その他 : 【情報追加】経済産業省、税制改正のヒアリング開始
10月16日、経済産業省は、来年度の税制改正要望を提出した個人・団体に対するヒアリングを開始した。16日は、日本経済団体連合会(経団連)や日本商工会議所など経済団体が対象。今後は各種業界団体をはじめ、NGOとして環境NGO関係者らで構成される「炭素税研究会」へも実施される予定。
今回のヒアリングは、経済産業省が14日まで公募していた「平成22年度税制改正要望の公募」について、実施されたもの。民主党など与党国会議員が参加し、意見や要望を述べることができる「政策会議」の一環として、マスメディアには公開される形で開催された。政権交代後で初となる平成22年度税制改正では、経済産業省をはじめ8省庁が税制改正に関する要望を一般から広く公募している。民主党が予算編成や税制改正の透明化を目指していることが影響していると思われ、一定の注視は必要なものの、今まで閉鎖的だった税制改正プロセスが徐々にオープンになってきている。
参考ニュース 「【情報更新】経済産業省・金融庁・総務省・農林水産省・文部科学省・財務省・環境省・厚生労働省、税制改正要望を公募」
/2009/10/その他-【情報更新】経済産業省・金融庁・総務/
経済産業省はこれら8省庁の先陣を切って、公募を開始したこともあり、内容が先進的。要望フォーマットにおいては、煩雑となる税収減収試算や関連法律条項の記載が不要で、簡素。ヒアリングは一般には公開されないものの、マスメディアに対しては公開し、政策会議の一環とすることで与党議員の参加も可。ヒアリングの対象となった団体をホームページで迅速に公表し、配布資料も公開するなど、意欲的に取り組んでおり、評価したい。
また、一団体だけではあるが、経済団体や業界団体だけでなく、NGO/NPOに対してもヒアリングを実施することも、大きな進歩だ。今後は、ヒアリングのインターネット配信や市民の傍聴を可能にするなど、更なる公開性の確保に期待したい。
NPO/NGOに関する税・法人制度改革連絡会は、認定NPO法人制度の改正や寄附税制の拡充を中心とする要望を提出したが、残念ながらヒアリング対象にはならなかった。
参考ニュース 「NPO/NGO連絡会、税制改正要望書を提出へ」
/2009/10/その他-npo-ngo連絡会、税制改正要望書を提出へ/
16日のヒアリングで配布された各団体の要望中、特定非営利活動法人(NPO法人)や市民活動、寄附税制などに関するものは下記。
日本商工会議所は、「寄附金控除限度額の大幅な引き上げや適用下限額の撤廃など、寄附金税制のさらなる充実を図ること。」として、寄附税制の拡充を要望している。
日本機械工業連合会も、「企業は社会への貢献を強く求められており、公益法人など各種団体からの寄付要請に応えねばならない社会状況」を踏まえ、「一般寄付金の損金算入限度額の引き上げ」や「特定公益増進法人などに対する寄付金の全額損金算入」という寄附税制の大幅な拡充を要望。
日本電機工業会や日本チェーンストア協会、電子情報技術産業協会も寄附金の損金算入限度額の拡大を要望。
日本貿易会は、「損金算入の制限の対象となる寄附金を慈善寄附金のみに限定」するよう要望。
日本繊維産業連盟と日本化学繊維協会は、他団体と同様の「寄附金の損金算入限度額の引き上げ」と共に、NPO/NGOに関する税・法人制度改革連絡会が「繰り越し控除制度の導入」として要望書に盛り込まれている、「(寄附金の)限度超過額繰越期間(3 年程度)の創設」を要望している。
TKC全国政経研究会も公益法人や少額還付金の寄附について要望。
●日本商工会議所
税目:所得税、法人税
要望者名:日本商工会議所
要望名:活動実態を踏まえた非営利法人課税の実施
要望内容
中小企業・小規模事業者の振興や地域の再生・活性化に取り組んでいる商工会議所など特別法に基づいて設立された特に公益性の高い非営利法人については、その公益的な活動をさらに促進するために、特定公益増進法人等以上の寄附金優遇を認めるなど寄附金制度を拡充すべきである。
要望目的・期待される効果:中小企業・小規模事業者の振興や地域の再生・活性化に取り組んでいる特に公益性の高い非営利法人の公益的な活動をさらに促進するため。
