その他 : NPO法人として初の裁判外紛争解決手続(ADR)認証を取得
福岡県で「マンション110番」を運営するNPO法人福岡マンション管理組合連合会(杉本典夫理事長)が、2008年12月、法的なトラブルを迅速に解決する「裁判外紛争解決手続(ADR)」の認証を取得した。NPO法人のADR認証取得は全国で初めて。
裁判外紛争解決手続(ADR:Alternative Dispute Resolution)とは、
裁判によることなく、法的なトラブルを解決する方法、手段など一般を総称する言葉で、例えば、調停・あっせんなど、様々なものがある。
法務省によれば、ADRには以下の特長があるという。
1.当事者のプライバシー、営業上の秘密などに配慮し、手続の状況や内容を公開せずにトラブルの解決を図ることができる
2.当事者の事情や意見なども考慮し、法的な権利や義務を定めるにとどまらない柔軟な解決を図ることができる
3.トラブルの種類や内容に応じて、簡易迅速に手続を進めることができる
4.トラブルに関係する分野に精通した専門家の知識経験を活かしたきめ細やかな解決を図ることができる
ADRは企業と消費者間の問題や近隣住民間のトラブルなど近年多発する法的紛争を、時間や費用のかかる裁判に代わり、紛争当事者に加え専門家が関わることで、迅速な解決を可能にする制度として期待されている。
司法制度改革の一環として、ADRを促進するため、「裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律(ADR法)」が2004年12月に公布、2007年4月に施行された。
ADRを民間組織が行うことは施行以前から可能であったが、弁護士法の規定により報酬を受け取ることができず、また法的効果はなかった。
ADR法は一定の基準を満たした法人・個人を法務大臣が「認証紛争解決事業者」として認証する制度を定めている。ADR法に基づいた認証を取得すると、認証を受けた業務について、弁護士法の例外として、報酬を受け取ることができるようになる。
さらに、一定要件下で「時効の中断」や「訴訟手続の中止」など法的効果も生じるようになる。ただ、調停・あっせんに法的な拘束力はない。
2007年4月の施行以降、「日本スポーツ仲裁機構」や「財団法人自動車製造物責任相談センター」などがADR認証を取得し、業務を行っていたが、NPO法人による取得例はなかった。
今回、NPO法人福岡マンション管理組合連合会が取得したADR認証は14ある分野の内、「マンションに関する紛争」に関するもの。この分野での認証取得も全国初となる。
理事長の杉本氏は、
「最近、マンショントラブルは増加の傾向にある。しかし、裁判までは資金や時間の関係で行えないといった状況が見受けられたので、ADR認証の取得を思い立った。
法務省のADR認証審査は弁護士の助言措置と経理的基礎の有無が中心になる。認証の手続きなどについては、遠慮なく当会へ問合せてほしい。
ADR法は司法改革の一環として誕生した。NPO法人の皆様と一緒に、より開かれた司法制度の構築に向けて連携できることを楽しみにしている。」
と語っている。
全国のNPO法人が消費者保護や環境保全、医療・福祉、外国人支援など各分野で活躍し、専門性を蓄積しつつある。
裁判によらない身近なトラブル解決手段として、ADRの重要性はますます増してくるであろう。NPO法人福岡マンション管理組合連合会に続く、NPO法人や市民活動団体など市民セクターのADR認証が実現することが期待される。
NPO法人福岡マンション管理組合連合会(マンション問題解決センター)が運営する「マンション110番」は下記
http://www.fukukan.net/
裁判外紛争解決手続(ADR)の詳細は下記サイトを参照のこと
法務省かいけつサポート(認証紛争解決サービス) http://www.moj.go.jp/KANBOU/ADR/adr01.html
ADR認証を取得した認証紛争解決事業者一覧 http://www.moj.go.jp/KANBOU/ADR/itiran/ninsyou-index.html