地方税においても、寄附金控除制度の一層の充実をお願いいたします。
(1)みなし寄附金制度の控除限度額を所得金額の50%(現行20%)もしくは200万円のいずれか大きい額に引き上げること
(2)法人寄附金の損金算入限度額を所得の10%までに引き上げるなど、寄附者のメリットを飛躍的に拡大すること
(3)地方税においても、条例に任せきりにするのではなく、認定NPO法人に寄附をした場合、国税と連動して寄附金控除できるようにすること
(4)地方税の寄附金控除制度においては、自治体の範囲を超えた寄附金控除も認められるようにすること
(5)個人の寄附金控除の5千円の足切りを廃止すること
(6)認定NPO法人において、不動産等の寄附における「みなし譲渡所得課税」の適用については、公益社団・財団法人と同様に自動的に適用除外とすること
(7)寄附者に対して、本年の寄附金控除で控除し切れなかった部分について翌年への繰越を認めること。
(8)認定NPO法人において、受取利子、配当等の源泉税については、公益社団・財団法人と同様に非課税とすること。
(9)寄附金控除を年末調整で受けられるようにすること。
【3】NPO法人への税制支援措置の拡充
1.1%支援制度など市民が支援しやすい制度の創設を
現在、市川市で行われている1%市民活動支援制度(住民が自分の住民税の1%を選択したNPOに助成できる制度)のように、行政が直接支援するのではなく、市民がNPOを支援するのを行政がサポートする制度の検討をお願いします。具体的には、1%支援制度を全国の自治体が採用しやすいように国がバックアップする制度の創設をご検討ください。
2.小規模法人に対する法人税の免税点制度と簡易申告制度の創設を
小規模のNPO法人が税法上の収益事業を行った場合、会計を区分して事業別の決算書を作成し、法人税等の税務申告書やそれに関する添付書類を作成することは、NPO法人の現状では、財政面や人的面から相当の負担になっています。
米国にあるような小規模のNPO法人は免税になる制度にならい、事業収入が例えば年間300万円未満の場合、法人税、都道府県・市民税(均等割を含む)、事業税の申告納税義務を免除する免税点制度と、事業収入が年間1000万円未満の場合、事業収入の一定比率を自動的に課税所得とする申告を選択可能する簡易申告制度の創設を行い、小規模なNPO法人の活動しやすい環境整備をお願いいたします。