その他 : 認定NPO法人制度をNPO法人の8割が認知
7月15日、内閣府は認定NPO法人制度に関する調査結果を公表した。NPO法人の認定NPO法人制度に関する認知は、制度の名前程度まで含めると8割に達した。一方で「認定要件を満たせない」等の理由で、認定取得を希望しながら申請準備していない法人が5割に上り、制度改善の必要性が浮き彫りとなった。
7月15日、発表されたのは「平成20年度特定非営利活動法人の実態及び認定特定非営利活動法人制度の利用状況に関する調査」。この調査は平成16年度(2004年度)にも実施されたもので、今回が2回目となる。
「認定特定非営利活動法人制度(認定NPO法人制度)の更なる活用増進」を目的に、平成21年1月~3月にかけて全国15000の特定非営利活動法人(NPO法人)と、92の認定NPO法人(2008年12月末時点)に対して、郵送によるアンケート調査を行った。回収率はNPO法人向けが16%、認定NPO法人向けが51%。
法人の概要や活動内容など一般的な調査項目に加え、会費・寄付金・収益事業など財務状況や認定NPO法人制度に関する項目が重点的に調査されている。
特定非営利活動法人(NPO法人)に対するアンケート調査項目
1 法人の概要について
2 活動及び財務状況について
3 認定特定非営利活動法人制度の利用状況について
4 公益法人制度改革について
認定特定非営利活動法人(認定NPO法人)に対するアンケート調査項目
1 認定特定非営利活動法人の概要について
2 認定の効果について
3 活動及び財務状況について
4 みなし寄附金制度の活用について
5 個人住民税(地方税)の寄附金控除について
6 税制改正(認定要件の緩和等)に対する見解
7 パブリックサポートテストについて
8 申請手続きについて
9 認定後の運営について
財務状況(主に前事業年度)に関する調査結果では、NPO法人と認定NPO法人の比較で下記のような傾向が明らかとなった。
●収支規模は、NPO法人より認定NPO法人が大きい(平均値で約8倍、中央値で約4倍の規模)
●主な収入源は、NPO法人は特定非営利活動の事業収入(7割)、認定NPO法人は寄付金(6割)
●会費収入額は、NPO法人より認定NPO法人が多い(約8割が50万円以上)
●寄付金収入金額は、圧倒的に認定NPO法人の方が大きい(平均値で135倍、中央値で176倍)。NPO法人は寄付金0円も多い。
●1者当たりの寄付金額も、認定NPO法人が大きい(NPO法人は5000円以下が約6割、認定NPO法人は約9割が5000円超)。寄付件数も多い(NPO法人の平均37件に対し、認定NPO法人の平均は1921件)
●寄付金の位置づけでは、認定NPO法人の7割が積極的な評価(安定財源で不可欠)する一方で、NPO法人の6割は不安定財源と認識。
●特定非営利活動の事業収入は、NPO法人と認定NPO法人間の差より、各法人間での差が大きい。
全体的な傾向として、認定NPO法人は収支規模が大きく、寄付金を主な収入としている。寄付金額・寄付件数は、NPO法人より非常に多く、寄付金を安定財源と認識している。
一方、NPO法人は事業収入を主な収入としている。寄付金収入がない法人も多く、寄付金額・寄付件数は少ない。また、比較的少額の寄付が多くなっており、寄付金は不安定財源を認識している。
他にも、NPO法人の財務状況について、下記のようなことが明らかとなった。
●NPO法人で経理専任担当者がいるのは2割で、ほとんどが兼務。
●NPO法人の会計経理において、6割が「現金主義」を採用。3割が「発生主義」を採用している。
●NPO法人で外部監査(公認会計士・監査法人)を実施しているのは1割のみ。他は監事による内部監査。
認定NPO法人制度に関する調査結果では、下記のようなことが明らかとなった。
●NPO法人の3割は認定NPO法人制度の内容まで知っている。制度の名前程度の認知は5割。合せて8割は認定NPO法人制度を認知している。一方、「制度を知らない」との回答も約2割。
●制度内容まで知っているNPO法人の内、5割が「認定を受けたいが申請準備を進めていない」と回答。15%が「申請準備中」、17%が「(認定取得に)関心がない」と回答した。
●認定NPO法人のメリットとしては「寄付者の税制優遇により、寄付金を集めやすくなる」と「社会的な信用・認知度が高まる」が共に7割を超えた。
