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ファンドレイザー奮闘記

2009年12月28日 19:46

ジェン(JEN) 木山啓子さん

ファンドレイザー奮闘記
ジェン(JEN) 木山啓子さん

JENは、平和な国際社会作りを目指し、世界各地で紛争や自然災害などにより厳しい状況にある人々へ、『心のケア と自立の支援』をモットーに、きめ細やかな支援活動を行う国際協力NGOです。

団体ホームページは
http://www.jen-npo.org/index.html

●1.ファンドレイジングの場面で直面した課題
何といっても知名度の低さが、大きな課題でした。その原因は、単純に広報活動をしていなかったことだと思います。

JENは1994年に6つのNGOが合同で立ち上げたプロジェクトで、設立当初から4年間も日本に本部が存在しませんでした。その間、旧ユーゴスラビアでの難民・避難民支援は、どんどんその幅を広げ、事務所数14、現地スタッフは500名にも及ぶ活動を展開していました。各団体の担当者が、日本で事業実施をサポートしてはいたものの、広報活動には手が回っていなかったのです。

ようやく1998年に本部事務所が設置され、年末のNPO法施行を受けて法人登録の手続きも始めましたが、一般市民への寄付の呼びかけを始めたのは1999年、初めての会報を発行したのは、2000年のことでした。その送り先の名簿も極端に小さい状態でした。

●2.その課題解決に向けたチャレンジ
いざ、資金調達のために広報活動を開始しようとしても、広報資料も不十分、NGOという言葉も一般市民の中にやっと定着し始めた頃でした。JENのスタッフ自身も経験不足で、手探りの状態でした。

それでも、幾つかのことを試す内、認知や寄付には段階があるということが判ってきました。『全く知らない→聞いたことがある→知っている→信頼できる→寄付してみよう』という段階です。

(潜在的)支援者の方が、どこにいたとしても、次の段階に進んでもらうには、『気持ちのハードル』を越えてもらわなければなりません。そのハードルを越えやすくするのが、参加しやすい仕組み(参加メニュー)です。

この内、『知っている』から『寄付してみよう』までのハードルを低くするために、考えられた仕組みがBOOK MAGICでした。スタートは2004年5月ですから、長い試行錯誤の末のことです。

●3.チャレンジの中でおこったエピソード
BOOK MAGICは、ブックオフさんが元々持っている「宅本便」*というプログラムを利用し、中古の本やCD、DVDなどの買取額の振込先を本人ではなくJENにするという、極めて単純な仕組みです。

送料は着払いなので、参加者はダンボールを自分で用意し、梱包して集荷依頼をするだけ。つまり無料で参加できるという点で、「はじめの一歩」としての気軽さを備えたプログラムだと言えるでしょう。寄付をしたり会員になったりという気持ちのハードルを越えなくても、参加できるプログラムだったのです。

目的に合致した仕組みでも、一般の人々に、その気軽さを理解してもらうには、更に必要なものがありました。広報ツールです。このプログラムの開始当初は、輪転機で白黒印刷をした資料を使っていました。参加者の利便性を考えて裏面を申し込み用紙にし、そのままFAXで送れるというものでしたが、参加者は中々増えませんでした。

そこで、JENという団体の名前すら聞いたこともない人々が参加してもいいと思える、判りやすく魅力的なものが欲しいと思う様になりました。『知っている』のハードルどころか、『全く知らない』方にも参加してもらえるための、広報ツール、という風に、途中で目的自体も方針転換しました。

そこでご協力下さったのが博報堂の方々でした。BOOK MAGICのかわいいキャラクター、そして「ひと目で仕組みがわかるリーフレット」とインターネット上の申し込み窓口、その全てを制作して下さいました。

*「宅本便」自宅や職場、学校などどこでも、ダンボールに本やCDを梱包するだけで、宅配便が指定場所まで集荷に行き、買取金額が指定口座に振り込まれる

●4.チャレンジの結果
するとその後、個人の参加者が徐々に増えてきました。

企業や学校が組織ぐるみで参加したり、その取り組みがメディアに取り上げられたりという波及効果も生まれ、大いに参加者数が伸びたのです。

何よりも、これらのリーフレットを使ってJENのスタッフ自身が手軽に説明することができるようになりました。どんなに良いプログラムでも、ただ実施しているだけでは伸びないという、典型のような事例です。

大幅な伸びは、そこで終わりませんでした。BOOK MAGIC開始から4年後の2008年、Chabo!**という印税寄付プログラムを考案した著者が、寄付先を選ぶ際『Book Magicの成功』が決め手の一つとなって、JENを選んでくれたのです。Chabo!は、その開始から急激な伸びを見せ、巨額の寄付を生み出しています。

** 「Chabo!」詳細はホームページへ→ http://www.jen-npo.org/chabo/

支援者と私たちが同じ思いを持つ「パートナー」関係にあること、そして活動を支えてくださることへの感謝の気持ちを伝えることが、結果的に団体に対する支援者の信頼やロイヤリティを高めるのだと、この機会を通じて学びました。

●5.教訓!

良いプログラムは、伝わり、広がり、周知されてこそ活きる!

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