神奈川子ども未来ファンド 米田佐知子さん
日本フォスター・プラン協会 膳(かしわで)三絵さん
神奈川子ども未来ファンドは、2003年に設立した非営利の市民基金です 。 現在は認定NPO法人。
みなさんから寄せられるお金を、子ども、若者、子育てに関わる人を支えるNP O(非営利の市民活動団体)に資金助成しています。
私たちが支えるNPOは、悩みを抱えている子ども、若者、子育てに関わる人が 、 安心して、自分らしく過ごせる「場」を提供しています。
団体ホームページは、
http://www.kodomofund.com/index.html
●1.課題
「うさんくさい」「よくわからない」「本当にできるの?」神奈川子ども未来ファンド(以下「子どもファンド」)の現理事や運営委員の一部が、最初に子どもファンドへ持った印象だそうです。
子どもファンドの活動は、簡単に言えば、寄付を募ってNPOへ資金助成をしています。設立時の基本原資はなし、全国で初めての「子ども」というテーマに特化したコミュニティファンド、「神奈川子ども未来ファンド」という初めて聞く名前・・・。
寄付・協力を求めるときに「活動が理解できない」「信頼できるのか」、その2つの疑問をクリアすることは、必ず考えねばならないことです。ファンドの初動期に、そのことを痛いほど味わいました。
成果のない稼動前に、先行投資的な寄付をくれたのは、ファンドにかかわる個人を信頼してくれる人達でした。「おつきあい」での協力だったかもしれません。
でも、寄付は参加の一形態です。ファンド構築に関心を持つ人が少し広がりました。その経験が「飛び込みよりも“ご紹介”」というファンドの支援を求めるスタイルを方向付けたと思います。
●2.チャレンジ
「寄付を募る‐助成をする‐成果が生まれる」そのサイクルの蓄積がまだない時期、現場をもたない活動だけに、信頼獲得の努力や工夫をしなければ寄付は集まらない。
まずはHPに、設立趣旨、定款、理事名簿、報告・決算、計画・予算といった文書を掲載して、活動の透明性をアピールしました。組織概要やファンドの仕組みをわかりやすく伝える資料づくりに取り組みました。
また一方で、賛同人・賛同組織の依頼に力をいれました。現在、子どもファンドの賛同人には、横浜ベイスターズ、横浜F・マリノスなどのスポーツチーム、石井琢朗氏などのスポーツ選手や、ミュージシャンのゆずなど、著名な組織や個人に名前を連ねてもらっています。
お陰で、これまでご縁のなかったところからも、寄付がいただけるようになっていきました。また、認定NPO法人取得も信頼を高めるための取組みの一つでした。
他に、理事構成を多様にしました。当初の理事は、ほとんどNPO関係者でしたが、理事・運営委員に、企業やマスコミ関係者に加わってもらい、多様な視点でファンドの活動を検討するようになっていきました。日常的に使ってしまうNPO関係者の略語や専門用語。多彩な顔ぶれの理事会では「それって何?」と指摘を受けることもしばしばです。「NPOの関係者は、狭い世界の中で自分たちだけで『そうそう』と分かりあっていて、排他的に映る。」そんな指摘も受けました。
●3.エピソード
ファンドレイズの大きな壁は、自らの中にもありました。
「寄付をください」と言葉にすることの抵抗感です。企業訪問の中で「こちらは、苦労して金を稼いでいるんだ。良いことしてれば、金がもらえて当たり前なんて大間違い」という意味のことをやんわりと言われ、落ち込んだこともありました。
子どもの育ちを社会で支えていく、子どもファンドのミッションに共感して、訪問先の企業の営業部長などが意見をくださるようになり「相手にとってプラスになる提案を考えること」、「子どもを応援する良い企画・機会を提供すること」など、多くのことを学びました。
小さな協力であっても、そのために企業の担当者が手間と時間をかけて文書を作り決済を取っている。その手間を考えると、申し訳ない気持ちになっていきました。「協力するかどうかは、相手が決めること。依頼しなければ、相手は協力できない」理事から指摘されて、久しぶりに、その企業へお願いに出かけた時、こちらからの連絡を待ってくれていたことを知り、恐縮しました。
最近、転勤された担当者からご連絡をいただきました。転勤先で、子どもを支える活動に、プライベートで参加しているというのです。嬉しいお電話でした。
●4.考えたこと
相手に「良い機会、良い企画」を提案、提供するよう心がけること。感謝の気持ちを伝える方法を楽しく思いめぐらせること。協力を通じて生まれた成果を報告し、分かち合うこと。
誇りを持って取り組めるファンドレイズとは、そういうものかな、と思えるようになりました。
●5.教訓
お願いしなければ、相手は協力できない