その他 : 公法協、新公益法人制度の運用改善を要望
12月21日、公益財団法人公益法人協会(東京都 理事長:太田達男)は、新公益法人制度の運用改善を求める要望書を仙谷由人行政刷新担当大臣宛てに提出した。新制度移行の遅れを踏まえ、審査事務の簡素化などが要望されている。
公益法人協会は、「公益活動を担う団体による自律的で創造的な公益活動を推進、支援することにより、社会における非営利セクターの役割の向上と発展に寄与すること」を目的に1972年に設立。1200の社団・財団法人が参加する公益法人の協会組織であり、2009年に移行認定を受け、公益財団法人となった。
新旧公益法人に対する相談・研修事業や調査・研究・出版事業、非営利法人データベース「NOPODAS( http://www.nopodas.com/ )」の運営、民間法制・税制調査会による税制・政策提言など活発に事業を展開している。
今年度の税制改正においては、第二次民間法制・税制調査会の税制部会として、「公益法人税制について、早急に改善すべき事項の提言」を提出。「公益法人に対する『みなし譲渡』不適用要件」「公益法人に対して相続財産を贈与・遺贈した場合の相続税非課税要件」「公益法人に対する会費の扱い」の3点について、見直しを求めていた。
平成22年度税制改正「公益法人税制について、早急に改善すべき事項の提言」(第二次民間法制・税制調査会)は下記ページを参照。
http://www.kohokyo.or.jp/kohokyo-weblog/topics/2009/10/post_189.html
12月8日には、第14回の公益法人制度改革問題連絡会(公益法人連絡会)が開催され、政府・与党と議論している。その中では、移行における要件や審査の遅れなどの問題や、政府関連公益法人見直しとの関係などについて意見交換された。
参考ニュース「公益法人連絡会、移行問題を政府と議論」(2009/12/18)
/2009/12/その他-公益法人連絡会、移行問題を政府と議論/
今回の要望書では、先日の公益法人連絡会での議論も踏まえながら、施行後1年を経た新公益法人制度の審査に関する問題を中心に、課題を指摘。審査の改善や簡素化、天下りなど政府関連公益法人の見直しと移行認定・認可の分離明確化、公益法人制度改革関連3法の改正が盛り込まれている。
具体的には、以下の4点を要望している。
・不適切な審査・指導を改めること
・審査事務を抜本的に簡素化すること
・政府関連公益法人の見直しと新公益法人制度への移行を切り離すこと
・法の改正
この内、審査の改善や簡素化については、認定特定非営利活動法人制度(認定NPO法人制度)における審査においても、同様の問題が発生。NPO/NGO側の働きかけや国税庁・局の尽力により、改善されてきている。
内閣府公益認定等委員会や各都道府県の第三者委員会にも、改善に向けた取り組みを期待したい。
要望内容は以下の通り。
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要望書
●1 不適切な審査・指導を改めること
弊協会には公益認定等委員会事務局及び各都道府県担当事務局並びに旧主務官庁による不適切な指導例が数多く寄せられており、極めて憂慮しています。
その事例は、◇不勉強による誤った指導事例◇単なる担当官の個人的裁量や解釈による指導例◇法令に抵触していない事項についての重箱の隅を突くがごとき詳細な訂正要求◇定款について法人の個性や歴史的背景などを無視し一定の枠に当て嵌める事例◇話し合いに応ぜず放置するなどの事例◇電子申請を禁止する事例のほか、◇担当官の高圧的・威圧的な対応への不満も寄せられております。
もちろんこれらの事例は一部の担当官によるものとは思いますが、不適切な事例が情報として伝播することにより一種の混乱を惹起していることも事実です。
この解決策としては、審査担当官が新制度の理念を十分理解するよう先ず意識改革を徹底していただくことが不可欠ですが、あわせて、2でも述べるように今後の審査の徹底的簡素化が必要と考えます。
●2 審査事務を抜本的に簡素化すること
11 月末現在、特例民法法人(平成20 年12 月1 日現在24,317 法人)中公益認定または一般法人移行申請を提出した数は、僅か404 件と1.7%に過ぎません。うち既に認定を受けた件数は65 件、移行認可を受けた数は16 件であり、また平均審査日数は約4ヶ月とのことです(以上公益認定等委員会事務局発表による)。今後平成22 年度後半から23 年度にかけて申請が殺到するものと思われますが、現状の審査手法を続ける限り、申請実務の大渋滞が予想されます。
この解決策としては、現在のような詳細を極めた審査実務を根本的に改めて形式審査に徹し、定款については法令違反の箇所だけに絞ること、財務関連については計算過程のチェックだけに絞るなど、思い切った審査事務の簡素化に
徹する必要があると思います。またこのことが事前規制から事後規制に転換した法の趣旨にも合致するものと思料します。
●3 政府関連公益法人の見直しと新公益法人制度への移行を切り離すこと
いわゆる政府関連公益法人には、主務官庁の意向による事業の付与、不要不急の公的資金の投入、利益の過大な内部留保ならびに天下り問題が従来から指摘されており、今回新政権がこれらを徹底的に見直そうとされていることには、弊協会としても満腔の賛意を表するものであります。
元々、これらの政府関連公益法人は主務官庁の支配により経営されており、非政府・非営利の本来の公益法人とは偶々法人類型としては同じであっても、性格的に異なるものであります。したがって、政府関連公益法人と本来の公益法人とを明確に区別され、政府関連公益法人に対する内部留保の削減などを含む業務運営に関する指導の強化が本来の公益法人の自由闊達な運営にいささかも影響を与えることのないよう特段の配慮をお願いします。また、特例民法法人の新制度への移行と政府関連公益法人の見直し問題は全く別個の問題であり、移行申請に係わる審査についても粛々と実施されるよう要望します。
マスメディアを通して流れる政府関連公益法人に対するマイナスイメージが、ややもすれば公益法人全般のイメージ低下につながり、本来の公益法人の円滑な事業運営に支障をおよぼす事例も出てきています。この際、用語としても「政
府関連公益法人」ではなく独立行政法人や政府系営利法人を含む「政府関連法人」としていただくこともお願いします。
●4 法の改正
新制度施行後一年経過し、制度内容については問題のある点も明らかになってきました。株式会社の規律に酷似した法人制度が「互助・共助」の精神に基づく非営利法人の運営にとって極めて重装備過ぎる問題点、公益認定基準のうち、特に財務基準のいくつかは余りにも実情から乖離している点並びに公益認定取消しに関連する仕組みの内包する諸問題などがあります。
これらについては、目下民間ベースで検討しており、なるべく早期に具体案を示し別途改正をお願いする所存です。
「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」および「公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律」の附則においてもそれぞれ「政府は、この法律の施行後適当な時期において、この法律の施行の状況を勘案し、必要があると認めるときは、この法律の規定について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。」とされており、その節にはよろしくご配慮のほどお願い申し上げます。
以上
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要望書の全文については、公益法人協会サイト内、下記ページを参照。
http://www.kohokyo.or.jp/kohokyo-weblog/topics/2009/12/post_194.html