野生生物保全論研究会(JWCS) 池本桂子さん
野生生物保全論研究会(JWCS) 池本桂子さん
野生生物の保全は人間の新しい試みである。それは人類の歴史において、人間と野生生物との関係の新しい発展の始まりである。人類はこれまで野生生物を利用の対象としてきたが、利用の質・量の発達で、野生生物の種の生存を危うくすることもしばしばであった。
この会は野生生物の保全を第一に掲げ、野生生物を保全することを目的とする。人間と野生生物との共存関係をつくり、それによって人間の自然環境を守りつつ、人間にとって「自然」な「社会化された自然」を意識的に構築し、新しい文化形態の確立を展望せんとするものである。
団体ホームページは
●1.言いたいことはいつも同じ、相手にあわせた情報提供ができていない!
当会は、野生生物保全の理論を研究する会として1990年に発足。さらに理論と実践を結ぼうと、1994年にワシントン条約の国際会議に初参加、ロビー活動を開始しました。ワシントン条約とは、絶滅のおそれのある野生動植物の国際取引を規制する国際条約です。
日本は野生生物の消費大国。装飾品、置物、印鑑、食材あるいは薬などさまざまな製品の原料として、また珍しいペットや観葉植物などとして利用してきました。買う人がいる限り野生生物は殺され続けます。消費者の認識が変わらなければ問題は解決しません。日本の動向は特に重要です。人々の関心を集め、活動の基盤を整えようと、1995年には会員募集を始めました。
政策に働きかける活動は欠かせませんが、すぐに成果があがるものではなく、そうしている間にも野生生物は相次ぐ密猟の危険にさらされています。そこで、各国で行われている密猟防止パトロールを主に金銭面で支援するため、1997年にはトラ保護基金、2000年にはゾウ保護基金の運営を開始しました。
会本体と基金は、活動のねらいの違いから支援者層も少し異なります。しかし、小さな事務局で少数のスタッフが兼務しており、支援者とのコミュニケーションは同じような情報で同じような運営。せっかく支援者の興味に応じて受皿が分かれているのに、その利点を活かしきれていませんでした。
●2.支援者との接点をいつも頭において、活動計画をつくる
3年後に、会員数約200人→500人、寄付者約1,000人→3,000人(いずれも2006年スタートで、2009年の獲得目標)を掲げ、この目標を達成する広報改革として、支援者との接点マトリックスをつくりました。
支援者を7タイプに分類し、コミュニケーションの機会9つと照らしあわせ、重要度や必要な対策を一覧できるようにしたもので、今ではスタッフの必携資料。
これまでの会員獲得や寄付拡大では、野生動物のショッキングな映像など「押し」のアプローチがほとんどで、もともと志を同じくする方々からは長年ご支援いただいている一方、会員数・寄付者数ともに伸び悩んでいました。
「押し」も大事にしつつ、「引く」ソフトなアプローチを新たにとりいれて、入会・寄付呼びかけの機会を具体的に想定しながら活動計画をたてました。
●3.勉強、勉強、また勉強
広報改革事業は、幸い、Panasonic NPOサポートファンドから助成を得ることができました。その際、広報に関する他団体へのヒアリング、広報やマスコミ関係者を講師に招いて勉強会を行うことをアドバイスされ、以下の通り実行しました。
1.他団体の広報事業調査
環境保全系のNPOや公益法人を4ヶ所訪問、会員や寄付・会報・ホームページ・メールマガジン・イベント等の状況についてヒアリングを行い、活動の特徴と支援者の関係を分析しました。
2.広報研修会開催
現役ウェブデザイナーを講師に招き、会のイメージを伝えるためのデザインの統一、コミュニケーション媒体それぞれの特徴、特に重要な会報やホームページの具体的な設計等、勉強会を2回行いました。
3.マスコミ広報研修会
環境問題を主に扱っていた元民放テレビ局社会部記者を講師に招き、ロビイストの魅力と資質、プレスリリースのコツ、記者の日常、お付き合いのコツ等について勉強会を行いました。
この企画は大当たり、広報に不慣れなスタッフにはいずれも目からウロコの話ばかりでした。人に応えてもらうことを意識したとき、思いの伝え方は自然と違ってきます。
この「意識する」ということがなかなか難しい。さらにプロからコツを学び、自分たちだけでは予想もつかなかったことが実行できるかもしれない!と、勉強と議論の日々を過ごし、スタッフのやる気は急上昇したものでした。
●4.チャレンジの結果
1.キャッチコピー、ロゴマーク、理念を表す図、入会案内、会報、ホームページ等あらゆるもののデザインを一新し、好評を得る。
2.新しい会報お披露目の際、退会者にも一度だけ送ってみることにしたら、26人の再入会がありまた。会員数200人弱の当会にとっては大きな数字です。
3.広報改革と時を同じくして、ワシントン条約の国際会議がオランダで開催されました。プレスリリースに力をいれ、会議中はオランダから毎日ブログを更新、最新情報の発信に努めました。努力が功を奏し、会議前、会議中、会議後と合わせて計4回、当会のコメントが新聞にとり上げられました。
4.そのプレスリリースが縁となって、「環境ジャーナリストの会」、「環境を考える経済人の会」にそれぞれ講師のご招待を受け、ワシントン条約国際会議の報告を行いました。新分野の開拓です。
5.各コミュニケーション媒体のねらいがスタッフ全員に共有されたおかげで、どうすればもっと支援者に喜んでもらえるか、アイデアを出しあって意欲的に取り組めるようになりました。おかげで、これまで接点のなかった支援者層の開拓に道筋がついてきました。2009年には数値目標を達成したい!
●5.教訓!
支援者の思いと活動の接点は実にさまざま。ひとつひとつを大切に。多様性ほど強いものなし!