その他 : NPO法人の会計基準づくりスタート
シーズとNPO会計税務専門家ネットワークなどNPO支援団体の有志は、NPO法人の会計基準を策定するプロジェクトを開始する。全国のNPO支援センターからなる「NPO法人会計基準協議会」と、税理士や公認会計士ら専門家からなる「NPO法人会計基準策定委員会」を立ち上げ、この3月から1年間をかけて、会計基準を検討していく予定。3月31日には、キックオフイベント「NPO法人の会計基準をつくろう!」を東京にて開催する。
現在、NPO法人には、統一された会計基準が存在しない状況だ。
1998年に、特定非営利活動促進法(NPO法)が、スタートした当時は、「どのような団体が実際に法人格をとるのか、まだ分からない」とされ、会計基準については、国会答弁でも、「どのような会計基準に基づいてもよい」とされた。
10年たってみて、現状では、事業規模500万円未満のNPO法人が全体の約5割を占めており、小さな団体が多いという現状がある。一方で、20億円を超える事業規模を有し、国際的な活動を展開する法人も出てきている。
内閣府の調査では、全体の約6割が現金主義で会計をつけ、発生主義で会計をつけている法人は約34%となっている。また、発生主義で会計をつけていても、企業会計基準を採用している法人もあれば、公益法人会計原則を採用している法人もあり、法人によってもバラバラな現状となっている。
このため、以下のような問題が起こっている。
・ 経理を担当する人によって、会計書類の作成方法が変わってくるため、経理業務の引き継ぎや分担して作業をすることが困難な状況がある。
・ 法人の運営責任者にとっては、経営判断の基礎となる信頼できる財務情報が得にくい場合があり、正確な経営判断ができないことがある。
・ 寄付者や支援者にとって、信頼できる会計情報が得られないので、安心して寄付や支援ができない。
・ 銀行などに融資を依頼する場合に、信頼できる会計情報を提出できない。
・会計士・税理士・企業経理の経験者などが、NPOを経理的側面から支援したいと思っても、企業会計との違いがわからず、うまく支援できない。
・ NPO法人セクター全体の正確な統計が取れない。このために、政府などが政策支援をしようと検討しても、判断材料となる統計データが不備で、支援しにくくなる。
一方で、NPO法人の財務情報へのニーズが高まっている。
内閣府の調査によれば「NPOに寄付をしたい」と思う人が、約4人に1人存在するが、6割以上の人が「お金の使い道を明らかにしてほしい」と答えている。また、民間助成財団の助成金や行政からの補助金が増えてきており、NPO法人にアカウンタビリティを強く求られるようになってきている。
NPO法人の会計基準については、シーズは1996年からNPOの会計基準について研究会を持ち、1998年3月には、NPO法人の会計指針の第1次草案を発表。さらに、2回目の提言を2005年12月に発表している。
一方、政府でも、会計基準の必要性は認識されているが、一昨年に「民間主導で策定等を行うことが適当」(国民生活審議会報告書)と報告を出し、NPO側の動きに期待している。
2008年12月に施行される新公益法人制度の動きを受け、法人の健全な運営やアカウンタビリティへの関心が高まっている
このような状況を受けて、シーズ、NPO会計税務専門家ネットワークなど全国のNPO支援センター18団体が呼びかけ団体となって「NPO法人会計基準策定プロジェクト」をスタートさせることとしたもの。
NPO支援センターからなる「NPO法人会計基準協議会」と、その下で、専門委員会「NPO法人会計基準策定委員会」を設置し、民間主導で、NPO法人の会計基準策定を目指そうというものだ。
プロジェクトは、この3月31日に第1回目の会合が開かれ、約1年をかけて検討が進められる。また、作られた会計基準の普及も目指す。事務局はシーズが担う予定。
3月31日夜7時には、プロジェクトのキックオフイベントとして、東京・飯田橋にて、「NPO法人の会計基準をつくろう!~NPO法人の信頼性向上のために~」を開催。
「NPO法人会計基準協議会の設立について」や「NPO法人の会計基準の現状と必要性について」、「会計基準策定に向けての今後のスケジュール」などが話される。
シーズの松原事務局長は、
「NPO法人の信頼性を高め、社会からしっかりとした評価を受けていくためには、会計基準は不可欠な仕組みだ。
NPO法ができて、昨年で10年経ったが、NPO法人の状況に関する社会的理解も進んできている。実態に合った会計基準がつくれる状況になった今こそ、会計基準をつくっていく時だ。
会計基準については、小さな団体が多数ある現状から、世界的な会計原則を十分踏まえた上で、小さな団体でも使えるようなものを検討していきたい。
また、企業会計の世界では、世界的に会計原則を統一しようという方向に向かっている。NPOの会計基準も、同じ方向になるだろう。そのような世界的な動向にも対応した会計基準をめざしていくべきだとも思っている。
NPO法は市民が提案して、議員立法でつくられた法律で、まず市民が行動するというのが精神だ。会計基準についても、NPOが主体的につくり、自ら採用・普及していく方法が望ましいし、その上で、法律などに反映していくべきだ。
欧米では、会計基準は民間主導でつくるのが当たり前となっている。日本でも、そのような流れをつくっていきたい。
現場主導が大切。NPO自身の手でNPOの会計基準づくりをしていきたいので、多
くのNPO支援センターやNPO法人に、会計基準づくりへの参加を呼びかけていく
つもりだ」と語っている。
キックオフイベントの詳細・申込みは、NPOWEB内イベント案内の下記ページを参照。
https://www.npoweb.jp/modules/eguide/event.php?eid=54