前回の調査では、NPO法人の約半数が「認定NPO法人化を希望」と回答していた。前回から質問形式が一部変更になっているため、単純な比較はできない。しかし、今回も制度内容を理解している法人の約7割が認定NPO法人化を希望しているとみなせることから、おおよそNPO法人の半数程度は認定取得を希望していると推測できる。少なくとも、約38000あるNPO法人の内、約5700法人もの多くの団体が認定取得を希望しながらも、申請準備を行えない状況が判明したのは非常に重要だ。
●認定取得を希望しながら申請準備していない理由は、「認定要件を満たすことができない」が6割と最も多く、次いで「申請作業を行うスタッフの不足」が4割、「申請書類が煩雑」「手続きを行う時間がない」が3割、「認定要件の確認が困難」が2割などとなっている。
●「認定要件を満たすことができない」と答えた法人の約8割が「パブリック・サポート・テスト(PST)を満たせない」と回答。他にも「共益活動要件(事業活動中、共益的な活動が50%未満)」や「経理要件(公認会計士等の監査か青色申告法人同等の経理)」が2割弱となった。
●「パブリック・サポート・テスト(PST)を満たせない」理由としては、「寄付金収入が少ない」との回答が9割を占めた。
●「確認が困難な認定要件」や「作成が煩雑な申請書類」の回答でもパブリック・サポート・テスト(PST)関連がトップを占めた。
申請を阻む原因は、認定要件と認定手続きに大別できる。認定要件については、度重なる改正で緩和されているが、まだまだ改善の必要がある。また、制度創設当初の要件があまりに現実からかけ離れていたため、まだ現実的な要件でないと認識されている可能性もある。更なる認定要件緩和や最新認定要件の周知・広報などが重要となりそうだ。認定手続きや申請書類については、要件が緩和される度に煩雑になっており、簡素化が求められる。
パブリック・サポート・テスト(PST)の要件で重要となる基準値は、現在1/5(20%)となっている。これもより一層緩和し、1/10(10%)へ引き下げる必要がある。また、現在のパブリック・サポート・テスト(PST)は、「経常収入金額に対する寄付金額の割合」という相対値で判定している。そのため、たとえ寄付者や寄付金額が多くても、全体の収入規模が大きいと、基準値をクリアできなくなるという問題も存在する。市民からの支持により公益性を判定するという趣旨からすれば、例えば100名の賛助会員・寄付者がいればPSTをクリアとするような絶対値による判定も検討する価値がありそうだ。
●申請準備中の法人の内、進捗が「順調な法人」と「順調でない法人」はそれぞれ約4割。順調でない法人の内、半数以上がその理由として「申請書類が煩雑」「専門的知識を持ったスタッフの不足」「日常業務が忙しい」を挙げている。
●認定NPO法人制度改正による認定要件緩和などの効果については、NPO法人と認定NPO法人の間で、割合に差が出た。しかし、双方とも「パブリック・サポート・テスト(PST)の基準を1/5とする特例が延長されたこと」との回答が最も多く、認定NPO法人では7割を超えた。
申請準備は約半数の団体が順調でない。申請書類の煩雑さや制度・手続きの複雑さに起因する人員・時間不足などを解決するためには、より一層の制度・手続きの簡素化が望まれる。
PSTの基準値については、改正による効果を多くの団体が認めていることから、特に初回認定での更なる緩和や特例の恒常化が必要となりそうだ。
認定NPO法人のみを対象とした調査結果からは、下記のようなことが明らかとなった。
●個人住民税の寄付金控除については、2割が既に条例指定済み。条例指定を受けていない残り7割の内、5割が条例指定を希望している。
●認定申請手続きを行ったのは、ほとんど(9割)が団体のスタッフで、人数は平均で約2名となった。
個人住民税の寄付金控除については、まだ周知が進んでいない面もあるが、2割しか指定されていない状況は改善が必要と思われる。
認定申請手続きは、ほとんどの認定NPO法人にてスタッフが行っているという結果が出た。これらを踏まえると、専門家以外でも理解可能で、申請ができるような簡素で分かり易い制度設計が必要不可欠だろう。
今回の「平成20年度特定非営利活動法人の実態及び認定特定非営利活動法人制度の利用状況に関する調査」については、内閣府NPOホームページ内、下記ページを参照。
http://www.npo-homepage.go.jp/data/report25.html
前回(平成16年度)の「NPO法人の実態及び認定NPO法人制度の利用状況に関する調査」については、下記ページを参照。
http://www.npo-homepage.go.jp/data/report6_1.html