その他 : 公益法人連絡会、移行問題を政府と議論
12月8日、公益法人制度改革問題連絡会(事務局:公益財団法人公益法人協会)は、「第14回連絡会-政権交代後の公益法人に対する政策を語り、意見を交換する会」を東京・永田町で開催した。政府・与党の議員を含め、約50名が参加。旧公益法人(特例民法法人)の移行問題に議論が集中した。
公益法人制度改革問題連絡会(以下「公益法人連絡会」)は、これからの「市民社会」の発展に向けた視座から、「公益法人制度改革」に関する世論喚起と社会的提言を行うことを目的に2004年に発足したネットワーク組織。現在は公益法人の支援組織を中心に、特定非営利活動法人(NPO法人)、任意団体などの支援組織33団体が参加。事務局は公益財団法人公益法人協会(公法協)が務めている。
公益法人制度や税制に関して、全国での対話集会や要望活動などを行っている。
参考ニュース「公益法人制度連絡会がスタート」(2004/03/30)
/2004/03/行政-公益法人制度連絡会がスタート/
参考ニュース「公益法人連絡会、税制要望を提出」(2005/05/13)
/2005/05/行政-公益法人連絡会、税制要望を提出/
今回の公益法人連絡会は、今年9月の政権交代後初めて開催されたもの。新政権の公益法人政策について、政府・与党から説明を受け、問題点など意見交換することが狙い。当日は参加団体を中心に、約50名が参加した。
12月8日の17時から、衆議院第二議員会館会議室にて開催された会合には、政府・与党から公益法人関連を担当する国会議員が出席。政府からは、内閣府の泉健太大臣政務官が、与党からは民主党企業団体対策委員会委員長代理の谷博之参議院議員と大河原雅子参議院議員が参加した。
まず、公益法人連絡会事務局で公法協理事長の太田達男氏が趣旨説明。
「新公益法人制度が始まって1年が経ったが、移行申請は未だ約400件。2万5千の特例民法法人の内、たった1.6%だ。申請が進まない理由は制度が難解で、一般の市民が理解できない点にある。移行に関する情報が錯綜し、現場は混乱している。」と、新制度スタート後も遅々として進まない移行について問題提起した。
また「行政刷新会議による事業仕分けに関連する相談も多い。一部の悪徳公益法人と民間で頑張っている公益法人が混同されている。移行に何らかの影響があるのではと心配もある。」と、最新の相談状況を紹介した。
(第14回公益法人連絡会の模様 挨拶する谷参議院議員 12/8)
続いて、民主党の谷博之参議院議員と大河原雅子参議院議員からは、「公益法人は伝統的に公益を担ってきた。「新しい公共」の担い手として、今後も民間の公益法人は重要だ。」との挨拶があった。
内閣府の泉健太大臣政務官からは、行政依存型や補助金依存型の公益法人を見直していく方針が述べられ、移行認定・認可や事業仕分けの結果などについて説明があった。移行については、円滑な移行のため、問題点を政務三役でも議論し、改善を図っていくと述べた。
次に会場の参加者との意見交換が行われ、各分野から様々な問題提起や要望が行われた。参加者の意見は、新公益法人(公益社団・財団法人)への移行に関わる問題に集中。具体的には以下のような意見が出された。
●小規模の財団だが、最近監督官庁からの調査や資料提出要求が非常に多い。少人数の事務局では本来の事業に支障が出る。
●民間の公益法人として、事務局数人で誇りを持って運営してきた。しかし、今回の移行では、規模にかかわらず一律の認定基準が適用される。事務局の体力が持たない。自動的な認定を考えてはどうか。
●事業仕分けなどの報道により、公益法人へのイメージはかなり悪化している。実際に寄付金が減少してきている。
●事業仕分けの影響で、オーケストラへの財政支援が大幅にカットされたら、運営できない。多くが累積損失を抱え、移行認定に支障が出ている。
●学会組織は400弱が公益法人だ。政府には学会をもっと有効活用していただきたい。
●学会などアカデミックな組織を「学術法人」とする法人制度も検討してほしい。
●国際協力で海外援助を行っているNGOだが、公益目的事業の「国民=日本国民」と言われた。また、「国際協力=経済協力」だと思われているが、それ以外の活動も沢山ある。さらには、予算中に寄付金収入を計上していたところ、裏付けを求められた。寄付金がいくら集まるかが、事前にはっきりと分かるはずがない。
●3月に申請し、その後5月に再申請した。今までに公益認定等委員会事務局と40回近くやり取りしているが、未だに委員会へあげてもらえず事務局で止まっている。
●公益法人の研究所だが、移行認定には研究成果の公開が求められ、厳しい。世界的な研究競争を行っている中、研究途中段階での公開などは存続にかかわる。
●ここ最近、移行に関するコンサルタントからひっきりなしに営業がある。費用は100~300万円かかるとのことだ。2~3人の事務局で申請準備の人手は足りないが、高額すぎてコンサルタントに依頼はできない。すぐ締め切られてしまう現状の相談体制をもっと充実してほしい。
●10月に答申が出たにもかかわらず、未だに認定されていない法人がある。公益認定等委員会の答申は尊重されるべきだ。
●審査期間が長期化し、また、どれくらいかかるのか分からないことから申請を躊躇している団体もある。審査期間は限定するべきだ。内閣府の事務局には100名程がいるようだが、担当者間のレベル差が激しい。担当者によって対応に差が出ているのが現状だ。改善してほしい。
(第14回公益法人連絡会の模様 説明する泉政務官 12/8)
これらの意見・要望に対して、泉政務官は、「ご指摘いただいた申請事務手続きの簡素化をはじめ、改善に取り組みたい。公益認定等委員会の判断に政治的な意向が絡むことはない。今後も定期的にこうした意見交換の場を設けていきたい。」と答えた。
旧公益法人(特例民法法人)から新公益法人制度(公益社団・財団法人/一般社団・財団法人)への移行が全く進んでいない現状は、下記ニュースで報告した通りだ。
参考ニュース「新公益法人制度施行1年、移行進まず」(2009/12/11)
/2009/12/その他-新公益法人制度施行1年、移行進まず/
移行認定・認可が遅れれば、一般社団・財団法人からの公益認定に影響が出るのは確実だ。認定NPO法人制度も、今回指摘されたような審査期間の長期化や当局との煩雑なやり取りなどが存在したが、現在は改善に向けて、国税庁・局/申請団体/NPO支援組織・専門家が協力して取り組んでいる。新公益法人制度においても、関係者が協力し、スムーズな審査が行われることを期待したい。
公益法人制度改革問題連絡会については、事務局の公益財団法人公益法人協会サイト内、下記ページも参照。
http://www.kohokyo.or.jp/kohokyo-weblog/non-profit/cat32/cat30/