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ファンドレイザー奮闘記

2009年12月28日 19:21

アートNPOリンク 樋口貞幸さん

ファンドレイザー奮闘記
アートNPOリンク 樋口貞幸さん

アートNPOリンクは、アートが多様な価値を創造し、社会を動かす力を持つ社会的な存在であるとの認識をもとに、この力を広く社会にアピールしていきます。

アートNPO は、市民自治の理念にもとづき、アートと社会の橋渡しを通して、幅広く領域をこえたNPOと連携し豊かな市民社会を創出する役割を担っています。アートは社会の変化を先取りする力を持っており、アートNPOは社会を変革する潮流において大きな力を発揮できると考えます。

そのためには、さまざまなハードルを乗り越え、基盤整備を推進する必要があります。アートNPOリンクが行う事業の中で抽出された課題や共有化されたニーズをもとに課題解決に向けて次のような取り組みに着手していきます。

1 アートNPO の社会的ポジションを確立し、社会に向けて提言
2 アートNPOと他のセクターとのパートナーシップ
3 アートNPO に関する情報収集・発信・研究調査
4 アートNPO の基盤強化とマネジメントの確立
5 地域密着型のミニフォーラム開催と全国展開

団体ホームページは
http://arts-npo.org/index.html

●1.ファンドレイジングの場面で直面した課題
NPO法人アートNPOリンクは、芸術文化を核に活動するNPO(以下、アートNPO)の中間支援をおこなうネットワーク型組織であり、その立場からこの実践事例集に寄稿させていただきたい。

当法人は文化庁の委託により、アートNPOの活動実態に関する全国調査をおこなった。

2006年度の活動実態調査では、(組織によってその運営規模や資金調達について考え方に幅があるが)総合的にみて慢性的な資金難という言葉が相応しい運営状況にあることがわかった。さらにアートNPOが抱える課題の筆頭に「アートNPOの特性を踏まえた助成制度がない」(38.6%)という意見があがった。

そこで、翌2007年度はアートNPOが実際どのような助成制度を活用し、どのような課題を感じているかについて追跡調査をおこなった。それによると、1/3助成など赤字補填を前提としている、事務局人件費を捻出できない、申請できる芸術のジャンルが限られていること、などに課題を感じているNPOが多いということがわかった。

他方、制度上の不備のみならず、財団法人アサヒビール芸術文化財団や財団法人セゾン文化財団、財団法人文化・芸術による福武地域振興財団ほか各企業によるメセナ活動のように明確なビジョンをもった社会投資的な側面の支援がそもそも少ないということも課題だ。

また、助成制度に頼らざるを得ないアートNPOのおかれている状況や社会的背景の課題も垣間見える。

●2.その課題解決に向けたチャレンジ
アートNPOリンクは、アートNPOのネットワーク型の組織として、政策提言を積極的におこなっていく必要がある。

先に紹介したアートNPOの活動実態調査に加え、2003年から毎年『全国アートNPOフォーラム』を開催し、アートNPOに関するさまざまな課題について議論をつくしながら課題の共有とネットワーキングを進めてきた。

昨年、洲本市で開催した『全国アートNPOフォーラムin淡路島』では、全国から30のアートNPO、企業メセナ担当者、アート関係者、研究者ら約80名が集まって、政策提言『淡路島アート議定書!』について6時間にわたり討議した。

ここでは芸術文化振興を市民が主体的に担うことを確認し、芸術文化およびアートNPOの振興について相互に連帯しながら積極的に取り組んでいくことになった。

時間が足りず最終的な発表は次回に持ち越されたが、本年11月末に開催する『全国アートNPOフォーラムin沖縄』で宣言することになっているので、ぜひご参加いただきたい。この政策提言は、国や地方自治体のみならず、企業や市民にも向けて広く発表する予定だ。

●3.チャレンジの中でおこったエピソード
アートNPOリンクはこれらの調査をおこなったことによって、名古屋市の文化政策に関する研究会への参加や、省庁や県、市など行政機関からアートNPOに関する情報提供の要請が増えた。

また、アートNPOのネットワークを活かしてトヨタ自動車株式会社やUBSがたちあげた「アート×子ども」に係る人材育成事業のアドバイザーとして協力することになった。

ほかに、神戸に拠点をもつ音響機器メーカー・TOA株式会社と広報支援会社・株式会社PRリンク、学校現場とアーティストをつなぐNPO・子どもとアーティストの出会いなどと協働しておこなった『Project Real Publicity for Art TOA音楽と教育の意識調査』がある。これは、企業がおこなう芸術文化活動の必要性について、小中学生の保護者を対象に全国的な意識調査をおこなったものだ。

これは、社会的にも影響ある大きな成果をあげることができ、その調査結果は2007年度の実施では、16の新聞雑誌などのメディアによって取り上げられた。

市民の声(社会的ニーズ)を掘り起こし、事業に活かすことによって、企業がなぜ芸術文化による社会貢献活動をおこなう必要があるのか根拠を示すことができた。さらに、調査を通して社会的課題をあぶりだし、その解決を図る活動に企業が支援するという社会投資の仕組みをつくることができた。

●4.チャレンジの結果
中小企業にとって、社会的貢献活動のなかに芸術文化活動を位置づけるのは難しい。芸術文化は良い事だという理解がある一方で、余暇や趣味といった娯楽的側面でとらえられる向きもある。それゆえステークホルダーに対する説明も困難だ。

先のエピソードでも紹介したように、企業が芸術文化を支援するための根拠づくりにソーシャル・リサーチを活用することは有効だ。このリサーチはどの企業でも活用できるサービスなので、企業メセナ担当者はぜひチャレンジしていただき、社内外での芸術文化活動推進の説得材料に活用してもらいたい。

さらに、アートNPOリンクは、PRリンクや他NPOと協力し、この経験を踏まえてNPOへの資金的支援の仕組みづくりに現在取り組んでいる。ほかにクレジットカードを活用したアートNPOに資金がまわる仕組みも検討している。これら仕組みづくりはまだ始まったばかりだが、多くの協力を得て実現したい。

これらアートNPOを支援する仕組みづくりにもチャレンジしていければと考えている。

●5.教訓!

パッションだけではファンドレイジングはできない。思いを伝えるコトバを獲得していきたい。

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