税目:所得税、法人税
要望者名:日本商工会議所
要望名:要望内容所得税・法人税共通関係
要望内容
(1)平成10年4月以降に取得した建物については、償却方法が定額法に限定されており、定率法も選択できるようにすること。
(2)同族会社等の行為計算否認規定における「税の負担を不当に減少させる結果」の意義を、法令で明確に規定すること。
(3)「民間が担う公共」への資金面での支援を促す観点から、寄附金控除限度額の大幅な引き上げや適用下限額の撤廃など、寄附金税制のさらなる充実を図ること。
(4)中小企業等が排出する機密書類を再生紙としてリサイクルする「エコマーカー事業」について、紙の焼却を行わないことによる二酸化炭素の排出削減と紙リサイクルの推進の観点から、本事業の利用促進に資する税制措置を講じること。
要望目的・期待される効果:中小企業に対して経営力や事業意欲の向上を税制面で支援することで、持続的な経済成長を実現するため。
●全国中小企業団体中央会
税目:寄付金の損金算入
要望者名:全国中小企業団体中央会
要望名:組合の地域振興、社会貢献に対する寄付金の全額損金の算入
要望内容:組合の社会貢献への寄付金を全額損金算入とすること。
要望目的・期待される効果:災害、防犯等の面において組合の社会的貢献が期待されていることから、組合が地域社会のニーズに応える。
●日本機械工業連合会
税目:法人税
要望者名:社団法人日本機械工業連合会
要望名:寄付金の損金算入枠の拡大
要望内容:企業は社会への貢献を強く求められており、公益法人など各種団体からの寄付要請に応えねばならない社会状況に鑑み、寄付金制度について次の措置を認められたい。
1)一般寄付金の損金算入限度額の引き上げ
2)特定公益増進法人などに対する寄付金の全額損金算入
要望目的・期待される効果:企業財務体質の強化を図るとともに、寄付金制度の活性化に繋がる。
●日本電機工業会
税目:法人税(国税)
要望者名:(社)日本電機工業会
要望名:一般寄附金の損金算入限度額の拡大
要望内容:特定公益増進法人については、平成20年度改正で見直されたが、ベンチャー企業の育成支援や企業の幅広い地域社会への貢献活動を促進するために、一般寄附金についても同様の見直しをお願いしたい。
要望目的・期待される効果:寄附金の損金算入限度額を拡大することで、企業のさらなる社会貢献促進を図る。
●日本繊維産業連盟
税目:法人税
要望者名:日本繊維産業連盟
要望名:その他の既存法人税制の廃止、見直しなど
要望内容:
・退職年金等積立金に対する法人税の廃止
・受取配当益金不算入制度の見直し(「不算入割合を現行の50%から100%とする」「特定利子制度の復活」など)
・寄附金の損金算入限度額の引き上げ、及び限度超過額繰越期間(3 年程度)の創設
要望目的・期待される効果:企業の資金繰りを改善し、設備投資、研究開発等の拡大が期待できる。
●日本化学繊維協会
税目:法人税
要望者名:日本化学繊維協会
要望名:その他の既存法人税制の廃止、見直しなど
要望内容:
・退職年金等積立金に対する法人税の廃止
・受取配当益金不算入制度の見直し(「不算入割合を現行の50%から100%とする」「特定利子制度の復活」など)
・寄附金の損金算入限度額の引き上げ、及び限度超過額繰越期間(3 年程度)の創設
要望目的・期待される効果:企業の資金繰りを改善し、設備投資、研究開発等の拡大が期待できる。
●日本チェーンストア協会
法人税:
要望者名:日本チェーンストア協会会長亀井淳
要望名:交際費、寄付金等の損金制度の見直し
要望内容:事業活動に必要な交際費、寄付金等に係る経費を損金参入できるようにしていただきたい。
要望目的・期待される効果:周辺地域等に貢献する地域振興・社会活動がより一層可能となる。
●日本貿易会
税目:法人税
要望者名:社団法人日本貿易会
要望名:寄附金損金算入要件の緩和
要望内容:寄附金については、欧米諸国と同様、損金算入の制限の対象となる寄附金を慈善寄附金のみに限定し、事業遂行上必要で経済合理性のある支払いについては原則損金算入とすることを要望する。
