Step.0 さあ、はじめよう!
Step.0 さあ、はじめよう!
まず、ファンドレイジングを始める前に、いくつか前提となる考え方をまとめてみましょう。
何のためにファンドレイジングをするのか・・・それがもたらすものは・・・こうしたことを組織全体で共通認識としておくことで、ファンドレイジングに対する団体のモチベーションがあがります。
また、ファンドレイジングのノウハウを考える上で基本となる「ファンドレイジング・サイクル」についてもご紹介したいと思います。
●寄付文化がない?
「欧米と違い日本には寄付の文化がない。だから仕方のないことだ」と考える人がいます。「欧米で寄付を支えているのは、キリスト教の考え方。それがない日本で寄付が少ないのは当然だ」という主張です。
確かに、日本における個人寄付は、年額2189億円(2002年)で、寄付額が年額25兆円を超える米国の約100分の1にも満たない状況です。人口比はおおよそ、日本:米国=1:2.44ですから、「日本には寄付の文化がない」という主張には一見、説得力があるようにも思えます。
しかし、政府の世論調査(2005年内閣府)では、「この一年間にどこかに寄付をした」と答えた人は7割にも及びます。この比率は米国でも約8割といわれていますので、日本人の寄付経験割合がとりわけ低いわけではありません。「日本に寄付の文化はない」は誤りなのです。日本にも寄付の文化はあるのです。
寄付に関する日本の課題は、以下の2つです。
ひとつは、一世帯当たりの寄付額が年間約3000円と極めて小さいことです。米国は約20万円で、70倍近い差があります。おそらく、多くの日本人の寄付経験は、歳末助け合いなどにおける「少額」の「募金」なのでしょう。
もうひとつは、NPOに寄付をした経験のある個人の割合が、わずか2.8%に留まっていることです。でも、がっかりすることはありません。NPOに寄付をしたいと思っている人は23%もいます。
要するに、日本の寄付市場の「伸びしろ」は大きいということです。
課題の多い日本の寄付市場ですが、これは一方で、寄付の「伸びしろ」が大きいことを意味してもいます。やり方によっては、今後、拡大する可能性が高いということです。
NPOの寄付市場は、これからが勝負。まずは、「NPOに寄付をしたい」と思っている、23%の人たちに、実際にNPOへ寄付をしてもらうこと、これが「はじめの一歩」です。
●ファンドレイジングの意義
寄付者にとって、寄付とは、単なる「お金を出す行為」なのでしょうか。寄付を呼びかけることは、集金行為でしかないのでしょうか。
NPOにとってファンドレイジングとは、単なる資金調達の手段ではなく、人々に理解を訴え、共感を呼び覚まし、募金というアクションを通じて活動に参加してもらうというそれ自体に重要な目的を持つ活動です。これを別の言葉で言い換えるならば、ファンドレイジングは寄付者とのコミュニケーションであるとも言えます。
NPOが、社会的課題の解決を目的としているならば、自分自身の力でできることは限りがあります。いかに多くの市民を巻き込み、課題につなげ、課題解決の参加者とできるかが、実は、社会的課題の解決のための一番の近道なのです。その道筋にいざなうツールとして「寄付」があると考えてみてください。
このように考えると、ファンドレイジングはNPOのミッションそのものだと考えることができます。
●ファンドレイジングが社会にもたらすもの
社会にとって寄付とは何でしょうか。これを考えるには、ファンドレイジングの意義を正しく理解することが欠かせません。
経営学者のピーター・ドラッガーは、著書『非営利組織の経営』において「NPOは人と社会の変革を目的にしている」と述べています。
変革のためにNPOができることは、人と社会とのかかわりを強め、問題解決の参加の手法を多く提示し、人々をして、それを使えるようにすること。新しい問題が常に発生している人間社会において、人々の問題解決能力を高めること。人々に自分の能力を信じさせ、どんな困難な課題でも克服できるのだという思いを現実のものにすることです。
こうした変革を支えるものとして、ファンドレイジングは位置付けられなければなりません。それが、社会と人々を結ぶ極めて優れた方法のひとつだからです。
●ファンドレイジング・サイクル
ファンドレイジングは、ただお金を集めるためのものではありません。NPOが開発する解決プログラムへの参加を促し、それを社会変革につなげるためのものです。
ここで注意しなければならないのは、社会変革は一朝一夕にできるものではないということです。市民の参加とプログラムの成功を積み重ねていってはじめて、社会変革は可能になります。プログラムにかかわる市民には、継続的に参加してもらわねばなりません。寄付を続けてもらう必要があります。
このために必要なのが、ファンドレイジングを「サイクル」と考える姿勢です。
ファンドレイジング・サイクルの構図とは、サイクルを循環させる前提として、
1.ファンドレイジング・サイクルは、まず組織作りからスタートする。
2.潜在的寄付者(メインターゲット)を特定する。
3.潜在的寄付者(メインターゲット)のニーズを把握する。
というステップがあります。
その後、具体的な対象に対するファンドレイジングが始まります。
4.相手との関係を開拓する。
5.相手へ依頼を出す。
6.相手から資源を獲得する。…いかにコストをかけずに回収するかを工夫する。
7.相手へお礼、報告を出す。…資金の使途が明らかであるということが大切なので、この段階が最も大切となる。「あなた個人のお金はこのように使用されました。」というパーソナルな報告が求められている。
そして、この4に戻って、また関係構築の段階に戻り、関係を強化していき、継続的な寄付者をつくっていく。これがファンドレイジングサイクルです。
参考までにファンドレイジングサイクルを以下に「添付掲載」します。マッピング用の用紙もつけておきますので、団体のファンドレイジングについて記入してみてください。
ファンドレイジング・サイクルにマッピングしてみよう.doc【工事中】