要望目的・期待される効果:子会社への支援など、業務遂行上必要で、経済合理性のある支払であるにもかかわらず、寄附金とされ、損金算入の制限の対象となるケースが多いことから、そうした取扱いを是正するため。
●電子情報技術産業協会
税目:法人税
要望者名:社団法人電子情報技術産業協会
要望名:寄附金の損金算入限度額の拡大
要望内容:ベンチャー企業への支援や、特定公益増進法人に認定されていない団体等に対する企業の社会貢献を促すよう、一般寄附金の損金算入限度額の拡大を要望いたします。
要望目的・期待される効果:ベンチャー企業への支援や、特定公益増進法人に認定されていない団体等に対する企業の社会貢献を促すことができます。
●TKC全国政経研究会
税目:税制全般
要望者名:TKC全国政経研究会
要望名:少額還付金寄付制度の創設
要望内容:少額の還付金を国又は自治体に簡便に寄付する制度を創設する。
要望目的・期待される効果:還付金額よりも還付手続に要する費用の方が多いケースは少なからず存在し、納税者側・課税庁側双方にとって多大の無駄が生じている。そこで、納税者側の自由意思で還付金を寄付する制度があれば、この不合理の解消が見込まれる。
税目:法人税
要望者名:TKC全国政経研究会
要望名:公益法人の適正納税を図るための法環境整備
要望内容:公益法人の適正納税を図るための法環境を整備し、記帳条件及び帳簿書類の保存義務に関する規定を設ける。
要望目的・期待される効果:公益法人も一般法人同様に透明性の高い経営をし、適正納税を図るべきである。そのための法環境を整備し、国民から信頼される公益法人制度を実現させる。
経済産業省の税制改正要望の公募に関するヒアリングの予定は下記の通り。
第1回(平成21年10月16日(金)8:00~9:30)
経済団体:日本経済団体連合会
中小企業関係団体:日本商工会議所・全国中小企業団体中央会・全日本火災共済協同組合連合会・全国商工会連合会
第2回(平成21年10月19日(月)7:30~9:30)
素材関係:日本鉄鋼連盟・石油化学工業協会・日本化学工業協会・日本製紙連合会
産業機械:日本機械工業連合会・日本電機工業会・日本工作機械工業会・日本建設機械工業会
輸送機械:日本自動車工業会・日本自動車会議所・日本自動車販売協会連合会・日本自動車輸入組合・日本自動車連盟・日本中古自動車販売協会連合会・全国軽自動車協会連合会
第2回(平成21年10月19日(月)15:00~16:30)
繊維:日本繊維産業連盟・日本紡績協会・日本化学繊維協会
資源エネルギー:石油鉱業連盟・天然ガス鉱業会・日本鉱業協会・石炭エネルギーセンター・石油連盟・全国石油商業組合連合会・電気事業連合会・日本ガス協会・日本LPガス協会・エルピーガス協会
第3回(平成21年10月20日(火)7:30~9:30)
貿易:日本貿易会・国際課税連絡協議会
情報:電子情報技術産業協会・コンピュータソフトウェア協会
流通:日本チェーンストア協会・日本百貨店協会
金融関係:全国銀行協会 ・信託協会
労働団体:日本基幹産業労働組合連合会・自動車総連
第4回(平成21年10月21日(水)8:00~10:00)
税理士関係:日本税理士会連合会 ・TKC全国政経研究会
公認会計士関係:日本公認会計士協会
NGO:炭素税研究会
個人:安藤 裕氏・吉井 一洋氏・友廣 和典氏・伊地知 理美氏
ヒアリングの詳細については、経済産業省サイト内、下記ページを参照。
「経済産業省政策会議税制改正要望ヒアリングの実施について」
http://www.meti.go.jp/topic/data/091013aj.html
「経済産業省政策会議税制改正要望ヒアリングのスケジュールについて」
http://www.meti.go.jp/topic/data/091014aj.html
NGO/NPOで唯一ヒアリング対象となっている「炭素税研究会」については、事務局を務める特定非営利活動法人「環境・持続社会」研究センター(JACSES)内の下記ページを参照。これまでの税制改正要望書や政策提言内容などが掲載されている。
http://www.jacses.org/paco/carbon/tansozeikenkyukai.htm